76 昔語り
話や映像がライ、レオリヒテに伝わるように美味く調整が済んだ。
「嬢ちゃんはどっから来たのかね?」
「シュバルツァーです。」
「そうか。あの頃・・・20年ほど前だが、シュバルツァーとも、どこの国とも、この国は仲良くしていたんだよ。」
「そうなんですか」
・・・
「あの。私を信用して良いんですか?」
「私も人を見る目は持っているつもりだよ。だが・・・あの女というか元凶だけは見抜けなかった・・・。」
・・・・・
「・・・と言うわけで、私は王の位と一緒に息子を失ったというわけだ。」
・・・ちょっと大人の話もあったので、美虹には理解出来ないこともあったが・・・
「あの。良く分からないのですけれど、そのレディという人は、同時に2カ所にいたと言うことですか?」
「そう言うことだな。私の側にいながら息子の側にもいて、息子を操って位を奪うくらいには。」
「なんで王様は?」
「私を王と呼んでくれるのか?ははは。いやいや。妻をないがしろにして別の女に目をくれてしまったただの大馬鹿モノだよ。」
おじいさんは寂しそうだった。
『同時に2カ所にいたってどういうことだと思う?』
『二人が違う人間なのか・・・それとも。同じ奴に操られている別人か・・』
ライが言うと、リヒテが
『思いたくないが分裂していたって事も考えられるぞ。』
と言いだした。
『分身の術?』
美虹がつぶやくとレオが反応した。
『なんだそれは?』
『説明は後でね・・・』
・・
「あのう、王妃様ってどうなさったのですか?」
美虹はもう一つの気になっていたことを聞いた。
「分からん。気が付いたら私はここに幽閉され、妻はいずこともなくいなくなったということしかな。」
その答えに何故かいたたまれなくなった。
「王妃様・・・ううん。奥さんを探しに行きたいですか?」
「もちろんだ。そして私を許して貰わねばな。それから二人で息子の目を覚まさせねば。」
その時、無心にクッキーをつついていたバドバドがいきなり飛んで美虹の肩にとまった。
「どうしたの?」
「くぇくぇくぇ・・・」
美虹が見つめていると、バドバドの後ろからもやのようなモノが立ち始めた。
『まさか?』
『大丈夫だ。このもや白いから。』
リュウの言葉に少し安心したが、
『え?幽霊?』
『どうかな?』
「あなた。」
・・・あなた?・・・
『え?今の何?』
『美虹どうした?』
レオの焦った声がする。
『なんでもないよ。見えてるし、聞こえてるでしょ。慌てて戻らなくて良いからね。』
ーーーーーレオとリヒテは王の居室に忍び込んでいた。
『なあ?』
『こいつ王だろ?』
『病人じゃねえ?』
『そういう風に見えるよな。』
『シッ誰か来た。』
「父上。お加減はいかがですか?」
入って来たのはレオ達とさほど違わない年頃の男だった。
『父上と言うことは王子か。』
「・・・」
「・・口もきけないのか。セナがシュバルツァーから帰ってきているのですが、会えませんか?」
「・・・」
「このままだと、僕が継ぐ前にこの国はいずれ元帥の物になってしまいます。」
「い・・ち・・とう・・」
「なんですって?塔?塔に誰がいるのですか?」
「ち・・ち・・」
・・・
王が何を言いたいのか分からないようだった。
どうやらこの男は王太子らしい。この国の事を憂えている様子だった。
・・・
「さっきレディが」
「な・・なに?」
「レディですよ。」
「あ・・よ・・・・」
「呼んでも来ませんよ。あの女が元帥と組んでいるのは目に見えているではありませんか。」
ーーーーーーーーーー
「まさか?」
「ええ。私ですわ。レディに捕らわれて、ペンダントに閉じ込められていましたの。」
「・・・まぼろしでもいい・・・ 私を許してくれるか?」
「ええ。と言いたい所ですが、甘いですわ。私の苦しみを簡単に忘れろというのですか?」
おじいさんは泣きそうな顔をした。
「そんなことより、レディに閉じ込められていた間、私は姿替えの媒体として使われていましたの。」
『そんなことができるの?』
『多分魔力が強いんじゃねえか?』
「ここのところずっとアームという男の胸元にいたんですが。この鳥が解放してくれましたの。」
『まだ実体じゃないみたいなんだけど・・・幽霊みたい。若いし・・・』
確かに王妃だったというその人はまるで幽霊のようだった。
「・・・私は多分夢を見ているんだな。貴女は全く変わっていない・・・」
「そうね。私は多分死んでいるのかも知れない・・・」
二人は黙って見つめ合っていた。
「なあ。もうクッキーはないのか?」
「ばか。今良い所だぞ。」
「おまえにしては珍しいぞ。」
「クッキーより肉だ。肉をくれ。」
「俺も肉が欲しい。」
「さっき食っただろう?」
「確かにな。」




