表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
3/66

治療法


「………………………あぁ、そう」


そういえば、そんな事を言っていたっけ。

この病院だけが研究している治療法があるらしい。

確か、この女性医師も携わっていると言っていた。

今現在、日本の医療の技術は停滞中の中、全く違う目線からの新しい治療法が生まれたらしい。


「簡単に言うと!本の中に自分の意識を入れる技術なの!脳というのは、精密機器なのね!

いくら、記憶を取り戻したいからって無理矢理

カウンセリングさせたり、ショック療法みたいな事やったら、逆効果!そこで、考えたのがヒーリング効果もある本の内容をVR化する事によりー」


つまり、VR映像によって本の中を体験できる技術らしい。

医療にVR技術を使うのは珍しいことではない。

今の時代、ゲームにもVRが使われているぐらいだ。


元々は、図書館にある絵本をVR化することによって子供の本離れをなくそうという行動から始まったらしい。本の内容を映像化して登場人物達と一緒に行動し、同じ景色を見て物語を体験する。

しかし、この技術の危険な所は時間調整が出来るという点だ。つまり、今の時間と比べ等倍にしたり、加速したり、現実の世界では1時間たっていても本の中では、1日過ぎていたりするのだ。

最も、その時間調整は長時間手術する時にしか

使用しないのだが。


重い病気にかかってしまった小さい子供に対して長時間手術で使用する麻酔による身体の負担を減らす為、頭に本の内容をインプットしたヘッドギアを取り付け、意識を身体から離しその間に手術をする。麻酔が効きにくい人もいる中では良いことなのだろう。


その技術を今度は脳の分野に取り込み記憶障害などの患者の治療を試験的に行う許可が下りたのだ。

そして、その第1号がマサアキだった。


「ーーーねえ!聞いてる⁉︎聞いて無いよね〜⁉︎

君の記憶が戻るかもしれないんだよ〜⁉︎」


(…なんで自分ことのようにうれしそうなんだ?)


「…‥……………………そうだな」


「もぉー、なんでそんな投げやりなの?

もっと、喜びなよ〜!」


「………………………1つ聞いてもいい?」


「うん!なに〜?」


「……記憶が戻る可能性はどれくらい?」


「それはーー」


「正直に言って下さい」


「…‥50%あるか、ないか、かな…」


「………………そうですか。日にちは?」


「……来月の1日に予定してる」


「………………わかった」


「…あのねっ!」


「まだ、なにか?」


「…………ううん、じゃあまた明日、検診の時にね!」


「………………ああ」


女性医師が退出した後にはマサアキはなんとも言えない心の中で何かが淀んでいるみたいな気分になった。

成功率が50%という事実、そして何より自分が知らない記憶が戻るという不安。

記憶が戻る、つまりいい過去だけではなく自分が受けたツライ過去も蘇るという事だ。


(………………要するに怖いんじゃねぇか)


覚悟もない自分に苛立った。


「………………来月の1日……」


あと、約2週間弱。


その日それ以降は本を読む事もなくただベッドの上で過ごし1日が終わった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