71 なんちゅうこった?
・・・
『おい。まずいぞ。』
リヒテの言葉にレオは
『美虹俺たちをまた小さくしてくれ。』
と急いで頼んだ。
自分の意志で大きく戻れても、一旦、戻ったら小さくなれない不親切仕様。透明には、自分たちでなれるようにしてくれたのにな・・・とレオは密かに思った。
『うん。』
我に返った美虹は、二人を素早く小さくし、自分の髪の毛の中に隠した。
「大丈夫ですか?」
「お方様?ご無事ですか?」
廊下で声が聞こえる。
・・
『おかたさま・・・ってだれ?』
『この場合宰相夫人の事だろう。』
レオが悠々とい答えた。
『それよりレオ、突っ走りすぎだぞ。』
リヒテが怒っていた。だがいつも突っ走りすぎるのはリヒテなのだが。レオはおとなしく謝った。
『すまん。』
部屋の中を疑わしそうに見るアームと兵士達。
ぼんやりしている美虹にかまわず、5~6人が入って来てあちこち空中を殴りだしたのには美虹も驚いた。
「あのぉ。どうしたんですか?」
「たれかこなかたか?」
アームが聞いてきた。
「え?」
アームの言葉に美虹は驚いた。
・・・
「誰か来なかったか?」
アームが言い直した。
「誰も・・」
アームは美虹の顔を見て、盛大に顔をしかめた。
・・・
「お方様もお戯れが過ぎる・・・」
「あのぉ・・何のことですか?」
「顔を洗うと良いな。」
言われて
「すみません。洗う所はどこですか?」
と返すと、
「そこに水差しがあろう?」
と言われ、そのまま美虹は放置された。
・・
アームは、宰相夫人を助け起こして部屋に連れてきた部下に
「そこに座らせて。」
指示を出したり、水を漏ってこさせたり忙しそうだった。
・・
美虹は言われたように、水差しの水を使って手と顔を洗った。
さっぱりして顔を拭くと赤いモノが付いてきたのに美虹は驚いた。
「え?血?」
赤くなった手ぬぐい見て、青ざめていたら、
「紅だ。」
アームが女を世話をしながら教えてくれた。
・・
「べに?べにって?」
「口紅さ。」
・・・美虹はさらに真っ青になった。
『いっやぁぁぁぁ』
『後で消毒してやる。』
消毒とは物騒な話だ。ますます青くなった美虹に、
『美虹ちゃん。大丈夫だよ。隷属もされてないようだし。あの女、ただの好き者でしょ。』
好き者とはなんなのだ?美虹は思ったが、賢明にもその場では聞かなかった。
・・
『いや。この前の、黒い霧みたいなモノをまとわりつかせていた女とは・・別人のようだな。』
『本当だね。』
女はやがて目を開けた。
・・しかし・・目を開けた女はさっきとがらりと違う雰囲気をまとっていた。気のせいか空気まで冷たくなったようだ。
「お方様?」
アームが聞いた。
「そうだ。」
女が答えたので、さらにアームは野質問が続いた。
「母上は?」
「眠っている。」
・・・・
小さい声で交わされた会話は、美虹達にもはっきり聞こえた。
『お方様と母上って』
美虹が言うと、リヒテも同じ事を考えたのだろう。
『違うのか?』
と聞いた。レオはこともなげに、
『同じ人間の体を2人が使ってるって事じゃねえか?』
美虹が驚いて
『そんなことが出来るんだ?』
とつぶやいたらレオが美虹にだけ聞こえるように
『おまえとリュウもだろう?』
と言ったので納得した。
・・・
「この魔法使い。私が貰おう。」
「はい。しかし・・」
「なにか?」
「この魔法使いが入って来てから、侵入者が出たようなのです。ですので・・・」
「面白い。」
女はにやりと笑った。
女は美虹に向かって
「おまえは我に害をなす事を考えているのか?」
美虹はぶんぶんと首を振った。
『やばそうだよ・・・怖いよ・・・』
『我慢しろ。俺たちが付いている。』
・・・・・
「こっちを向け。我の目を見ろ。」
・・・これ聞いちゃやばいやつ・・・
美虹はどうしようかとパニックになりそうになった。
『大丈夫。僕が付いてる。』
『リュウ。』
リュウは素早く辺りをうかがい、廊下に立っている兵の気持ちを借りてきた。
「ああ・・・早く終わらないかな・・・早く終わって焼き肉と・・・そうだな今日はほろほろ鳥のスープが飲みたい。」
至って平和な男の気持ちがにじんできた。女は笑い出した。
「よし。こいつは我が貰った。厨房に行って鳥のスープと肉を用意させろ。」
女は美虹に
「付いてこい。」
と言って歩き出した。
「まってください。」
「アームよ。心配ならおまえも来るが良い。」
女の後を、美虹とレオ・リヒテ。その後をアームが・・にょろにょろ達を連れているとも知らないで付いていった・・




