30 白龍様
昼は簡単なものをさっさと食べて火は使わない。
夜は皆が獲った獲物を捌いて、道々積んできた野草を添えて食べる・・・そんな生活が10日くらいも続いた。同じような日・・・いや違う。何故か日に日に人数が膨れあがる・・・今では50人くらいになっている。全員黒豹の獣人達だ。・・・行軍。そう言って良いくらいの人数と進み方になってきている。
「ねえ。レオ。なんか変だよね。この前全員来たって言ってたのに・・・なんでどんどん増えているの?」
「ああ・・・俺もこれはないと思うぜ。」
袋の中のにょろにょろ達は袋の中からでれないから相当ストレスが溜まってきてるみたい。勿論私達も・・・
「もうアルテミアに入りましたよ。最終的な目的地まであと1日くらいかかりそうですが。」
御者のアームさんが教えてくれた。
「あと少しだね・・」
「平穏無事に着けるとは思ってはいなかったが・・・」
「どういうこと?」
「向こうから砂埃が近づいてきているだろう?」
「うん。」
・・・・
いつの間にか馬車が停まってる。40人ほどが前方に扇形に広がった。
10人ほどは後ろにいる。
馬車の前にレッグさんが立つ・・馬車の左右にはバギーさんとスルーさんだ。
「なんで?」
「戦うみたいだな。」
人ごとみたいに言うレオ。
「レオ・・・も・・戦うの?」
「仕方あるまい?」
レオも戦うつもりなんだね?
向こうから来るのは
「ねえ。ちょっと多くない?」
「そうだな。」
「あの影は何?」
大きな物が一緒にあるみたいに見える。
「う~ん。」
まるで戦争?
「ちょっとした小競り合いだな。」
え?これで?
向こうから何か飛んでくる。
レオの結界に弾かれたそれは火弾のようだ。
そのまま弾かれて元の集団の真ん中に・・・届く前に霧散した。
「すご・・・」
「炎使いがいるな。」
レオの言葉に
「氷は?」
思わず聞いちゃう。
「どうだろうな。」
今や2つの団(?)はちょうど500メートルくらい間を置いて対峙してる。
レッグさんの乗った馬がまっすぐ飛び出す。一人で大丈夫なの?
向こうからも一騎飛びだしてきた。
馬上の二人は少し間を置いて向かい合っている。なんか時代劇で見た名乗り合いみたいだ・・・やあやあ我こそは・・・なんて言ってるわけじゃないだろうけど。
何か話をしているようにも見える。遠いから良く分からないけど。
その後ろに大きな影。
「龍?」
私の呟きにレオが答える。
「にしては少し小さいな。」
突然その龍に似たものがくわっと口を開け炎が放たれた・・レッグさんは素早く回避し、こちらに逃げて?来る。さらに追う様子を見せる・・大きな影・・・
レッグさんがこちら側に戻ってくるのと一緒にレオが結界を張り直した。影は大きく回って元のところに降り立った・・
「え?竜?」
・・・
「あれはワイバーンだな。」
レオが言う。
「わいばーん?」
「手がなかっただろう?手の部分が翼だ。」
なるほど。手がない。私って言うか、白龍は手があったし、背中に翼が会ったよね。
レッグさんが馬車に向かって怒鳴ってきた。
「奴等アルテミアの正規軍のようです。」
誰に報告してるの?パンテェールさん?
「ワイーバーンを味方に付けているようで、あれがこちらに攻撃を仕掛けてきたらかなりの被害が出そうです。」
パンテェールさんの声が中から響いた。
「奴等ワイバーンを味方に付けたのか。白龍さえ味方になってくれれば・・・」
え?今、白龍っていった?
「まさか?」
「パンテェール、おまえが白龍を召還したのか?」
レオが思わず怒鳴る。
「召還?いいえ。」
馬車の中から答えがかえってきた。
「でも。味方になり得るのです。」
なんと。白龍・・・リュウをこの世界に絡め取ったのはパンテェールさんかもしれないの??じゃあ持ってるのは
「もしかしたら白龍を返すことが出来るもの?」
「呼ぶことが出来るモノかもしれん。」
レオがつぶやく・・・
私とレオは顔を見合わせた。レオ。顔がゆがんでる。なんで?
