78 ワイバーンを?
そうと決まれば、ワイバーンを。」
「ああ。操れねばな。」
この国の王はワイバーンを操ることが出来るらしい。
「今はレディが操っています。」
「なんと・・・・アームではないのか?」
・・・
「いえ・・・レディの他に、アームと名乗る若い男がこの前操っているのを見ました。」
「アーム?まさか?」
おじいさんは王を見た。
王太子も。そして二人は黙り込んだ。
「あの・・・アームってもしかしたら、この国の王の名前だったんですか?」
美虹が尋ねると、二人は頷いた。
・・・・
「今はここに肉体だけがあると言うことか?」
レオの呟きに二人はますます深刻な顔をした。
・・
「ここにいるのはただの肉体なのか?」
おじいさんが聞くと、王太子は、
「心は少し残っているように見えたのですが・・・」
と答えた。
『いろいろなことが分かってきたな・・』
『レオ。その二人に我が国と友好な関係を結ぶつもりがあるか確認しといてくれ。』
『ああ。』
・・・・・
夜もすっかり更けた。詳しい話はまた明日と言うことになった。バドバドに連れられて、塔へお爺さん達と一緒に戻ってきた美虹達は、塔の部屋の寝室の隣の部屋・・・お茶をした部屋に泊めて貰うことになった。
ソファーに横になって毛布を掛けた美虹。ソファーの下に丸まって毛布を掛けているレオ・入り口近くに毛布を持っていって丸まっているリヒテ・・・テーブルの上にはバドバドとにょろにょろが・・・
『シュバルツァーを出てまだ3日。』
リヒテが言い出した。
『めまぐるしくて何が何だか・・・』
美虹が答えると、レオが
『おまえは巻き込まれているだけだからな・・・』
と締めくくった。
『唯一さん。色々分かってきたよ。』
眠りに落ちる寸前、美虹は唯一さんに呼びかけた。
『これからだよ。目に見えないもの分かってきたね?』
かすかに声が返ってきたようだ・・・
夜は更けていく・・・夜中・・バドバドが密かに飛び立った・・・
「おい。」
「しっ」
「バドバドが飛んで行ったぞ。」
「肉だ。肉をくれ。」
「肉なのか?」
「どこに行ったんだ?」
「レオ達を起こさなくていいのか?」
にょろにょろは、誰が一番上になるか争っていて、まだ眠っていなかったのだ。
しばらく騒いでいたが・・・・・・ひとつまた一つと頭が寝落ちていく・・・・やがて7つの頭も寝静まった・・・
・・・・・
「明後日、シュバルツァーに向かうぞ。薬の用意は良いか?」
元帥が脇に立っている将軍を見た。
「はい。レディ。」
将軍が恭しく頭を垂れた。
「しっ今は元帥だ。」
元帥が厳しい顔をして諫めると、さらに深々と頭を下げ、
「申し訳ございません。薬は、明日の食事に混ぜて兵どもに出すよう手配済みです。」
元帥は頷き、
「あの薬は飲むと1ヶ月は効くが、その後は中毒症状を起こすからな。定期的に与えるのを忘れるな。」
と続けた。
「はい・・そういえば、シュバルツァーに置いている負傷した獣人達が薬を切らし、まずい状態になっていました。」
「ほう?だが、捨てておいて良いだろう。こちらにはまだ何万もの兵がいる。」
一瞬将軍いや、アームの顔がゆがんだ。がまたにこやかに
「分かりました。」
と言って下がっていった。
・・・・・
バドバドはアームの後を付けていた・・・
アームは将軍の部屋に戻らず、自分の部屋だった所に入っていく・・・
部屋の奥は実験室のようだった。
・・・将軍・・アームは座り込んだ。そして頭を抱えた・・・
バドバドは見ていた・・・じっと・・・
・・・・・
「美虹。」
「美虹。」
「バドバドが言っている」
「肉だ。肉をくれ。」
「俺にも肉をくれ。」
「違う!」
「アームの部屋に解毒剤の元になる根っこかいっぱいある。」
・・
朝、バドバドはちゃんとテーブルの上にいた。
くぇくぇくぇ・・・と鳴いて可愛く小首をかしげている。
「え?バドバドがそんなことを言ってたの?」
美虹は、ファーから起き上がった。
掛けていた毛布を畳みながらバドバドを見た。
「本当か?ライから昨日、根が大量にいると言われて、どうしようか困っていたんだ。それはいい。」
レオが床から起き上がってバドバドの方に行った。
「信用しちゃうの?」
思わず美虹が聞くと、
「もちろんだ。御使いなんだろ?信じるさ。」
にこにこしながら返してきた。
『大丈夫だよ。バドバドの言いたいこと僕にも何となく分かるよ。』
リュウがささやいた。
「アレクから連絡が来た。」
おじいさんが言った。
「アレク?」
美虹が誰だろうと思ってつぶやくと、
『王太子のことだよ』
リュウが教えてくれた。意外とリュウは美虹よりしっかりしているようだ。
『美虹ちゃんがぼんやりさんの分、僕しっかりしてきたと思うんだ。』
何となく面白くない美虹だった。
「セナがまたシュバルツァーに遠征に行けという命を受けたそうだ。」
おじいさんが教えてくれた。
・・・
「セナ?」
美虹の呟きに、
「第2王子のことだ。シュバルツァーに、執政官としていたらしい。」
レオが教えてくれた。
リヒテも起き上がって毛布を片付けたり、テーブルを拭いたりと忙しそうだ。
「いつ?」
「明日か明後日だということだ。」
「くぇくぇくぇ・・・」
「なんだ?」
「薬だ。」
「アームが作っておいてある。」
「肉だ。肉をくれ。」
「俺にも肉だ。」
「アームの部屋に薬が色々ある。」
「毒も解毒も」
・・・・・
レオとリヒテは顔を見合わせた。
「分かってるよ。忍び込むんだね?」
「おまえは」
「ここで留守番ね?」
「ああ。行ってくる。」
朝ご飯前に二人は姿を消して部屋を出て行った。
アームが解毒の薬も作っていたと言うことはどういうことなのかな。美虹は考えながら、おぞおさんとおばあさんを手伝ってテーブルを整えた。
1日に数回来るという侍女さんともそこで挨拶が出来た。この人は、おじいさんとおばあさんの味方だそうだ。おばあさんを見てひとしきり泣いていた。
・・・・
その前夜・・・深夜の寝室・・・
「おじいさま。僕にワイバーンを操ることができるのでしょうか?」
王太子はため息と共に身を起こした。
自分がワイバーンを操れるとは思えない。
悲しくなってきた。
・・・・
「くぇくぇくぇ・・・」
「ああおどろいた・・おまえはお爺さんと一緒にいた人の肩にとまっていた鳥だね?」
バドバドは王太子の髪を引っ張り、ついてこいと言うように前を飛んだ。
王太子は立ち上がり、
「おまえ何が言いたいんだい?付いて来いって言うのかい?」
光が王太子を包む・・・




