52・・・・・見なければ良かった・・・
行った先は王の部屋だった。
部屋の前には数人の兵士がいる。彼らをかき分け、扉の前に美虹とレオを連れて行く・・・
扉を前にレッグは美虹に、
「いいか?」
と聞いた。
「え?何が?」
「まあいい。開けるぞ。おい。おまえたち、開けたらすぐしめろ。」
「「は。」」
二人の兵士が返事をし、扉に手をかけた。残りの兵士は後ろに回る。
扉を乱暴にたたいた後、二人の兵士が扉を開けた。
「いくぞ。」
3人が入るとすぐ扉は閉められた。
「ぎゃあああああ」
悲鳴が響き渡っている・・・レオが顔をしかめて美虹を見た。それから美虹の目を覆う・・・・
「何?」
「見せたくねえ。」
・・・レッグが呆れたようにレオに言う声が響く。
「おい。ミクティの目を塞ぐな。見て貰って助けにゃならん。」
「こんな馬鹿な奴を助けるのか?」
何のことだろう?美虹は好奇心が刺激された。勿論断続的に聞こえる悲鳴にはびくびくしているのだが。
「ねえ。なんなの?見せてよ。」
・・・・・見なければ良かった・・・・
壁に食われている?
ホラー・・・美虹は思わずつぶやきそうになり、慌てて口を塞いだ。目の前にはあの男が半分壁に埋まり込んでいる・・・
「・・・どうやったらこんなになったんですか?」
声が震える。
『ねえ。ライ、そっちはどうなってるの?』
『ああ。美虹ちゃん。今もレオに聞かれたけど、別にどうもなってないよ。』
壁の向こうは変わりないらしい。でも・・うわ・・見たくない。美虹は顔を背けた。
「どうだ?魔法で救い出せねえか?」
レッグが美虹に話しかけた。
「・・・どうやったらこうなるのか、ミクティは知りたいようだぞ。」
レオの声が被さる。
「いや。こいつが王家の者だと主張するから、この部屋に丁重にご案内しただけさ。」
「それだけでこんなになるわけねえだろう?」
レオがたたみかける。
「この壁の向こうに王家の秘密がある。おまえなら見つけられるだろうと言ったら任せとけと言ってな。」
パンテェールがそう言って男の側から離れて美虹に近づいて来た。
「結論から言うと、こいつはレオパルト様の名を騙る偽物だったというわけだ。」
「は・・・早く助けてくれ!!!俺が悪かった!!!ぎゃ・・・」
だんだん男の声が弱々しくなっていく。
「こんなもんが壁に生えてたんじゃ本物のレオパルト様やライ様がいらしたときに見た目も良くない。すまないが、ミクティ、何とかしてくれないか?」
パンテェールの丁寧な頼みに、美虹は。おそるおそるもう一度男を見る。
困った時は・・・唯一さん・・・来てくれるかな・・・
『唯一さん!!困った!!どうしたら良いの?』
・・・・
『これはまた・・・王家の者でもないのに、欲を掻いたんだね。』
『こんなとこに生やしておいたら、レオ達が困るよね?』
『う~ん。抜くことは出来るが・・・これは・・・』
『これは何?』
『長くは生きられないだろうな。』
『ええ?』
・・・・
「と・・・とりあえず、抜きます。」
『大丈夫なのか?』
『今やり方聞いた。リュウに手伝って貰う。』
美虹はおそるおそる男に近づく・・・もう暴れる力も、騒ぐ力もなくなってきたようで、
「このヒトを誰か引っ張ってくれませんか?」
レッグとレオが顔を見合わせた。二人ともいやいやながら手と足を引っ張る用意をする。
「いいですか?」
「「ああ。」」
そっと手かざして
「トーン」
とつぶやき、
「ひっぱって!!」
と同時に男が美虹の方に倒れ込んでくる。素早くレオが美虹をかばい、男はそのまま床に倒れた・・・
「きゃっ」
見なければ良かった。美虹は思った。
「もう良いだろう。俺たちは部屋に帰るぞ。」
レオの言葉にレッグが
「あ・・ああ。ありがとうよ。また明日。」
