47 それは無理
朝ご飯の後、レオと美虹は別れた。
「昼にまた会おう。」
「うん。」
レオが何人かの兵士達と連れだって行ってしまうと、美虹は言われた部屋にそっと入っていった。
昨日、呼ばれるまで、控え室で待機しているようにと指示されていたのだが、待っても待っても誰も来ないのだ。
・・・・・
だんだん、どうして良いのか分からなくなり、美虹は途方に暮れてしまった。目から何だがにじんできているのが分かり、少し慌てたところに・・・
ばたん・・・扉が開き、レッグが入って来た。
「よう。」
レッグは美虹を見て顔をしかめた。
「なんだ?泣いてるのか?」
美虹は慌てた。こころぼそくなって・・。なんて言えない。
「ちょっと欠伸が出たんだ。」
さりげなく目尻を拭いて、
「おはようございます。」
と挨拶する。ほう?と言う顔をしたレッグが
「おう・・おはよう。」
と答えた。
「よし。行くぞ。」
広い廊下を行く。角をいくつか曲がり、階段を上り、また歩く・・・一人で戻れるかな・・・美虹は心配になった。
着いたのは立派な扉の前だ。パンテェールが待っていた。
「来たな。」
「おう。連れてきたぜ。」
後ろのラビーが呆れた顔をしている。
「まあ、入ろう。」
・・・・
あれ?ここ?ライとリヒテが側にいるような気がする?あれ?
「ここは王の間だ。」
どうだ?と言う顔で美虹を見る。美虹はせわしなく辺りを見回し、困った顔をしている。思い切り挙動不審になっているのにも気付いていない。
『やっぱり。あれ?もしかしたらライさんとリヒテがどこかから覗いてるのかな?』
「どこを見ている?おまえにやって貰いたいのはここの壁だ。ここをおまえの魔法で開いて欲しいのだ。」
示す場所はこの前ライ達が消えた場所だ。そんなことは知らないけれど、美虹には扉がはっきり見えている。
『いやいや・・・開いたらライさんとリヒテが見つかっちゃうよ。』
「工事の人を頼めばいい話では?」
「いや。無理だった。ハンマーも何もこの壁を壊せなかったんだ。」
『美虹ちゃん。ここ・・・龍の力がかなり働いてるよ。』
『王の力ではなくて?』
『うん。龍の力』
・・・・
「こいつの何とかスラッシュとか言う魔法なら切り裂けるぜ。」
『美虹ちゃん。もしやるなら、出力をかなりおさえないとだよ。ここ、王家の者と龍の加護のある者には無力になってる。』
『それ・・・龍の加護のある者って私のこと?』
『当たり前でしょ。僕と一緒なんだから。』
・・・・
まずい。まずいことになってきた。
「早くしてみろ。」
「こ・・壊れたら困ります。」
「むしろ壊して欲しいんんだぜ。」
「ええ~?なんでですか?」
・・・
「亡霊を見たからだ。」
『え?亡霊?そんなの苦手だよ!!!』
・・・・黙っている美虹。美虹を見ておるパンテェール・・・・
『考えろ・・・考えるんだ!!私!!」
「どうした?」
「ぼ・・・僕・・・幽霊は苦手です。」
「震えてるじゃねえか?」
「本当に幽霊を見たんですか?」
「そうだな・・・見た・・・俺たちではないが・・・・・・甘い夢のようなものだ・・・」
「さあ。」
・・・・・
『唯一さん!!!唯一さん!!!』
美虹は心の中で悲鳴を上げる。リュウが、落ち着いてと言っているが、軽いパニックになっている美虹には聞こえていない。
『美虹ちゃん』
『唯一さん!!』
『美虹ちゃん!!よく考えてごらん。やっちゃだめだよ。』
『どうやったらやめられるの?』
『落ち着いて。』
・・・・・
・・・・・リュウの言葉が徐々に美虹に染みこんでくる・・・
『あ・・私?・・・』
『大丈夫?』
『あ・・・ありがとう。ゴメン・・・。』
・・・・・
「どうした?さっきからずっと震えてるじゃねえか?」
「やってくれるな?」
・・・
美虹は意を決した。やれない。やってはいけない・・・さあ。理由をつけなくては・・・
ようやく顔を上げた美虹は、
「あの・・・この部屋には凄く強い魔法がかかっています。」
と言った。間髪入れず、レッグが
「あ?」
と聞き返した。
「だ・・・だから震えちゃうんです。部屋を出ても良いですか?」
美虹は震える声で言って部屋から退出しようとすると、レッグとパンテェールは顔を見合わせて美虹を止めた。
「まちなさい。」
パンテェールの車椅子をラビーが押して美虹に近づいて来た。レッグも。
「俺たちには魔力はねえから分からんが。前にやらせた魔法使いもびびっていたな。」
近くに来てアームが言った。美虹はしめたと思いながらも、まだ怖そうに、
「は・・・はい。その方の尻込みも分かります。僕の魔法はおそらくことごとく弾かれ、自分に返ると思います。」
と言った。
・・・・・
「確かにその魔法使いもそう言っていた。」
パンテェールが頷く・・・
「そ・・・そうなるといけないので。あ・・・と・・・その方と相談したいのですが。」
その言葉に3人が黙り込み・・・レッグは頭をポリポリかいた・・・
「あ・・そいつはもういねえ。」
ようやくレッグが口を開いて答えたが、もういないという。
「え?やめちゃったんですか?」
聞き返すと、とんでもないことを言い始めた。
「いや。まさしくおまえの言ったとおりになって・・・」
「なって?」
「今は常世の国だ。」
・・・・・
・・・・・
「ぼ、ぼくいやですよ!!!」
「だろうな。」
「やはりおまえでも無理か?」
「ええ。無理です。」
「どの程度の奴なら大丈夫なんだ?」
「龍の加護を持つ者か、王家の人なら。」
・・・・・・
美虹の言葉に3人は黙り込んだ。




