32
・・・レオ・・・
狭い洞窟の入り口を抜け俺は下に降りていく。俺たちが育った家の脇に続く洞窟だ。この先に家がある。
洞窟を抜ける前に誰かの影を見た。あいつだな。
「おい。俺だ。」
影に声をかける。
「なんだ。レオ?4年ぶりだな?」
と言う口の下からいきなりファイヤーボールが飛んできた。ちっ
俺も素早く結界を展開しながら打ち消しの魔法を放つ。
と同時に雷の音だ。
「よせ。洞窟が崩れる。」
言った声なんて聞いちゃいねえ。こいつは俺を見るといつも攻撃を仕掛けてきやがる。育ての親が生きていたときからそうだ。おちおち寝てもいられねえくらいだったぜ。
って言う間に雷が俺に襲いかかってきた・・素早く転がる。腹が立ってきたぜ。俺もついつい火弾をぶっぱなしちまった。
やり合い始めると久しぶりなのでついつい熱が入っちまう。
・・・・・が・・・
今。俺は後悔と共に洞窟の出口に立っている。洞窟は見事に崩れ、入ることが出来なくなっていた。まずい。あいつを一人にしてしまった。だいぶ長い時間戦っていたよで、もう真夜中を過ぎているだろう。山越えをするか?いや。この山は険しい・・
俺の前には縛られて悔しそうな奴がいる。熊人のリヒテ。何でこいつはいつも俺に突っかかってくるのだ?
こいつを引きずって家に向かう。家には俺と同じ黒豹のあいつがいるはずだ。三人なら土砂をどかすのにそんなに時間はかかるまい。全くリヒテの奴。何も考えてねえな・・・
・・・・美紅・・
「何か音がしたよねえ・・・」
「そうだね。」
私は浅い眠りの中で音を聞いたような気がした。
リュウが小さな龍のまま私の脇で頭を上げる・・・寂しい気持ちが分かって出てきてくれたんだね?
「うん。少し力が付いてきてるみたいなんだ。このまま離れていても大丈夫。」
そうなんだね。いくら溶け込んでいるって分かっていても、一人より二人の方が力強いから嬉しいな。あ。にょろにょろもいたっけ・・・
・・・
そしてまた二人して眠りの中・・・え?音?
・・・
「夢?」
私はがばっと頭を上げた。
「何か音がしたような気がするぜ。」
「そうだな。」
「音?」
「肉だ。肉をくれ。」
「俺にも寄越せ。」
「埃のような匂いもするぜ。」
「崩れたような気配だが・・・」
「え?」
私は辺りをきょろきょろ見回す。
リュウも頭をもたげて私を見た。
にょろにょろ達もざわついてる・・・
音は洞窟の中から聞こえたみたい。にょろにょろ達が口々に言う。
「音だ」
「聞こえたぞ。」
「埃の臭いだ」
「肉?」
「肉か?」
「違うだろう?」
「肉を俺にもくれ。」
レオ・・・何かあったんだろうか?
「行く?」
リュウに言うと、
「・・行った方が良いよね?」
って。同じ事考えてるね。大丈夫かな・・・
私とリュウは立ち上がって用意を始めた。用意って言っても持ち物なんてポーチとにょろにょろの入れ物だけ。
「どうせ洞窟は暗いから。明るくなるのを待つ必要はないよね。」
そう言うとリュウも賛成した。
「にょろにょろ達もいるしね。」
・・・にょろにょろ・・・力になるのかな・・・今回は袋の中でなく、一緒に進んで貰うね。
「任せろ。俺たち」
「にょろにょろ。」
「・・・7すたあ。」
「肉だ。肉をくれ。」
「俺にも肉をくれ。」
「このむこうに肉が?」
「あるのか?」
・・・どうかな・・・
私とミニリュウ、にょろにょろは真夜中過ぎの洞窟へ入っていった。
・・・
しばらく行くと当たり前だけど真っ暗になり、鼻をつままれても分からない・・
・・・皆は見えるのかな?
