56 僕は人間です
・・・・・アルテミアにて・・・
・・・・シンとした室内・・・やがて・・・
「元帥、」
「将軍。話は分かった。間違いなく白龍だったのだな?味方に付けていたようだったのか?」
「いいえ。その場からすぐ去りましたので。」
「誰がだ?」
「白龍です。その場にいた魔法使いらしき者を連れ去ったと聞いております。」
「おまえは見ていないのだな?」
「は。」
「すぐに去ったというのに、何故我が軍が負けたのだ?」
「戦意喪失し、次々投降したと聞かされております。また、多くが負傷しておりまして・・・・」
「黙れ!!」
元帥は立ち上がった。うろうろと歩き出す。窓に目を向け、
「白龍がシュバルツァーの味方と決まったわけではあるまい。」
と言った。
「?は・・」
将軍を見据えて言葉を繋ぐ。
「敵の名は?」
「白龍に乗った者はレオと呼ばれていたそうです。」
・・・・
元帥は舌打ちをした。
「指導者だ。知りたいのは。」
「直接対峙した者が大けがをしておりまして。置いて参りました。その者からは、レッグと名乗ったとしか聞いておりません。」
「レッグ?」
「その後城に入城して参りましたときは、その者とは別の車椅子の男が中心だったのですが・・・・・」
「は!!車椅子?」
元帥は今やいらいらと机の後ろを歩き回っている。
「・・・3月ほど前中央の街と呼ばれる所の傭兵団をワイバーン狩りに雇い入れたことは報告済みかと思います。」
「ああ。そんなこともあったな。」
「その際バドバドを操っていた男、副隊長と呼ばれていたそうですが、彼の名がアルファ・・・シュバルツァーの元騎士団長の名前を名乗っていたんだそうです。その男はバドバドと共に大けがをして傭兵団に戻っていたようです。」
・・・・
「その男が車椅子の男だと?」
「可能性はあります。しかし・・・城に来たときは、パンテェールと名乗っていましたが。」
「ううむ・・・」
立ち止まり、黙って将軍を見ていた元帥は、卓上のベルを鳴らした。
入って来た騎士に
「おい。レディを呼べ。」
とだけ言い、後は黙り込んだ。
「執政官はどういたしましょう?」
「まだおまえはいたのか。今はもう用はない。下がれ。」
・・将軍は唇をかみしめて部屋を退出した。
廊下を歩いているとき、向こうから華やかなドレス姿の女性が騎士に先導されてくるのが見えた。
「レディ・・」
女性は立ち止まりもせず将軍の脇を通り過ぎた。
「あなたの後始末に呼ばれたのかしら。」
言葉が聞こえて慌てて振り返るも、将軍を見もしないで進んでいく。将軍は深いため息をついた。
・・・・・
・・・シュバルツァーの城・・・
・・・
「まあ。冗談はともかく、僕は人間ですよ。間違いなくね。」
「・・・おまえ・・・脱いでみろ。」
レッグが言う。
「い・・嫌ですよ!!」
「男なら脱げるだろう?」
「男でも人には裸を見せませんよ。」
「ふうん。じゃあ一緒に共同風呂に行こう。」
「なんでそうなるんですか?」
ラビーさんが
「それは、女の子だから一緒に風呂に行けないのですか?」
と言ってきたので美虹はますます困った。でも、体は15の男の子の体に変化している。困ることはないのだが、男だらけの共同風呂に入るのは、やはり抵抗はある。
「困らせるな。」
パンテェールさんの一言でこの話は終わったが、レッグの疑いは晴れないようだ。
「おまえの保護者。レインと言ったな。本当に虎獣人か?」
「見たとおりですよ。でも、なんで僕達を疑ってるんですか?」
「疑っているのじゃない。」
パンテェールが言った。
「希望を持っているんだ。」
・・・・
『もうパンテェールさんに本当のことを言ってもいいんじゃないの?』
『『だめだ』』
ライとレオ唐同時に返事があった。
『パンテェールさんは純粋に国のことを思ってるだけみたいな気がするよ。』
『それでもだ。』
・・・・・
あれからまた2週間ほどが過ぎた。完全にアルテミアから独立したわけではないので、皆戦いの準備に忙しいようだ。レオは順調に軍の中で地位を築いているらしい。魔獣狩りにも時々軍が出動し、華々しくやっているようだ。
「魔法を使えねえのはいたいな。」
「仕方ないよね。」
「ああ。」
「でもここは軍なんだね。」
「王もいないのに騎士団は可笑しいだろう?」
「・・・でもテンプル騎士団・・・あ。主たる者が神様か・・・神様が主たる者なら、騎士団でも良くない?」
「そんなんはパンテェールに言え。」
レオは休憩時間やそのほかの時間をうまく使ってライに会いに行っているらしい。そこでまたいろいろな話をしているのだろうが、美虹は蚊帳の外だ。仕方がないけれど、どうしていったら良いかだけはちゃんと知らせて欲しいものだと思っている。
美虹は1日の半分は研究室で。残りの半分をパンテェールと一緒に過ごしている。パンテェールと同じ部屋にいると探るようなラビーの視線とパンテェールのすがるような視線を感じてかなり居心地は悪い。おまけに未だに研究室とパンテェールの執務室の間はレッグが送迎している。そろそろ一人でも行き来できると思うのだが・・・
そんなある日、
「アルテミアから、元宰相の奥方が尋ねてきています。」
と言う報告がパンテェールの所に届いた。美虹がちょうど一緒にいたときだったので、
「おまえも一緒に来い。」
と言う一言で、宰相婦人と会うことになった。
レッグも呼び出され、一緒に行くことになった。あの三人の中でレッグはかなり位が高いのだろうか?美虹には分からないが、スルーやバギーとは滅多に執務室で一緒にならないのでそう思っているだけなのだが。そう言えば、アームには1度も合っていない。どうしているんだろうと美虹は不思議に思った。
『どうしよう?』
ライとレオはかなり関心を示し、映像も見えるようにしてくれと言ってきた。
『宰相婦人・・確か子どもが一人いたはずです。レオより少し上くらいの年頃だったと記憶しています。あの戦乱で行方は分からなくなっているようですが。』
「魔法使いなら、宰相婦人が今頃現れたわけを探ることが出来るだろう?」
レッグの言葉に美虹は目を白黒させた。
「そ・・・それは無理だと思いますが・・・僕は宰相婦人が何者かも知らないんですよ。」
・・・ドアが開いた。
・・・