・・・攻撃が始まった。
レオも馬車から飛び降りる。
「気をつけて。」
「おまえもだ。下手な動きをするんじゃないぞ。」
あれ?信用ない?
レオは馬の間を走り抜け、前に・・・レッグさんとスルーさんが付き従うように後を追っている。一頭のワイバーンが襲う。あ。危ない!!何人かが後ろに吹っ飛ぶ。
レオの魔法がワイバーンに向かう。ワイバーンがよけ、飛び上がる。そこにまたレオが炎の弾を撃ち込む・・・
「あ。」
空の向こうから新たなワイバーン。さらには上に人が乗っている。
「なにあれ?」
いつの間にか袋から身を乗り出していたにょろにょろが騒ぎ出す。
「危ない。」
「こっちにくるぞ。」
「逃げるか?」
「肉だ。肉が来る。」
「やるか?やるか?」
「おれにもくれ。」
「やるのか?」
「今だよ。誰も見ていないよ。白龍になろう。」
だれ?今言ったのは?
「はあ?」
私は思わず間抜けた声を上げてしまった。リュウが言ってるの?
「もしかしたら私達がこんな所にいる原因なのかも知れないのに?」
「だからだよ。とりあえず、ここを脱出しなくちゃいけないだろう?」
私は辺りを見回した。皆ワイバーンに気を取られている。他のものたちも相手側と斬り合いをしている。うわあ・・・見たくない。
私は素早く馬車から降りた。にょろにょろ達も一緒だ。
後ろにいた10人ほども今や前に出ている。バギーさんとスルーさんは馬車の両脇にいる。私は小さくかがんで馬車の下をくぐって後ろにしゃがんだままでた。その場所から・・・・
次の瞬間・・・
私、飛んでいる・・・
リュウの意識の方が大きいのか、私は私だけれど、何だか夢を見ているような気がする。翼が力強く羽ばたく。下で大勢の人間達が争いをやめて私を・・・ううん。リュウを見ている。私はレオの所に近づき、手で彼をつかむ。そのまま首に捕まらせるように座らせる。
「お・・おまえ・・」
「今は僕が主に体を動かしてるよ。」
私の口がそう紡ぐ。
「白龍様。」
「白龍様だ・・・」
相手方のものたちは明らかに戦意を喪失したようだ。
新たに加わったワイーバーン達も、上に乗っているものたちのことなどお構いなしに私・・・ううん。リュウの前にひれ伏している。
まだこちらに何かを仕掛けようとする魔法使いにリュウがブリザードを吹き付ける。たちまち凍り付く魔法使い。驚愕の顔をしたまま凍って・・・
「生きてるよね?」
「さあな。」
うわああ・・・私じゃないとは言え、私がしたことだよ。
私の・・・リュウの翼のたてる風でいろんな物が巻き上がる・・・人が倒れていく。いや。倒れているんじゃない。ひれ伏してるんだ。なんで?
「この世界じゃDRAGON・・・龍は神様と同じだ。」
あれ?
「その割にレオは私見たとき敬ってなかったよ」
「まあな。」
ゆっくり私達は下に降りる。戦うことを放棄し地面に顔をすりつけるように礼をとるものたち。
誰かが叫ぶ。
「シュバルツァー王家ばんざい!!」
その言葉は口々に広まっていく。
「ちっ」
レオがつぶやく
「ずらかるぞ。」
ずらかる?
「逃げるって事?」
「戦略的撤退だ。」
なんだそれ?
「忘れ物はないな?」
うん。全部身に・・・つけてないや。あっという間に飛び上がったけど・・・服とか・・どうなったんだろう?」
『大丈夫さ。』
唯一さん?
『君の首に掛かっている。』
こういうときは助けてくれるんだね?
「私の首に何か掛かってない?」
「ある。なんだろう?袋・・・にょろにょろだな。それにポーチ?・・おまえの服だ・・」
み・・・みないで・・・下着も入ってる!!!




