61 まじめに至極まじめな話・・
黙っている美虹に
「話したくないのでしたら、それでも良いのです。でも、レオ様やライ様が無事でいるのかだけは教えて欲しいのです。」
と言うパンテェール。
「何の為に知りたいのですか?あなたは何を望んでいるのですか?」
美虹は思わず返してしまった。これでは肯定しているのと同じだ。遠くでレオが舌打ちしているのが聞こえたが、美虹にはどうすることも出来なかった。
「私はアルファ・・亡くなった騎士団長に頼まれているのです。」
「何を?」
「王家の再興です。」
「再興?何に為に?王家などなくとも国は成り立つでしょう?中央の街があった国には王も騎士団もなかったと思いましたが。」
「私がいた傭兵団。あれはアルテミアの寄越したものなのです。中心はアルテミアの人間。つまり、あの国もアルテミアの支配下にあったのです。」
・・・・気が付かなかった。美虹はつぶやいた。
『確かに俺たちが出会った国はアルテミアの支配下にあった。悪い風にはあまり思えなかったのだがな。』
『レオ?』
『パンテェールは王家を再興したいのか。俺でなくてもいいわけだ。』
『何を言っているんだ。おまえが後を継ぐべきだ。』
ライの声が混じる。
『中央の街は長くいたわけじゃないけど、活気があって、変な感じがしなかったよ。』
そうだ。中継ぎの町も決して変な感じはしなかった。最も、両方の街とも、何日もいたわけではないので美虹には本当のところは分からないが。
『アルテミアって圧政を敷いているわけじゃないんだよね?』
『俺たちを奴隷としているだけだな・・・つまり、俺たち獣人には良くない政治というわけだ。』
『ああ。だから、ヒトが中心の中継ぎの町や、中央の街は変な感じがしなかったんだね。』
『アルテミアの指導者の考えが知りたい。』
『本当だね。』
・・・・
「王がいる国に戻したいのですか?」
「王。そうですね。王でなくとも王家の方々が国の中枢にいてくだされば。」
「支配者は王でなくても良いと?」
「・・・・・」
パンテェールは応えなかった。また沈黙が部屋を支配する。
「我々獣人を奴隷として使おうとしなければ、おそらくアルテミアのやり方でもこの国は大丈夫でしょう。でも、現実は我々は簡単に奴隷にされ、連れ去られてしまう。この町の人口がかつての半分になっていることに我々は驚いたのです。」
「?」
「今のスルーやバギーくらいの年頃の獣人の少ないことと言ったら。彼らは皆アルテミアに連れて行かれ、奴隷として従事していると聞きます。」
「奴隷・・」
「中には戦闘奴隷もいるとか。実は先日、白龍様が降臨されたときに傷ついた者の大半は我々の仲間でした。今は隣の建物で回復を待っているのですが、隷属の印が付いたままなのです。この印がどうにかならない限り・・・・
確かに我々獣人は戦いに向いています。でも、隷属されて戦わせられるとは・・」
「印って?」
「我々にはどうすることも出来ません。あなたの前にいた魔法使いも、やはり隷属の印を付けていました。彼が言うには、アルテミアにいる魔法使いがそれらの印を付けたのだとか。」
ため息と共にパンテェールが吐き出した。
「アルテミアに強力な魔法使いがいるって事?」
パンテェールは頷いた。
「・・何万人もの獣人に隷属の印を入れられるなんてそんなことができるはずがないというのが、それまでの我々の考えでした。」
ラビーも口を挟んできた。
「一人の魔法使いが隷属させられるのはせいぜい数人と聞いていました。」
「それが何万人?」
「龍を味方に付けたのだという話も聞きました。」
『美虹ちゃん。』
『ライさん?何?』
『例の女。王の間にいる。』
美虹は顔を上げた。
バターン
戸の開く音と一緒に、にょろにょろが飛び込んできた。
「いた。」
「あの女だ。」
「この前の部屋だ。」
「肉だ。肉をくれ。」
「腹が減った。俺にもくれ。」
「今はそれどこじゃないだろう。」
「いくぞ」
美虹はにょろにょろの後について飛び出した。




