34 話は進まない
「国がなくなる?・・・ああ。指導者がいないから?」
私が言うと、
「それもある。」
って。他にもあるの?
「もうすぐ100年祭がやってくる。だからか・・・」
ライさんがつぶやく。
「100年祭って何?」
お祭りかな?にょろにょろ達も同じ事を考えたみたい。
「祭りか?」
「祭りだよな。」
「楽しそうだな。」
「肉だ。肉をくれ。」
「肉を売ってるのか?」
「肉々と五月蠅いな。」
「話を聞けよ。」
最後の子、その意見に私も賛成だ。
「どういう意味?」
私の問いにライさんは
「王家の人間にしか出来ないことがある。それをしないと国が滅びると言われている。」
って・・・私はレオを見た。
「俺は知らんぞ。」
一言ですか?
「レオには話してないから。」
ライさんが答える。
「だから!!ちゃんと話せって俺言ってたんだ!!」
リヒテがわめくと、レオが冷たく言い放った。
「おまえは俺を攻撃してばかりじゃねえか。」
「そ・・それは。」
「それは?」
「おまえが儀式に耐えられるようにだな。」
レオは剣呑な顔でリヒテを見た。
「どういう意味だ?」
リヒテは救いを求めるようにライさんを見た。
「レオ。100年祭はそれこそ100年に1回だ。そして100年祭はシュヴァルツァー・・・パンター王家に伝わる大事な儀式なんだ。」
ライさんが言い聞かせるように言う。
「パンターってなに?」
思わず聞いちゃった私を無視して話は進む・・・
「どんな儀式なんだ?」
レオは椅子に深く座り直した。私が聞いていても良いのかな?
「その話をする前に。
この山の向こうにもう一つ洞窟があることは分かっているな?」
「ああ。師匠が入ってはいけないと行っていた洞窟だろう?」
・・・・・
「先日あそこに傭兵の集団が侵入した。」
リヒテが怒ったように叫んだ。この人、叫んでばっかりだよね。
あれ?傭兵団?まさか?
「パンテェール達のだな。」
レオの答えにライさんが
「パンテェール・・・やつ、生きていたのか。」
って。どういうこと?
「彼は騎士団の副団長だったんだ。」
・・・・
「話がすすまねえな?」
「俺たちも美虹ちゃんも」
「無視されてるな。」
「肉だ。肉をくれ。」
「俺も肉が良い」
「話より肉だ。」
「いや。我慢して聞いてようぜ。」
・・・ぼそぼそ・・・・
「パンテェールさんは今、傭兵の皆さんと一緒にこっちに向かってるよ。馬車に怪我したバドバドと一緒に乗ってるけど。」
私が言ったら、
リヒテが
「バドバド・・・怪我をしてるって?じゃあ・・そいつがワイバーンと戦っていたんだ。」
って教えてくれた。
「バドバドが?」
「正確にはバドバドを操ってる奴等がだろ。」
レオが口を挟む。リヒテは少し怒ったように
「ワイバーンがあの洞窟から出てきたんだ。ライにも教えただろ。」
と叫んだ。
「あの洞窟。入ってはいけないという洞窟からワイバーンが?なぜだ?」
リヒテっていつも怒ってるの?
レオは
「俺に隠してること皆言えよ。」
って。レオまで怒ってるみたい。
「僕がこの国の王弟で、しばらく王として立っていたことは知っているね?」
「ああ。俺が小さかったからだろう?」
「そう。建前はね。」
建前は?って?
・・・王は后を溺愛していた・・・ひとり息子の命と引き替えと言っても良いくらいにこの世を去った后。息子を見れば后のことが思い出されて苦しい。
「凄い愛情だねえ。羨ましいけど重たいねえ。」
「な・・・愛情を重たいと?」
レオが急に私の顔をのぞき込んだ。
「自分がいなくなっちゃったら、愛した人には新しい相手を見つけにいって欲しいなあ。」
「それは無理だ。」
リヒテが答える。
「我々獣人にとってはつがい・・・夫婦は絶対なんだ。片方がいなくなればやがては狂ってしまう。」
「え?そんなことってあるの?」
「まさしく王は狂い始めていた。息子を妻と見間違えるほどに。」
「そ・・・」
「だから僕はレオを師匠に預けたんだ。」
「宰相とか騎士団とかは関係ないって事?」
「それも少しは影響したかな。」
レオを伺うと、
「俺は小さかったからな。良くわからん。」
って。
そして前王は死ぬ。ライは中継ぎの王として善政をしこうと努力する。
の結果、宰相はライをこのまま王としていった方が良いのではないかと考える。
レオに密かに刺客が放たれる。レオは師匠と共に山に逃れる・・・
ライを団長が狙う。宰相がかばう・・・宰相は死ぬ。リヒテを残して。団長は宰相から受けた傷で死ぬ・・・誰も残らない・・・アルテミアの刺客にライさんが狙われる。ライさんは逃れる・・・その途中で片足に怪我を負う・・・
・・・・
「アルテミアに操られていたのかも知れない。」
ライの言葉にリヒテがわめく。
「アルテミアがなんだって俺の親父を操るんだ?」
「彼はとても出来る人だったから。」
「じゃあ今城にいるのは?」
私が気になっていることを聞く。
「アルテミアの執政官がいる。やつは人間だ。」
「アルテミアって人間の国なの?」
「そうだ。」
「アルテミアはなにがしたいの?」
「さあ・・・ただ分かるのは、我々獣人を支配下に置いたと言うことだけ。」
「いや。若い者を本国に連れて行って奴隷にしているって話を聞いたぞ。」
リヒテ。怒鳴らなくても聞こえるよ。奴隷・・・それは・・
「奴隷にするために占領したのかな?」
「可能性はある。」
「なんで奴隷が必要なの?」
「それには地理の知識が必要だね。」
ライさんは戸棚から黄色みを帯びた紙を出してきた。紙?ちょっと違うみたい。
「これは羊皮紙と言う。ここに世界の地図が書かれているんだ。」
地図には大きな大陸と大小様々な島が描かれている。
「あまり正確とは言えないが、師匠が空から見て書いたそうだ。」
空からって?どうやって?疑問は後回しに・・
ここがアルテミア。
示された土地は大陸の1/3ほどをしめる・・・
「北だね。」
「そう。彼の地はここと比べものにならないくらい長く厳しい冬がある。」
「中央の街は雨季と乾季だけだったね。」
「シュヴァルツァーの国は、四季があるんだ。実りも豊かで人々は幸せに暮らしていた。少なくとも15年ほど前までは。」
ライは淡々と語る。レオもリヒテも口を挟まない。分かってることなんだろう。
「だが・・アルテミアは極寒の地。」
レオがぽつりと言う。
「豊かな国土が欲しくなったのかもしれねえな。」
「アルテミアの支配者ってどんな人なの?」
「分かりません。ただ、人間であるとしか。」
「獣人を奴隷として畑でも作らせるの?」
「いや。隷属の首輪をはめられて兵として使われる。」
「パンテェールさん達も首輪をはめられてるって事?」
「いや。逃げ出して対抗勢力として傭兵団を作っていたらしい。」
・・・
レオは夜、そんな話もパンテェールさんから聞いていたんだそうだ。
「それもこの前、騎士団が向かっていったからどうなったかな。」
ため息と共に、
「それで。100年祭のことを教えろ。」
レオが言った。




