51 騙る者
ご飯の後、袋をぶら下げて一人で帰れそうな所まで送ってもらった後、レオと別れた。
別れる前に、
『誰か付いてきている。俺の後か、おまえの後かは分からんから、俺は一旦自分の隊にもどるが、見てるから安心しろ。』
って・・・安心できないことを聞かされた。あと少し・・・部屋に向かって歩いていると・・・
『ねえ、後ろずうっとついてきてるよ。』
『やっぱり?私もそう思ったんだ。』
意を決して美虹は立ち止まり、後ろに向かって声をかけた。
「だれ?」
「分かってたのか?」
さっきの黒豹獣人だった。
「何か用?」
「その袋が気になってよ。」
近づこうとしていたので、
「レインボーバリヤ~~~(////恥ずかしい///)」
「おっと。俺は何もしないぜ。」
男は立ち止まり、両手の平を美虹に見せた。
「近づかなくても用件は言えるよね?」
美虹は警戒してレオに通信を開いた。
『レオ、こっちに来てた。』
『行きたいが、今すぐは無理になった。待てるか?
・・・通信回路開けたままにしろ。』
『うん。』
・・・
「なあ。おまえ、王家に仕える気はねえか?」
「どういう意味ですか?」
「俺はな、この国の王子なんだ。」
「は?」
「レオパルトって言うのが本当の名前だ。
おまえは見たところ優秀らしいし、俺と組んで王国を再興しねえか?」
・・・
「あなたが王子だという証拠はあるんですか?」
「証拠?そんなのは王位に就けば必要ねえだろう?俺と組んでパンテェールの武力を貰って王国を立ち上げようぜ。」
聞いていられない。美虹は、
「お話というのはそれで終わりですか?」
と聞いた。
「ああ。どうだ?」
「どうだと言われましても・・あなたのことを知りませんし、真実かどうかも分かりませんし。」
・・・足音が聞こえてきた。男は一瞬びくっとし、
「まあいい。誰にも話すなよ。また返事を聞きに来る。」
と言って去って行った。
『レオ?』
足音は別の兵士だった。どこかに呼ばれていくらしく、こっちを見もしないで通り過ぎていった。
『すまん。行けなかった。聞こえてはいたんだが・・大丈夫だったか?』
・・
『ねえ。あんなこと言っていたんだけど。』
『ふん。何を企んでいやがるんだ? 美虹、ついて行っちゃ駄目だぞ。』
『得体の知れないのにはついていかないよ。』
『どうかな?』
『信用してよ。』
研究室に戻って結界を確認する。
「なんだったの?」
「分からないね。」
リュウと話しながらも油断しないで部屋の中を見て回る。午前中あらから片付けたとはいえ、まだ得体の知れない魔具はそのまま机上においたままだ。一応は無効になってはいるが・・・短剣だけは不気味に無効がかからないままになっていた・・
真ん中にある指輪。王家の紋章入りで、守護魔法がかかっている。これはライに見て貰った方が良さそうだ。レオに言わなくていいかな?後で言えばいいか・・・
『ライ?』
呼びかけたらすぐ答えてくれた。
『なんだい?美虹ちゃん。』
『実はね、魔法使い用の研究室でこんな物を見つけたの。見てくれる?』
映像を結ぶのは少し難しそうだったが、写真をスマホで送るような気持ちで繋いだら、届いたようだ。
『これは・・・』
しばらくの沈黙の後、
『おそらく、王妃の指輪だ。実際に見なければ断言は出来ないが・・・レオの母親の指にはまっていた物と似ている。これが何で魔法使いの研究室にあるのかは分からないが。』
『そうだよね。普通は宝物庫だよね?』
『直接手に取って見たい。ここまで持って来れないか?』
『え・・・王宮の中を王の部屋まで?・・・無理。』
・・・
『転移魔法は使えるかい?』
『使ったこともありませんよ』
『その部屋の場所が分かれば僕が行くんだが。』
『レオなら分かるかも』