「明かりはないの?」
って言ったとたん
『見えるようにしてあげるよ。』
・・この声は
『唯一さん?』
『ああ。見えた方が良いだろう?』
・・親切だね・・
『ありがとう。』
『どういたしまして。』
『ねえ?』
・・もう気配がない。この状況の説明をして欲しかったのにな。
足下は滑る・・・
「この道レオも行ったんだよね?」
「匂いがするってにょろにょろ達が言ってるよ。」
足下でざわざわ言ってるから何か良く聞こえないんだよね。
「静かにした方が良さそうだよ。」
リュウが言うから私達の回りを防音の魔法で包む。
「これでどう?」
「少しは良いけど、気配は消せない?」
「それはやったことない・・・気配を消すってどうしたら良いのかな?」
イメージが湧かないな・・・あ・・・
試験前・・・お母さんったら、私が夜勉強してるか確認するため、こっそり上がってきていきなりドアを開ける事があったよね。開けられるまで気が付かないでいてびっくりすることが良くあった。あれが気配を消すって事かな?お母さんがいつ来てるのか全く分からなかったもん。あれって心臓に悪いんだよね。いきなり開けながら、こら・何してる~~~だもんねえ・・・お母さん何してるかなあ・・・私が病院にいるなら付き添ってるかもしれないね。ごめん・・心配掛けて・・・
イメージがつけられたので、気配を消す。やってみたよ。ちゃんと消せてるのかは私達には分かんないよね。実際に周りにいる人しか体験できないもんね。
私達は前へ前へと・・・どのくらい歩いたのか・・そんなに長い時間じゃなかったと思う。
「行き止まりだ。」
リュウがつぶやく・・
「う・・そ・・」
洞窟の先は崩れ落ちている。
「え。まさかレオ。この下?」
体が震え出す。
「や・・・」
・・・涙が出てくるのが分かる・・・
にょろにょろ達が瓦礫の所に這っていく。
「臭いはしねえ。」
「確かに。」
「血の臭いはするぜ・・・」
「肉だ。肉をくれ。」
「新鮮な肉・・」
「馬鹿。黙れ。」
「いや。死の臭いはしないぜ。」
にょろにょろ達が何か言ってる。頭ががんがんする。
「しっかりして。」
リュウが私に怒鳴りつける。
「あ・・・」
「にょろにょろ達が死の臭いはしないと言ってる。」
「レオは死んでない?」
ああ・・・
「僕達の力でこの土をどかすよ。」
リュウが私の中に溶け込んできた。
「大きさを馬くらいに調節できる?」
リュウが中で聞いてくる。
「や・・・やってみる・・」
イメージは大切だ。
馬くらいの大きさの白龍になった私は土を石をかき分ける。
レオがいるのではと内心びくびくしながら。
1時間位しただろうか・・瓦礫の先に小さな光が差してきていた。
「出口だ。」
リュウがつぶやく。
「出口?」
あの光は出口なの?
「また崩れるといけないから、慎重にしよう。」
リュウが私に話しかける。中にいても話が出来る。そこにようやく気が付く。
「力がまた増してきたんだ。」
リュウが私に教えてくれた。
「美虹ちゃんの力もずいぶんついているんだよ。」
確かに前よりいろんな事がスムーズに出来るようになっているように感じる。
最後の瓦礫が取り除かれ、私達は洞窟の向こうへ抜けていた。まだ夜だ。でも星明かりでほんのり明るいんだ。月はない。そう言えば月って見ないよね。この世界、月ってあるんだろうか?
どっちに行ったの?
「臭う。」
「レオともう一人。」
「血の臭いだ。」
「肉だ。肉をくれ。」
「俺にも新鮮なのを。」
「レオの血じゃない。」
「別の獣人。」
別の獣人とレオが一緒にいる。まさかパンテェールさんたち?




