4 夜は
・・・・・結構歩いてる。疲れて来ちゃったよ。男火変わらず私に乗ってるし。
『ねえ。疲れちゃったよ。』
『とにかくもうちょっと休もうよ。』
そう言うんだけどね。長い夢。・・・は。もしやここで眠ったら起きるって事かな。
『まあいいだろう。』
少しほっとする。
座ったとたん・・・
・・・ぐううううう・・・
「なんだ?」
・・
「・・・お腹空いて・・。」
男はちって舌打ちしたみたい。あんなベーコンだけじゃ喉も渇くしお腹も空いたままなんだからね。
「さっきのはおやつって事か・・ちょうど昼飯時くらいだな。俺は獲物を獲ってくる・・・おまえここで待ってられるか?」
「ええ~一緒に行っちゃダメ?」
「おまえの図体でどたどた行ったら獲れる獲物も逃げ出すさ。」
ちょっと失礼な・・
「すぐ戻る。」
行っちゃったよ。
・・・人間じゃないから連れて行かないって行ったよね。今もそう言うことなんだよね?
どうせ夢なんだからすぐ人間になれるんじゃない?
・・・
・・どうやったらなれるのさ?
・・・・試したよ。
○○ライダー・・・
・・・できない・・・
ウルトラ○○・・・
・・・無理
プリ・・・
変身の台詞もポーズも決まったと思うのになあ。口から出てるのは、きゅいきゅい・・・なんだよな・・・
決めポーズをとってたら、
『おい。何してる?』
大きな豚みたいなのを担いでマントの男が戻ってきた。
『えっと・・・』
私の返事は重要じゃなかったみたい。
すぱ~~んって・・・うわ・・・首を落とした・・・
木に逆さに掛けてる・・・
それから私の方を向いて
『木をここに集めてこい。』
って言うから近くの木をめりめり・・・
『枯れたのにしろ。』
『え?なんで?』
『生木は燃えづらい。いや・・・乾かせば良いか・・』
・・・なにやら唱えると・・・あら。倒れてもなお青々していた木が枯れていく・・・ すご・・・
『このくらいで良いか・・・』
それからまた何か唱えたら木が細かくなっていった。便利だね。
土を掘って木を入れその上に何か白いモノを置いた男はまた何か唱えた・・・ぼっ・・
『火だ・・・』
きゅ・・思わずつぶやいちゃった。
『ああ。俺は紅の魔法使いだからな。』
『あか?』
『おまえは白だろう?』
『どう言う意味?』
『氷だな。』
そう言いながらも何やら手は動いているし、時々詠唱も聞こえてる・・・
あれ?
気が付いたら木の棒に刺さった肉の塊がたき火の回りにたくさん刺してあった。
いつの間に?
焼けた肉を自分が1つ食べる間に私に3つくれる。
意外と優しいみたい。あちち・・・
あ。それって
『塩?』
『ああ。』
『私のにもかけてよ。』
『ああ?』
『美味しい肉なんだけど味気ないんだもん・・』
『こんなに食うんじゃ・・・』
『なあに?』
『いや。』
マントの影で男がまたため息をついたように見えた。
・・・
『ねえ』
そういえば。私またこの男の名前も知らないや・・お腹も少し落ち着いたので聞いてみることにした。
『あんたの名前は?』
『あ?言ってなかったか?』
『うん。・・・で。私が人なら連れてってくれるんだよね。』
『あ?そうだな。そのままじゃ村にも町にも行けねえな。
見つかったら捕まえられちまうだろうしな。おまけにその大食いだ。食う物の調達にもちょっとな。』
え。つかまっちゃうの?
『私はそんなに食べないよ。』
「そうかな?』
・・・確かに今は3倍は食べたけどさ・・・
『・・ねえ。人型になるにはどうしたら良いの?』
『なれるのか?』
『なれると思うんだけど・・・多分。』
『もしおまえが龍人なら、元に戻るように想像するだけで戻れるはずだぞ。』
ええ?さっき変身しようとしたけど出来なかったのに・・・
・・あ。変身だからか。元に戻るって発想じゃなかったね・・・私は頷いた。
大丈夫。ちょっと想像してみよっか。夢なら何でもござれ。もともと私は人間♡
「きゃ~~~~~」
「わ~~~~」
上は私。下はマント男。
慌ててしゃがみ込む私
何で・・・・なんではだか?
「っっ」
上から何かがパサリとかぶせられたよ。
「着とけ」
「見た?見たの?」
「ばっ馬鹿野郎!!むしろ見たくねえ!! 」
ようやくマントを着て立ち上がったら
「あら。あんた背が高かったんだね。」
そう。私の前にいる男は私より頭一つ分以上は高かった。私が150㎝位だとしたら190㎝以上ありそうだね。
「おまえは・・・女だったんだな、」
・・・・・あれ?
「あんた。耳が・・・」
男はしまったというように頭を押さえた。その時ちらりと見えた黒い長いもの・・・
「まさか・・・しっぽ?」
ちっ
舌打ちした?舌打ちしたよ。この男。
「俺は獣人だ。龍人のおまえにだから言うが。他の奴等には言うなよ。」
でも?
