39 初めての城下町
「今日は町に行くんでしょ?」
少しワクワクして聞く。
「そうだ。」
「どんなところなのかなあ。」
大きな町なんだよね?
「シュヴァルツァーの中心地だ。王城がある。」
リヒテが竈を崩しながら教えてくれる。王城?お城?
「城はまだあるのか・・・」
レオのつぶやきに
「ああ。あのままだ。」
とリヒテが答える。
「行こうか。」
ライさんが言う。
「ライさんって王様だったんでしょう?」
「そうだよ。」
「あんまり王様らしいしゃべり方じゃないよね。」
ずっと気になってたんだよね。王様ってちこうよれとか、くるしゅうないって言うんじゃないのかな?ん?あれ?あれを言うのは悪代官とか、殿様か?
「そうだね。確かに僕は威圧的にはしゃべれないから。」
「威圧的?」
私達は山を下り始めた。当然のように私はまた抱っこだ。
「ちょいと速度を上げるから、しゃべると舌を噛むぞ。」
「・・わ・・わかったわよ。お母さん。」
「「「・・・・・」」」
・・・・
「お母さん?」
「お母さんなのか?」
「お母さんだったのか。レオ。」
「肉だ。肉をくれ。」
「俺にもくれ。」
「早く肉のある所へ」
「行こう」
大きい。
城ってシン○レラ城みたいなのを想像していたんだけど・・・四角い灰色の建物だった。窓が小さく城塞?要塞?そんな感じ?
・・・
「ずいぶん無機質なところに住んでいたんだねえ。潤いが感じられないや。」
「どういう意味だ?」
レオが聞くから、正直に答える。
「う~~~ん・・・素敵じゃないってことかな。」
「・・そんなに酷いかい?」
ライさんが私を見て聞く。
「あ。ごめんなさい。お家を悪く言って。」
「おうち・・・」
あれ?違う?
「確かに家だったね。」
ライさんが言うと、レオは
「俺は3才くらいしか記憶がねえからわからん。」
と言っていた。レオはそのくらいの時に師匠の所に預けられたって言ってたっけね。
私達は町から少し離れた小高い丘の上から下を見下ろしている。
城は町の真ん中にあり、町並みが回りをくるりと巻くように並んでいる。その家々と比べても格段に大きい。城の周りは掘で囲まれている。掘の前には大きな城門が構えられており、小さな跳ね橋が城門から掘を渡っている。
「あれ?向こうにも建物があるよ。」
城の向こうに綺麗な感じの建物が見える。
「あれはアルテミアの軍の建物だ。」
リヒテが教えてくれた。
「軍?騎士団じゃなかったの?」
「騎士団。まあそうだな。だが騎士団が守るべきアルテミアの王が全く表に出てこないからな。王は傀儡だという噂もある。」
「くぐつってなに?」
「操り人形さ。」
「王様が?」
「なんでそう思うんだ?」
レオが聞くと、リヒテが
「俺らこの前王城へ忍び込んだんだ。そのとき聞いた話だぜ。」
と言う。
「王城にいるのは誰だ?」
レオが言うので、つい、
「執政官という話じゃなかった?」
って言ったら、リヒテが
「いや。奴も傀儡だな。第2王子が執政官として統治していると言うことになっているんだが。実際動かしているのは隣の建物の将軍だ。」
って。なんか複雑そう。
「こちら側からは見えないが城の後方にはちょっとした森があるんだ。」
ライさんが言う。
「森?」
「ああ。そうだったか・・・」
レオの記憶は曖昧みたい。
「そっちに向いてる部屋は窓も大きく、美虹は綺麗というかも知れないよ。」
見て見たい。
とりあえず、レオはマントをやめた。
「マントを着ていると魔法使いだと思われるか、俺だとばれてしまう可能性がある。」
「私はどうしたら良いの?」
そこに先に町に様子をうかがいに行っていたリヒテが帰ってきた。
「頼まれた物も買ってきたぞ。」
レオにそう言って、何故か私に1つ寄越してきた。
「何で私に?」
「良いから。見て見ろ。」
渡された物を広げたら
「服?」
「おまえはそれに着替えろ。」
はいはい。
「こっち見ないでよ。」
ややあって着替え終わった私を見て
「男のコだな。」
