63 色々ばれてる?
・・・・
穴の先が明るくなってきた。
『外に通じているんだな。』
『気をつけて。』
二人はむやみに明るい所へ走り出ず、用心深く穴から外の様子をうかがう・・・レオか入り口の所にあった小さい石を外に投げる・・・
ざしゅっ
音と共に短剣が飛んできた。
キン・・展開している防御魔法が短剣を弾く。落ちた短剣・・どこかで見たような?
「美虹、気をそらすな。」
レオの叱責が飛んだ。
二人は外へ走り出た。
女が立っている。
・・・・・・
「おまえ達は誰だ?」
女が憎々しげに言った。
「誰でも良い。おまえは元宰相夫人で間違いないか?」
レオの問いに、
「ふん。そうだとしたらどうなのだ?」
と返す女。
「いや。おまえが何の為に15年前までこの国にいたのか、そして、今、何故戻ってきたのか聞きたいだけだ。」
「分かっているのではないのか?」
「何をだ?」
「パンテェールは、この世界を滅ぼしたいだけなのだということを。」
・・・『まさかだよ。ありえない。』
レオが剣を抜いて飛びかかる。女は長い棒のようなモノを出して剣を受け止め、振り払った。
「ちっ」
どちらが言ったのか・・
レオは炎の攻撃を加える。黒いもやのようなモノが攻撃を弾く。ぱっと離れ、じりじりとお互いを伺う・・
何回か打ち合った後・・・
女は少しずつ下がっていく。
『あ・・』
美虹は後ろにライとリヒテがいるのに気付いた。
『ここは出入り口の近くらしいな。』
レオは呟き、なにやら唱え始めた。
同時にライが何事か詠唱している気配がした。
女がはっとして逃げようと飛び上がった所に魔法の網が被さる。
「は、放せ!」
「2重の網だ。そう簡単には破れまいよ。」
ライが言いながら近づいて来た。
「ま、まさか。王か?」
「・・今は違う。ありがたいことに、君のおかげでね。」
・・・
「取引をしないか?」
女はライに言った。
「おまえをもう一度この国の王にしてやろう。」
「それで?」
「今はまだ時期が悪い。私をこのまま帰してくれれば。」
「それはできないな。」
「なぜだ?また王になれるんだぞ。」
「あいにく王の位には興味がないんでね。」
・・・・・
黙ってライを見ていた女・・・が、急に身震いをし始めた。
「何?」
中で黒いもやもやしたモノが発生している。
にょろにょろが騒ぎだした。
「まずいぞ。」
「あれは、強い。」
「逃げるか?」
「肉だ。肉をくれ。」
「やっつけて肉にするんだ。」
「馬鹿言ってるな。」
「戦うんだ。」
・・・・・
「どうしちゃったの?」
「分からん。油断するな。」
網は膨れあがり・・やがて霧散した。そこにいたのは女とは似ても似つかぬモノ・・・
「な・・なに?」
「あれはなんだ?」
・・
女だったモノは飛び上がり、
「また会おう。アルテミアでな。」
そう言って空高く飛び去った・・・
にょろにょろ、ライとリヒテ、レオ、美虹は唖然として空を見上げていた。そこへ近づいてくる足音・・・
「ま、まさか、ライ様?」
はっとして後ろを見ると。レッグやスルーが何人かの兵と一緒にいた。
『ど・・どうするの?』
・・・しばしの逡巡の後、
『いたしかたがない。パンテェールに会おう。』
ライが言った。
ようやくライはパンテェールに会う気になったようだ。
『レオ。美虹ちゃん。君たちも元の姿に戻った方が良さそうだ。』
レッグの指示を受け、慌ただしくスルーがパンテェールの所に駆けていった。
しばしの後・・・
全員で王の間に向かう。今度は穴の道ではなく、廊下を通ってだ。ライの姿を見知っていたものたちはライを見るなりひれ伏した。それを苦いモノでも舐めたような顔をして通り過ぎるライ。
レオは変装を解き、美虹の水魔法で染料を落としている。だが、美虹だけは姿を戻していない。なぜなら、小さくなろうが、女の子になろうが、服がないからだ。
『おまえはそのままで良い。下手に変わると後が面倒なような気がする。』
レオの言うことは正しいだろう。主に服がなくなる点において・・と美虹は思った。レオは別のことを考えていたようだが。
一行は王の間に入った。
スルーの報告をあらかじめ受けていたパンテェールは表面上は落ち着いて見えた。
「王よ。」
パンテェールは車椅子でもできる限りの騎士の礼を取る。
「ご苦労であった。」
ライが偉そうに言う。
ライは座ることなく、レオやリヒテと一緒に寝台の下の穴を確かめた。
『嫌な臭いがする。』
『俺も感じるぜ。』
ライの言葉にリヒテが応えた。
『レオ。おまえはどうだ?』
『ああ。くせえな。』
『臭いだけですんでいるのか。この臭いは、なんというか、』
『ぞくぞくする?』
リヒテの言葉を
『そうだな。だが、気持ちの悪い臭いだ。』
ライが引き取る。美虹には甘ったるい臭いしか分からないが、獣人を惹きつける臭いだからかな、と単純に思った。
『レオ。私には甘ったるい臭いとしか思えないよ。』
『おまえは人間だからな。』
『この臭いは獣人にしか効かないって事?あれ?リュウは?』
『さあな。』
『薬だよね?それとも香水?』
『・・・分からん・・。』
『ねえ。』
リュウが美虹にだけ話しかけてきた。
『なに?リュウ?』
『薬だったらあのほら、あの町にいたエルフの人。』
『んんん・・フェーさん?』
『そう。その人が詳しいんじゃない?』
ああ。そうだっけ。薬屋さんだったっけ・・・・美虹はすぐレオに伝えた。
『なるほど。奴に詳しく見て貰えば。』
『少しは何とかなるかも。』
・・・
「この穴あちこち続いてる。」
「俺たち分かる。」
「実験室にも続いてた。」
「肉だ。肉をくれ。」
「そろそろ夕飯くれ」
「俺たちの部屋に来た奴この臭い少ししてた。」
「そうだそうだ。」
「盗聴器を仕掛けた奴って事?」
思わず美虹が聞く。
『そうかもしれん。美虹。口になるべく出すな。』
『うん。』
「盗聴器とは?」
聞き逃さなかったのだろう。パンテェールが聞く。
ため息と共にレオが応えた。
「城のあちこちに仕掛けられているぞ。ここ何日か、新たにも仕掛けられている。多分アルテミアの置き土産と、まだいたアルテミアの間者の仕事だろうな。もしかしたらあの宰相夫人とか言う女の仕掛けたモノかもしれんしな。」
「・・・そうおっしゃるあなた様は、・・レオパルト様でよろしいのでしょうか?」
「・・・・・」
「・・・・・」




