54 いいわけ
「・・開いてたんですよ。」
美虹は慌てて言った。
「ああ?」
レッグが不審そうな顔を向けて聞く。
「だから、あの扉は、最初から開いてたんです。
「んな都合のいい話があるかよ。」
「だって、僕は自慢じゃないけど、全ての部屋の扉を重さで開けられなかったんですよ。あの部屋の扉だって僕が開けられるはずがないでしょう?」
「・・まあそうだな。」
「少し開いていたから、ちょっとおしてみたんです。そしたら、僕が入れるくらい開いたから、ここかと思って入ったんですよ。」
・・・まだ疑わしそうだけど、
「なるほど。おまえ、ここの部屋の扉は開けられるか?」
パンテェールが言ったので、美虹は
「今は、レッグさんが開けてくれましたから試してませんけど、多分無理じゃないかと思います。」
と答えた。
パンテェールは笑って、
「なるほど。では,誰が開けたのだろうな?」
と言った。
「僕には分かりませんよ。」
美虹は、そう繰り返すしかなかった。
・・・・・
「・・・まあすわるか?」
パンテェールは椅子を1つ勧めてくれた。
「ありがとうございます。」
やっと座れる。美虹はにこにこして座ったそこに、
「さて。昨日の話をもう一度聞こうか。」
とパンテェールが話しかける。
「はい?昨日はあれで全てじゃないんですか?」
ついそう答えたら、レッグが、
「まず、あの男。レオパルト様を名乗った男のことが聞きたい。」
と言った。言われても美虹には分からない。
「は?知らないですよ。」
答えはそれしかない。
「知らないのに何故レオパルトを名乗ったことが分かったのだ?」
パンテェールが聞く。
「そりゃ、その前に、僕に、俺に仕えろというようなことを言ってきたからですよ。」
その言葉にアームとパンテェールは顔を見合わせた。
「仕えろとは?」
「だから、俺は王子だから、俺と組んで国を再興させようって感じのことをですね、言われたんですよ。」
「ほう?」
「そう言えば、あの人どうなったんですか?」
気になっていたことを美虹は聞く。答えは簡単だった。
「あの後すぐ死んだ。」
・・・・
「過信しちゃったんですね。」
「過信?」
「自分の力量をですよ。」
「おまえは過信してるのか?」
「まさか。僕に出来ることなんて微量なものですよ。」
出来ることどころか、何が出来るかもよく分かっていないのだ。
「ところで、おまえは面白い袋を持っているそうだな?」
(何で知ってるの?)
「ついこの前、ここに来るとき見つけた魔物と契約したんです。こいつ、人一倍食べるので、僕の肉を分けてやってるんです。」
「ほう?見せてくれんか?」
「まだ契約したばかりなので。」
「見せられんと?」
「まだ慣れていませんから。」
「おまえの食事から分けるとは、おまえが小さいわけだ。今度から、契約獣の分は別に食堂でもらいと良い。ちゃんと話を付けといてやる。貴重な魔法使いの貴重な魔物だからな。」
『小さいって・・・今の私は160㎝くらいあると思うんだけどな。』
『美虹ちゃんは本当はどのくらいの大きさだったの?』
『私?155㎝だよ。』
『ふうん。あんまり変わらないね。』
・・・・・
美虹はゆっくり食堂に向かっていた。勿論場所が分からないので、レッグと一緒だ。
「おまえ、方向音痴か?」
レッグがさっきの険しい顔はどこへやらといった柔和な顔つきで美虹に聞いてきた。
「そうだとは思いたくないんですけど。」
美虹はちょっと嫌な顔をしながら答えたのだが・・
「食堂がどこにあるか分からねえんだろ?」
・・・・・
「ぐ・・・」
「ずぼしだよな。」
・・・
もう・・・こうなったら白状しておかないと、午後に差し障る。そう思った美虹は、
「正直に言っちゃいます。自分に与えられた研究室のある場所も、歩いてるうちに分からなくなりました。」
と白状した・・・
・・・
「は?」
レッグは美虹に、狐につままれたような顔を向けてきた。
「だから、研究室の場所が分からなくなりました。」
・・・・
・・・・
「ほら。食堂だ。」
「あ。ありがとうございます。」
「終わった頃に迎えに来てやる。全く。こんな奴は初めてだぜ。」
「すみません。」
ため息と一緒にレッグは去って行った。
『レッグさんってどこでご飯食べるのかな?』
『そりゃ、執務室だろうさ。』
『レオ?来てた?』
『ああ。』
「おい。こっちだ。」
「れ・・レイン。ありがとう。」
「おまえ、まだ城の中を一人じゃ歩けねえのか?」
「う。」
黙って食べ始めたとき、
「お~い。ミクティさん。いたら返事をしてくれ。」
まかない口から一人のおばちゃんが大きな声で呼んでいる。
「あ。契約獣のご飯くれるって言ってたんだ。」
「あ?・・・契約獣の分を?」
美虹は立ち上がり、
「はーい。ここです。今行きます。」
と言ってそちらに向かった。
「ほれ。生肉で良いんだろ?」
『『『『『『『肉だ。肉だ。俺たちもう生は嫌だ。』』』』』』』
声が心に響いてくる。いつの間に心話を?