「マントで普段は隠している。街に行ったら幻影の魔法を使っている。」
ふうん。
「黒猫なの?」
「ばっ」
「ば?」
「俺は豹だ。黒豹」
豹?豹だって猫の仲間だと思うんだけど。
「でも。マント借りちゃったら隠せないね?」
男はがさがさと腰の辺りを探っていて・・・
「ほら。コレを着てそいつを返せよ。」
手渡されたのは服?
上着みたいなのとズボンかな?と思いつつよくよくズボンを見たら前も後ろも切れ目って言うか・・・空いている・・・
・・・しっぽ?と・・・(//////)
マントで隠しながらどうにかこうにか着込む。あれ?シッポどこに消えたのかな・・で・・前と後ろの空きはどちらも必要なかった(/////)
「大きいよ。うまく止められないんだけど」
私の声に、
「着たのか?どれ。見せてみろ。・・・しかたねえな・・・」
紐みたいなので調節してくれた。
「ありがと。でも・・靴がないんだけど。」
・・・・・
靴はどうにもならないみたいで、足を見た男がため息をついたよ。
「やわらけえ足・・・こんなじゃ裸足で移動は無理か・・」
そのまま歩くことが出来ないと判断された私は今、マント着た豹の獣人さんに抱っこされて移動中。
どうも私は十才くらいに見えてるらしいよ。
「俺のことはレオと呼べ。」
ほんとにこの男偉そうだよねえ・・でもやっと名前が分かったよ。普通すぐ名乗り合うよねえ・・
「私はミコでいいよ。」
だんだん暗くなる。
「ねえ。村とか町に着く前に暗くならない?」
「そうだな。途中で野宿だな。」
こんな山の中で野宿なんて嫌だよ。でも、一人で野宿も嫌。この人のことはよく分からないけど一人じゃなくてよかったのかな。さっきも裸見て喜んだわけじゃなくて・・すぐ隠せって怒ってたしね。信用してもいいのかな?ってか・・・覚めない夢・・・
・・・ほんとは私気が付き始めてる。もしかしたら夢なんかじゃないのかもって・・・・でも・・夢じゃなかったら泣いちゃうよ。
暗くなる前にレオは野宿する場所を決めたみたい。
「水を汲んでくる。おまえしたくしとけ。」
「え?なんのしたく?」
「あっちの茂みが良さそうだぞ。」
・・・・・用を足しとけって事か・・・親切なのか・・・??
裸足の足に地面はちょっと辛い。龍の形だと靴欲しいとか考えなくてもよかったのにな。
用を足して戻ってきたのと、レオが水筒みたいなのに水を汲んで戻ってきたのが同じくらいだったよ。
「あの。手を洗いたいんだけど。」
眉をひそめたレオは
「しかたねえ。どうせもう一度行くんだ。」
って私を抱えて水場まで連れて行ってくれた。
「ありがとう。」
冷たい水で手を洗って顔も洗う。
「ほれ。」
手ぬぐいのような物を渡され、手や顔を拭く。
がさがさしていたと思ったら、腰の辺りをさぐって鍋を出したのには驚いた。
「どっからでてきたの?」
「ああ。ここに袋があるだろ。そこから出したんだ。」
「そんな小さい袋に入ってたの?」
「ああ。この袋は結構入るんだ。」
結構なんて・・・
鍋にも水を汲んでさっきの所に戻る。
私は回りにある木の枝を集めるお手伝いだ。
手早く作った竈みたいな所に集めた木を入れ、なにやらつぶやいているのを見てたら、お昼の時みたいにぼっと炎が上がった。
鍋をかけると、たちまち鍋がぐらぐらいいだす・・・中に何かをひとつかみ入れて・・さっきの残りの肉を投入し、匙でぐるぐるかき混ぜる・・・そこにさらに何種類か投入し最後にぱらぱらと・・塩かな?振って入れた。
しばらくして出してきた木の器に出来たものをよそって私に手渡してきた。
「ほら。食え。」
「あ・・・ありがとう・・」
「いや。」
レオは自分も器によそって食べ始めた。
・・
・・・まずい・・・でもそんなことは言えない・・・
無言で食べる・・・ひたすら・・・
「これ・・・なんていう食べ物?」
「雑炊だ」
・・・
私の知ってる雑炊は美味しいんだけどなあ・・・でも・・・何者とも知れない私を抱っこで運んでくれた上に,温かい夕飯ご馳走してくれる優しさが嬉しい。
「泣くな。」
あれ?私泣いてるのか・・・
「親とはぐれたのがいつかわからんが。とにかく探すのを手伝ってやるから安心しろ。」
ありがとう。でもこの世界には私の親はいないんだよ・・・多分
夜は更けていく・・・
「もう寝ろ。」
「レオは?」
「俺も寝る。おまえはマントにくるまれ。」
「でも。」
「子どもは遠慮するな。」
・・・
「大丈夫だ。ちゃんと結界を張っているから魔物は来ない」
え?魔物がいるの?
でも夜は一人じゃないって嬉しいね。・・・目が覚める・・かな?