『いや。レオにはその指輪のことはまだ話したくない。』
『なんで?お母さんの指輪でしょ?』
『違うかも知れない。それを確かめたいんだ。』
美虹は困ってしまった。
『外に出られないか?リヒテに取りに行ってもらう。』
『私、外って言っても城の出入り口しか分かりませんよ。ずっと城の中でしか動いていませんから。あ・・・庭みたいな所には出たことはあります。魔法をテストされたとき・・』
『テスト?』
『あ。試験です。』
様子を聞いていたライは、
『そこなら井戸が近くにあるはず。そこまで持ってきて欲しい。』
と言う。
美虹は、きょろきょろと廊下を見ながら進んでいる。
『どこへ行く?』
レオから声をかけられたので、この前の試験会場に行きたいのだと伝えると、道を教えてくれた。美虹は、レオの記憶力に驚いた。
『凄いね。』
『普通一回行ったことがあるところなら、すぐ行けるだろう?』
反対に、そう言われて面白くない気分になったことは、レオには言えなかった。
無事リヒテに指輪を渡して部屋に戻る途中、美虹は、パンテェールとラビーに会った。
「おや。ミクティ君。」
一瞬ミクティって誰?と思いかけた美虹は、自分のことだと気付いて慌てて
「こんにちは。パンテェールさん。こんなところで?」
「王の部屋に行っていたんだよ。」
「あ。」
「幻に会えないかと思ってね。」
ラビーが
「見間違いですよ。」
と言うのを聞いて、
「パンテェールさんは前王のことが好きなんですね?」
と聞いてみた。
「自分は王家の人間に敬意を払っているのだ。」
・・・じゃあ、あのこと言ってもいいかな?
『レオ、さっきのレオを騙ってる黒豹獣人のこと言ってもいい?』
『あ?ああ。パンテェールか。いいだろう。』
「実は・・・」
・・・
美虹の言葉に、パンテェールは色めきだった。
「黒豹?レオと名乗ったと?」
「ええ。レオパルトだと言ってました。」
「こうしてはいられまい。ラビー、行くぞ。」
「はい。」
・・・『美虹ちゃん?』
『リュウ。良いでしょ?』
『多分ね。』
それから王宮は大騒ぎになったようだった。ようだったというのは、美虹は直接知らないからだ。美虹はレオと夕飯を悠々と食べていたのだから。食堂にいたものたちも色々噂をしゃべり合っていた。断片的に入って来た話では、レオを騙る男はあまり好かれていないようだった。
『あの偽物、どうなるのかな?』
『さあな。』
『王の間を開けさせるんだと思うんだけど、親戚とかじゃないの?』
『ここは基本黒豹の国だ。それなりに黒豹人はいる。ただ、王家の者は数は少ない。俺とライ。それからどこかにいるライの伯母さんだな。ライもその伯母さんのことは良く分からんと言っていたな。後は市井に落とし胤がいるかというと、まずいない。』
『どうしてわかるの?』
『王家の者は望まなければ子をなせないのさ。』
『は?』
『血筋を守るため。そして儀式の為だ。』
『それだけ?』
『他にもあるぞ。獣人には番が必ずいるんだ。番とでなくては子は為せん。』
『番?』
『ああ。一生見つけられねえ者もいるがな。』
『レオは?レオは見つけたの?』
『おまえ、俺にそれを聞くのか?』
美虹は興味津々だった。
『・・・ああ。いる。』
・・・
『そ・・・そうなんだ?』
美虹は何故か少し面白くない気分になった。
『ああ。』
『その人と一緒になれるの?』
『わからん。だが、極力努力はするぞ。』
美虹は何だかもやもやしてきた。
『ふうん・・・』
食べ終わって立ち上がったところにレッグが来た。
「おい。ミクティ。俺と一緒に来い。」
「え?」
「俺も一緒じゃだめか?」
すばやくレオが立ち上がって美虹の前に立つ。
「おまえ、過保護だな。」
「よく言われる。」
「しかたねえ。一緒に来ることを許す。急げ。」




