40 旅館
「あんまり王城には近づきたくねえな。」
「ああ。ああ言われたけど、どこにも泊まったことがねえからなあ。」
普段は朝来て用事を済ませさっさと帰るらしい。でも今回は王城に忍び込むって事なので、居場所が必要なんだ。
「すぐ前なら行きやすくていいんじゃないの?」
ぼそぼそと小声で話しながら歩く私達。
私はまた抱っこで移動している。レオの耳元に口を近づけてこそこそ話す声は回りには聞こえないだろう。でも、お母さんに甘えて抱っこされてる10才の男の子って図はねえ・・・まあ。私少し小さいみたいだから・・・でも。お父さんの立場ないよね。
時々騎士服のような物を着ている人達が通る。
「あれってアルテミアの騎士団?」
耳元で小さい声で・・・
「わからん。だがこの前見たアルテミナの奴等の来ていた者と違う気がする。それともここに在住している奴等の制服か。」
「この前見たアルテミナの軍隊ってリュウが威圧した人達だよね?」
「そう言うことだな。」
宿屋は高級そうだった。
「4人。」
「使用人の方は別の宿屋にお泊まりですか?」
「いや。身の回りの世話をさせるので。」
「では、続き部屋で。使用人の方の布団はどうしますか?」
え?布団ないと困るでしょ?
「付けてください。」
驚いた。使用人には布団は標準装備じゃない?
「お食事はどうなさいますか?」
「使用人の分もここで食べられますか?」
「はい。使用人の方はこちらの使用人と同様に、従業員用の食堂で。皆様はお部屋で召し上がることになります。」
私達は顔を見合わせた。
「使用人も一緒に食べたいのですが。息子がなついておりましてね。彼がいないと食べないんですよ。」
「・・・それでは使用人の分も部屋に運びましょうか?」
「お願いします。使用人の分も、我々と同じ物でいいですので。」
部屋に入ってため息をついた。
「なんか使用人って人扱いされてないの?」
私の問いに、
「大店の商人なんてそんなもんだと思うぜ。」
リヒテが笑う。
「いやあ。使用人に篤い商人様だと思っただろうぜ。」
食事が運ばれてきた。運んでくれた人の後ろから宿屋の女将さんがやってきた。
「ようこそ。シュバルツァーへ。」
宿屋へって意味だよね? 女将さん。何かちょっと・・・?
ライさんが
「お世話になりますよ。」
と答えた。
「ごゆっくり。」
何か腹の探り合いしてるみたいに見える。
「なにやら白龍が出たという話が入ってきておりますの。」
「そうなんですか?」
「ええ。それで、パンテェール隊長が戻ってきたんですのよ」。
「パンテェール隊長とは?どなたですかな?」
ライさんがさりげなさそうに聞く。
女将さんはこちらをやっぱり探るように見ている。
「王国の騎士団にかつて存在していた方だと伺っておりますわ。」
女将さんは配膳が終わった仲居さん達を部屋から出るように指示を出したみたい。
とっくりみたいな物を手に持って、お酒?をライにすすめる。そして。
「アルテミナの正規軍が半分、執政官と一緒に国に帰ったようですよ。」
と言ってライをじっと見ている。
「それはそれは。何か国元であったんでしょうか?」
「さあ?それで今は王城にパンテェール隊長と部下の方々が入っていますの。」
「アルテミアの正規軍は隣の建物ですか?」
「ええ。ほとんど重傷の人ばかり残っていると言うことですわ。」
・・・重傷・・・戦いばっかりじゃなく、私っていうか、リュウっていうかのせいでもあるよね?
「どちらからいらっしゃったんですか?」
「いやあ。中央の町ですよ。」
しばらく話をした後、女将さんは部屋から出て行った。
「しっ」
もしかしたら盗聴?
レオは黄色みを帯びた分厚い紙になにやら書いて見せた。あ・・・私、ここで使われている字が読めない。
他の2人は黙って頷いた。私を見て?と言う顔をしたので、
「今度字を教えて。」
と言ったら皆納得したみたい。
「今まで?」
「することも考えてなかった。」
レオがため息をついた。
「気が付かなかった・・・俺・・私の落ち度ですわ。」
「飯を食ったら風呂だな。」
小さい声でリヒテが言う・・お風呂。なんて甘美な響き。
風呂は・・・レオと一緒だった・・・レオは赤くなったり青くなったり大変だった。他に人が入っていなかったことだけがレオにとっては幸いだったみたい。私はしっかり大きめの手ぬぐいを巻いた。レオったら下だけ蒔いてたから、上もまかないと女の人としてはどうかと思うって教えてあげた。ちゃんと裸でも女の人に見えるように魔法をかけてたみたいだから。
私?中身まで魔法はかかってないから女の子のまま・・・あ。本当はお年頃の女の子だったよ私。ここは悲鳴を上げるとこだった・・・・?!!
結界をしっかり張った。見聞き出来ない。そう言われて少しほっとする。
行くんだよね。ワクワクしている私に
「おまえは早く寝ろ。」
レオがそう言うけど。
「私も一緒じゃないと。白龍を見せたいなら。」
「見せない。」
「威圧は?」
「しない。」
どうしても私をおいていきたいみたい。
「少しだから良い子で待っていなさい。」
ライさん。15の女の子にそれは痛い。
結局私は蚊帳の外に置かれたみたいだった。3人はひょいと窓から飛びだして行ってしまった。