「髪も短いからちょうど良いな。」
・・・男装かあ・・
まさか人数が増えているとは思わないだろうし、
ひょいと見たら綺麗な女の人がいる。
・・・・・
・・・・・だれ?・・・・・
「レ・・・レオ?」
「・・・・」
リヒテさんに渡されたもう一つの包みはレオが受け取って着替えたらしい。
「僕がお父さんだよ。レオはお母さん。」
「リヒテは?」
「召使いだ。」
なるほど。
「商人の一家って訳だ。」
リヒテはここには時々来ていて、どこかの家の従者かなにかだと思われているらしい・・ライさんと来ているときはライさんをご主人様と言っていたらしいのでそのままで大丈夫なようだ。そのライさんは・・ひげを付けていた。
「それがいつもの標準装備なの?」
「標準?まあ。いつもこれで顔を隠しているのは確かだな。。」
いよいよ町に降りる。何が待っているんだろう。
「ねえ、レオ「じゃない。お母様って呼ばなくちゃだめだよ。」お母さま。」
途中でライさんの訂正が入り慌てて言い直す。
「あっちのお店は何?」
指さす方を向いたレオは私を道に下ろした。さすがに目くらましの魔法で少しいつもより小さく見えるのに、10才の子を抱っこした女性は目立つって思ったらしい。もっと早く気が付いて欲しいよね。
「ああ。あれは、布地を売っている店だな。」
「・・・言葉遣いに気をつけて・・・」
ライさんがレオにささやく。レオの嫌そうな顔。
「布かあ。洋服なんかの布だよね?」
「布で作った小物なんかも売っていますよ」
リヒテが馬鹿丁寧に言う。
「見にいきますか?」
「いや。いいよ。そっちの目的の方を果たしてよ。」
「・・・夜にしか用事はねえな。」
夜に出かける気満々なんだね?
「先に飯を食おうぜ「言葉!」・・食べましょうか。」
連れて行って貰ったのはちょっと小汚い感じの食堂だった。
「ここに商人一家が入るのってどうなんだろう?」
「こういうところだと、リヒテ一人ならおかしくはねえな。」
ぼそぼそと私とレオが話をしていたら聞こえたようだ。
「どうせ俺にはこういう所が似合うぜ・・・」
とりあえず4人で入ったら
「おや。ライテ君。今日はご主人様を案内してきたのかい?」
「俺も良くわからねえし、ここは美味いから奥様にもお勧めかと思ってよ。」
おばちゃんと話してる。なるほど。そういうことなら我々が来てもおかしくはない。
レオの服を引っ張ってこっちに気を引く。かがんでくれたから
「ライテ君って?」
小声で聞いたら
「多分ここで使っている偽名だろ。」
なるほど・・・。
脂ぎったようなその食堂は、でも、清潔に保たれてるみたい。
少し甘酸っぱいたれのかかったお肉とか。色とりどりの野菜とか。ポタージュかな。とろりとしたスープはどれも美味しい。
「ご主人の一家を町に連れてきたのは初めてなんだ。どっか良い宿屋をしらねえ?」
リヒテがおばちゃんに言っている。
「ここの2階も宿屋だけどねえ。ちょいと荒くれた者も泊まるから奥様みたいな方にはお勧め出来ないよ。でも。城門近くのシュバルツァーっていう宿屋は1級だよ。」
「シュバルツァー?王国の名前ではありませんか?」
ライさんがおっとりとした口調で聞く。
「そうなんですよ。王国の名前をわざわざ名乗っているって最初はかなりアルテミナの軍部から横やりが入ったみたいなんですけどね。高級感を出すためだって押し切ったらしいですよ。」
「ほう?」
レオとライさんは顔を見合わせた・・・
「とりあえず。泊まれるか、行ってみます。」
会計を素早く済ませ、通りに出た私達は、
「怪しい。罠っぽい。」
と言う私と、
「でも。泊まる価値はあるのでは?」
と言うライさんの言葉に、どちらも一理あると考え込むレオとリヒテ・・・
「おや。まだいたのかい?どうしたんだい?」
店から出てきた女将さんが声をかけてきた。
・・・
「いえ。お金が足りるか迷っていたんですの。ねえ。あなた。考えていても仕方がないわ。行きましょう。」
レオが答えた。
・・・行きますか・・・