と言った。
「まて。まだ話が聞きたい。」
パンテェールが言うが、レオは、
「いや。明日の朝だ。」
と言い捨てて扉を開け出て行った。
・・・
「これは、融けている。」
「とりあえず、外に立っている奴等に運び出させよう。」
パンテェールの言葉にレッグは動き出した。
「しかしあのミクティというやつ。興味深い。」
「全くです。」
ラビーが車椅子の後ろで賛成した。
「ねえ。あれ・・・」
「ああ。生きちゃいられねえな・・」
「言わなきゃ良かったのかな?」
「いや。言った方が良かったのさ。」
廊下を歩きながらそんな会話をする・・・美虹はさっきの様子が目に焼き付いているようで、どうにも後味が悪かった。
部屋に帰って結界を張り、ようやく安心して、にょろにょろをだした。
にょろにょろ達も、何か感じているようで、いつもみたいに姦しく騒がない。
「おまえ達、静かだな。」
ベットに転がったレオかからかうと、にょろにょろ達は、お互いつつき合ってから、
「龍の力を感じたんだ。」
「凄い威圧だった。」
「感じなかったのか?」
「肉だ。肉をもっとくれ。」
「さっきのじゃ足りねえ。」
「威圧というか、凄い恐怖を感じたぞ。」
「恐怖の感情で俺たち潰されそうだった。」
と口々に言い出した。
レオは
「ほう?」
と起き上がった。
「私、何にも感じなかったんだけど。」
と、美虹が言うと、レオが、
「俺は恐怖の感情は分かったが・・・おまえって・・・前から思ってたけど、そうとうにぶいよな。」
と言いだした。
「え?にぶくないよ。」
美虹が反論すると、さらに、
「いやいや。十分鈍いぞ。」
と、うんうん頷きながら、
「先に体洗ってくる。」
と言って浴室の方へ行ってしまった。残された美虹は、唖然として、にょろにょろ達とリュウに、
「私鈍くないよ。」
と言い張っていた。
レオの後、シャワーをし、髪を乾かして貰う。
「明日はきっとまた呼び出されるに違いねえ。ちゃんと会話を聞かせるようにしとけよ。ライ達にもな。」
髪に温かな風を当てて貰いながら、
「あ。ライ達に報告しなくて良いのかな?」
美虹が聞くと、
「とっくにあの部屋で報告済みだ。向こうは何ともなかったらしいぞ。」
と言う答えが返ってきた。
「威圧とかにょろにょろが言ってたんだけど。それもなし?」
美虹がさらに聞くと、簡単に答えが返ってきた。
「ああ。」
にょろにょろの言うところの威圧感ってなんだろう?それは二人の共通した疑問だった。
「そう言えば、ライ達ってずっとあそこにいるの?」
「いや。夜が明ける前にこっそり出て、獲物を狩っている。昼間は肉屋に卸したり、必需品と交換したりしてるらしい。」
「見つからないのかな?」
少し心配になって美虹が聞くと、
「ライとリヒテの魔力は強いぞ。
この城にもけっこう魔力持ちがいるようだが、魔法使いになれるほどじゃねえ。
つまり、あの二人を見つけることが出来る奴はこの城にはおまえと俺しかいねえということさ。」
と言う言葉が返ってきた。もう一つそれに関係して聞きたくなった美虹が、
「この城のヒトって・・・戦いにだけ特化してるの?」
と聞くと、
「獣人だからな。戦いはお手の物さ。」
と言う。
「魔法は獣人には苦手な分野なの?」
「そんなことはねえ。むしろ、つかえねえ奴の方が少ねえ。
けどな。さっきも言ったように、そんなに強くはねえんだ。
さ。いつまでもこうしてねえで。寝るぞ。明日も朝は早い。」
・・・
獣人達には魔力はある。でも、全員が魔法使いになれるほどじゃない。と言うことが美虹には分かった。
(明日はどうなるのかな。)
『美虹ちゃん。心配しても始まらないよ。何とかなるよ。』
リュウがくれた言葉で少し落ち着いて眠ることが出来た。




