7 待ってろ
・・・・
「ここだ。」
「どこ?」
「今日泊まるところだ。」
へえ?旅館?
夢は覚めずに続いている。面白い展開だ。夢の中で夜が来て眠る。夢も見ずに。不思議。 夢じゃないのかもしれない。でも。
「なんて言うところ?」
「きじやと言う宿屋だ。」
「やどや?」
「そうだ。」
私を抱えたまま器用にノートに記入していく。
「それはなに?」
「宿帳だよ。」
カウンターの向こうにいたおばちゃんが教えてくれた。
「お嬢ちゃんは妹さんかい?」
なんて答えれば良いのかな?
「ああ。そうだ。」
レオが素早く答えてくれた。
「へえ。あんたにこんなに可愛い妹がいたなんてね。」
可愛いだって。へへへ照れるね。
部屋の鍵を渡そうとしたのを
「これから買い物に行く。後で貰う。」
そう言って断り、宿屋を出た。
「どこ行くの?」
私の問いに、ちょっと呆れたような声が返ってきた。
「おまえこのまま俺に運ばせる気か?」
なるほど。
「靴?」
「ああ。服もな。」
ありがたいけど
「私お金持ってないよ。」
「出世払いで返せよ。」
・・・出世・・・いつになるやらねえ・・・
しばらく歩いて行くと服を沢山扱ってるらしいお店に着いた。
そこで何枚か買って貰った。
「出来たら下着も・・・」
つぶやいた声が聞こえたらしい。店の人が下着も入れてくれた。
「ここで着替えていこう。」
カーテンの影で買って貰った服に着替える。着物みたいな上着に下着ははキャミに似たようなもの。さらにカボチャパンツ・・・・の上に足首まである長いパンツ。その上に膝より下のスカート。うーん。
出てきたら小さなポーチを渡された。
「ここに今まで来ていた服を入れろ。」
え?こんなに小さいのに?
入れましたよ・・・入りましたよ・・・不思議。
「あれ?返さなくて良いの?」
「寝間着代わりに着てろ。」
なるほどね。
「次は靴だな。」
靴も2足買って貰いました。すぐ靴下と一緒に靴も履く事に・・・靴はバレエシューズみたい。紐で足首を結ぶタイプだったよ。ふうん。
歩いてレオの後についていく・・・どうしても遅れがちな私に気付いてちっ・・また舌打ちされちゃった・・・舌打ちは良くないよね。
「ほれ。」
手を繋がれちゃった。温かい手・・
「ちょっと売ってくる。」
一軒の店の中に入っていく。肉屋さんみたいだね。
「おお。レオか?相変わらずすっぽりマントで隠れてるな。」
言われてレオがマントを外した。耳は・・・普通だね。魔法で幻影を見せてるって言ってたっけ。
袋からベアベアの肉や骨を出していく。
「綺麗に始末されているな。」
そう言って何やら話した後、お金をいくらかレオに渡していた。こっちのお金ってどうなってるんだろう。興味津々で見ちゃう。
「次は皮を売るぞ。」
皮を扱う専門店なのかな?中に入ったら馬具やら、皮のバケツみたいなのやら色々置いてある。何か綺羅綺羅しい革のマントも置いてあった。へえ。
「それは火蜥蜴の皮だぞ。」
店の主人が私に教えてくれた
「綺麗ですねえ。」
「魔獣だがな。」
「へえ。」
「でかい上に火を噴くから狩るのが大変なんだ。」
「そうなんですか。」
話している間にレオが皮をカウンターに出したみたい。沢山あるなあ。
「おい、これだ。」
「おおすまん。可愛い女の子の方が相手のしがいがあるからな。」
可愛いって私のこと?そういえば鏡を見てないから自分の様子が分かんないんだよね。さっきの服屋でも鏡がなかったし。ヘンなの。
そこでも幾ばくかの金を手に入れた後、レオはまたマントをすっぽりかぶり、私の手を引いて宿屋に向かった。
「飯にするぞ。」
宿屋の食堂で、ご飯を食べているとき外が騒がしくなってきた。
ばあん・・・戸が勢いよく開き、
「火蜥蜴がでて暴れている。手伝った者には銀貨1枚の報酬だ。倒した者には金貨20枚。腕に覚えのある者は門に集合だ。」
って。
「火蜥蜴?さっきの?」
「・・龍とは違う。おまえの親じゃない。魔物だ。俺はちょっと言って加勢してくる。おまえはここで待て。いや。部屋で待て。」
って行っちゃったんだけど。
待てって・・・ここで?