62 大団円にはまだ早すぎる
にょろにょろのあとを美虹は追いかける。意外と彼らは速い。その後ろをパンテェールの車椅子が走る。勿論ラビーが押している。こちらも速い。途中階段がある。後を付いてこれるのかなと美虹は一瞬心配したが、それより、今は急がなくては。
『おい。俺もじきに着く。』
『わ・・・分かった・・』
心で思うのに、息が上がって応えられないはずはないのだが、何となく息切れの答えをする美虹。
ドアの前・・・何人かが立っている。
「中に追い詰めたのか?」
いつの間にか美虹に追いついてきたパンテェールとラビー。
「はい。でも、匂いがきつくて。」
「おまえは?番がいるのか?」
「はい。でも、あの匂いはすさまじいです。」
番のいない者は口と鼻に布を巻いていた。
「この匂いもきついです。」
かなり酷い匂いのするモノが染みこませてあるらしい。
そこにレオとレッグがやってきた。レッグは鼻にしっかり布を巻いている。
「レ・・レイン?布を巻かなくて良いの?」
「俺には番と決めている奴がいるからな。大丈夫だ。」
「・・・」
美虹は少し悲しくなった。何故かな?と思いながらも壁の向こうのライとリヒテを心配する。
『ライさん?そっちに匂いは、いってるの?』
『いや。分からない。だが変な感じがする。リヒテと一緒に少しこの部屋を離れるぞ。』
「開けるぞ。」
レッグか言い、扉は開かれる・・・・
とたんに飛んでくる鋭い針のようなモノ。
「あ。危ない。」
美虹が叫ぶより速くもっと針が飛ぶ。
『美虹結界。」
『あ。』
慌てて
「え・・・と・・・え・・・と・・・レインボーバリヤー・・・///////・・・・・」
なんて恥ずかしい。こんな言葉付けなければ良かった。美虹は思った。
その言葉と共に針は飛んでこなくなった。
「いくぞ。」
レッグが叫んで扉の中に・・
「い・・・いない?」
王の間には誰かがいる気配がなかった。
「いないわけがない。さがせ。」
パンテェールの声が響く。
「こっちだ。」
「こっちにいる。」
「ここだ。」
「肉だ肉をくれ。」
「俺もそろそろ肉が欲しい。」
「うるさいぞ。この布の下だ。」
「めくってみろ。」
レオがさっとベッドカバーをめくった・・・誰もいない。
「穴だ。穴がある。」
ベッドの下でにょろにょろが叫んでいる。
「ここに入った。」
「追いかけるぞ。」
「肉だ。肉をくれ。」
「肉を追いかけるぞ。」
「ちょっと違うぞ。」
「良いから行くぞ。」
「小さい穴だ。」
のぞき込んだレオが言う。
『こんな所に穴があったのか?』
『王の部屋には穴などなかったぞ。』
『執政官が作ったんじゃねえのか?』
ライとリヒテの声がする。
『まさかそっちに行ってるんじゃ?』
『ここは王家の者と許された者にしか道は開かれない。』
「俺たちじゃ狭くて入れないな。」
そう言ってレッグが美虹を見た。
「おまえなら入れる。」
「駄目だ!!」
レオが叫ぶ。
「こいつは行かせない。」
「ただの人ならな。だがこのヒトは違うのだろう?」
パンテェールが聞く。
「な・・・」
「行くよ。にょろにょろも行ったし。大丈夫だよ。」
美虹はそう言って足からソロソロと入り込んだ・・・と思ったら
「きゃ~~~~~~~~~」
悲鳴を上げて落ちていった。
「み、美虹っ」
叫んでレオが無理矢理、力業で穴に飛び込む。穴が一瞬爆発したかのように見え、次の瞬間には広がった穴があるばかりだった。
・・・・・
「やはりあの人は美虹さんだったのか。」
パンテェールが呟き、ラビーも頷いた。
「広がったから俺たちも行くぞ。」
レッグが言い、何人かが一緒に穴に飛び込んだ。
落ちる落ちる・・・
『美虹ちゃん!!浮遊だ!!』
『ふゆう?』
『浮くってことさ』
『あ・・・・』
『ぼくがするよ。』
落ち方が不意に緩やかになり、ふんわりと美虹はどこかに着地した。落ちた先に横穴が続いている。奥を誰かが駆け抜けていくのが見えた。その後を追うのはにょろにょろだろう。匂いがきつい。
『目は見えてるよね?』
『うん。この前唯一さんが見えるようにしてくれたから。』
走り出しながら会話を交わす。
後ろから、
『美虹!!』
と呼ぶ声がする。
『レオ。私走ってるよ。』
『待て。』
『待ってたら逃げられちゃうよ。』
そう行っているうちにレオが追いついてきた。駆け抜けながら美虹を抱き上げる。今の姿は10才の子どものモノではないのに、軽々だ。
「わ・・」
「黙ってろ。舌を噛むぞ。」
前を走るにょろにょろもいっそう速度を上げていく。
にょろにょろ・・・速~~~い。美虹は驚いた。
『あいつらとて魔物。普通のにょろとはちがうだろうよ。』
『・・あの女の人も、もしかしたら魔物なの?速すぎるよ。』
『『『『『まさか?』』』』』
・・・・・
「どっちにいった?」
レッグは穴の底で叫ぶ。道は前後に開かれている。
次々に滑り落ちてくる仲間の音で、先を走るものたちの気配が分からない。
5人目が落ちてきた所で全員に音を立てるなと合図をするが、
「向こうか?」
「かすかに音が聞こえるような?」
「こっちからもかすかに聞こえます。」
「仕方ねえ。2手に別れるぞ。」
六人しかいない仲間を2手に分けた。そこへもう一人降りてきた。
「スルーか。」
「気配は任せろ。」
皆静かにスルーを見つめる。
「こっちだ。」
正しい方向を見つけ、皆で後を追い始めた。もうその頃には女も、にょろにょろも美虹とレオも穴から出てしまっていたが、そんなことは知るよしもない。