「あ・・・できたら、わた・・・僕達と同じのが良いんですけど。」
「そうかい?じゃあこれを持って行きな。」
おばちゃんが肉のたくさん入った皿を美虹に寄越した。
「わわわ・・・」
あまりの重さに落としそうになった。
「なんだい。男のくせにひ弱だねえ。ま。魔法使いなら仕方ないか。持ってってやるよ。」
肉の大皿をささげもったおばちゃんを後ろに引き連れ、美虹は席に戻った。
「なんだ。持てなかったのか?」
「どうせひ弱ですよ。」
にょろにょろ達は大漁の肉の投入に大喜びだった。あまりに袋が動くものだから、いらぬ注目を集めて大変だったが、まだ契約したばかりの魔物というとたいていはすぐ目をそらせてくれた。
「おい。」
声に振り向くとレッグだった。
「行くぞ。」
「あ。はい。」
立ち上がり付いていこうとすると、
『何でレッグが?』
と言う声が追いかけてきた。
『研究室まで連れて行ってくれるの』
『あ?』
『・・・行き方が分からないの。』
『・・・・・』
「おまえ。」
「はい?」
「研究室にあるがらくたは整理終わったのか?」
「ええ。用途が全然分からない物と、明らかにヤバイ物と、用途が分かる物に分けました。」
「そうか。ここだ。この部屋の扉は開けられるのか?」
「はい。ここには何らかの魔法がかかっているようで、力のないわ・・僕でも、開けるよと伝えれば開きます。」
「ふうん?」
レッグは扉を開けてからまたしめた。
「開けてみろ。」
「はい。」
扉は難なく開く。
「ほう。確かに山が分けてあるな。」
「ええ。こっちが用途の分からない物。」
私は1つを指し示す。
「こちらが,加護の魔法を感じる物。」
「ふうん?」
「そしてそちらが」
言うそばから触ろうとしてるけど・・
「それは,悪意を感じた物ですよ。」
「ば。それを早く言え。」
言う前に触ったのはそちらでしょ?美虹は心の中でつぶやいたが
「そうですね。」
しらっと答えて物を受け取った。
「触ってもだいじょうぶなのかよ?」
「悪意を持って触っていないので。」
うそだ。これらは美虹が触る分には無効になっているが、王家に悪意を持っている者が触ると発動するのだ。よく出来た身を守るグッズだ。何で前の魔法使いや自分には発動しなかったかまでは分からないが,おそらく悪意を持っていないからだろうと考える。前の魔法使いは黒豹だったようだし、最初は奴隷みたいな立場にあったのかも知れない。
「これを触るとあの壁と同じようになるってこたあねえんだな?」
「多分。でも,何がおこるか分からないから進んで触る気持ちにはなりませんけどね。」
で。
私はアームさんを見た。
「これをどこに置くとか、処分したらとかすれば良いのですか?」
「おまえの判断はどうなんだ?」
「そっと宝物庫にでもしまっておくってのはどうですか?」
「宝物庫?」
「あればですよ。」
「なんで宝物庫なんだ?」
「宝物庫って普通持ち主以外入る奴がいるとしたら泥棒とか,悪い心を持っている人でしょう?そこにおけば防犯グッズにも使えますからね。」
レッグはゆっくり美紅を見た。
「防犯グッズとはなんだ?」
「え。防犯に使えるものって意味かな・・・」
気になるグッズを1つ手にとって見ていた美虹ははっとした。グッズなんて通じない。
「おまえ。どこに国のもんだ?」
「遠い。とってもね。」
疑われてるのかな?
「あの黄色い奴・・あいつは虎だろう?対しておまえは人だ。兄弟とか行っているが・・・」
「レインは遠い親戚だよ。僕の兄代わりなんだ。」
「ほう?」
『ちゃんと面接の時伝えてあるよね?』
こころのつぶやきにリュウが
『知らん顔して。レッグやパンテェール達は、美虹ちゃんがあの服を残していなくなった美虹ちゃんと何らかの関係があると思ってるよ。』
そうなのか?でも知らん顔しとこう。美虹は続けた。
「とりあえず,運んで行く許可をください。」
「これを宝物庫へか?」
「ええ。」
「ちょっと聞いてくる」
そう言ってレッグが去って行く。美虹は,ため息をついた。
袋が蠢く。ちょっとだけ袋の口をゆるめてやる。
「俺たち何かすることあるか?」
「そうだな。飯が久々に腹一杯食えたからな。」
「今ならちょい無理なやつでもやれそうだぜ。」
「肉だ。肉だった!!!」
「いやあ。美味かった。」
「おまえらそればっかりだな。」
「まあ。美虹。やれること教えといてくれ。」
頭がちょろちょろ見え隠れする。
「すぐに戻ってくるかも知れないからまた口しめちゃうけど。ここの宝物庫ってどんなのか分かりそう?」
「どうだろう?」
「レオやライに聞いた方が早くねえか?」
「俺もそう思うぜ。」
「肉だ。夕飯も肉が良い。」
「俺もだ。」
「シッ。誰か来る。」
「引っ込め・・」
扉が開いて入って来たのはパンテェールを連れたレッグだった。
「なんだって?王家を守る宝物?」
なんのこっちゃ?




