73 バドバド立つ。いや、飛んだんだろう?
・・・・・
「わっ」
美虹は慌てて手で顔をかばった。その手の中に鎖の付いた石がすっぽり収まっている。
「あ・・・あの?」
ペンダントが美虹の元に来るのと同時に弾かれたようにアームが飛び上がり、もの凄い音と一緒に椅子ごと後ろに倒れた。
『ど・・・』
『まずい!離れろ。』
美虹は出来るだけ離れた所に急いで下がる。
アームは、苦しそうにのたうち回っていた。
『おい。女が。』
・・・いない・・・いつの間にかいなくなっている。
目をアームに戻すとそこには黒い水溜まりが残っているだけだった。
「な・・・何が起きたの?」
『さあな。』
手の中のペンダントがさらに眩しく光る。
うわっ手から取り落としそうになったそれは空中に独りでに浮かんでいる。
「どうしよう?」
ぱあっっと眩しい光が部屋の中を満たした・・・
「とり?」
目の前にいるのは神々しいほどに輝く鳥。
「くぇくぇくぇ・・・」
「ま・・・まさか、バドバド?」
気が付いたらレオもリヒテも元の大きさになってた。
にょろにょろは犬くらいの大きさだが・・・
「こいつバドバドだ。」
「しゃべれないのは変だな。」
「こいつ俺たちと同じだ。」
「肉だ。肉をくれ。」
「俺も肉が食いたい。」
「そこにあるのを後で貰おう。」
「おまえ達静かにしろ。」
「あの女はどこに行ったんだ?」
レオがきょろきょろしながら言うと、
「俺見ていた。」
「俺もだ。」
「はじき出されていたぞ。」
「肉だ肉だ。」
「おい俺も食う。」
「おい引きずるな。」
「おまえ達勝手に食うな。」
にょろにょろは見ていたようだ。
「はじき出されたって?」
「それよりアームはどうしちゃったの?」
「多分だが、その清浄な光に耐えられなかったんじゃないか?」
「あの女もそれではじき出されたのか?」
私達は顔を見合わせた。
「かもしれんな。」
ノックの音がする。
「お方様?どうなされました?」
・・・
「こほん・・・なんともないわ。さがってよろしい。」
リヒテが妙な声で返事をした・・・
「は・・・」
・・・
「まずい。」
「消えとく?」
「ああ。」
美虹は素早く皆を見えなくした。
『あちこち殴るから気をつけないと・・・』
にょろにょろは、肉に群がりむさぼり食っている。見ればリヒテも手に肉の塊を持って食べている。
「もしかしたら肉が浮いて見えるかも・・・」
これからどうするか。
『あの女がどうなったのか、見届けねえと。』
『どこにいったのかな?』
『住み処にかえったと考えるのが妥当だろうな。』
『住み処って?』
『分からん。』
・・・
肉のいくつ目かを食べながら、リヒテが、
『まず城に行ってみるのが良いんじゃねえ?』
と言ったので、
『確かにそうだ。だが城はどこだ?』
レオが返すと、
『くぇくぇくぇ・・・』
バドバドが返事をした。
・・・?
『バドバドが乗せてくと行っている。』
『そんなに遠くないらしい。』
『しゃべれるようになるにはもう少し・・・いるらしい。』
『肉だな。』
『肉だぞ。』
『訳ないだろ。』
「おまえ達五月蠅い。」
美虹達は、女を追って王宮に行くことにした。
『こんな面倒しなくても。明日にはあの女が連れて行くと思っていたんだが。何がどうなったんだ?』
『分かんないよ。』
にょろにょろは黙っていた。多分バドバドが原因だと分かっていたのだけれど・・
レオ達も黙っていた。多分バドバドが原因だろうと推測したけれど。
美虹は・・何も考えていなかった。あの怖いおばさんがどこかに行ってしまって良かったとしか・・・
バドバドが羽を広げた・・・・まばゆい光が満ちる。
天井がいきなり抜け、美虹達はバドバドの背にいた。
行くらしい。
『『『『『『『待って!!!!』』』』』』」
下でにょろにょろが騒いでいる。バドバドはちらりと見、急降下し、にょろにょろを嘴にくわえた。
『『『『『『『ぎゃあああああ』』』』』』』
声なき声と共にバドバドは大きく羽ばたき、飛び上がった。




