3 夜は一人で迎えたくないよ。
・・・・
『・・・まだこっちのはずだ。おや・・道が出来てるな。』
さっき歩いた道だからすいすい・・・べきべき・・・
あれえ?
目が覚めないまま歩いてるんだけど・・・
そしてやはり口に出した言葉は通じない。心で会話してるって変な感じ・・・
・・・
やっぱり・・・
さっきいたところだ。
『ここなら飛び立てるだろ。』
・・・
ここは主張すべき所だよね。うん。
『私飛んだことないんだけど。』
・・・・・
私の上で固まった人・・・声からして男だよね。
『降りてくれない?状況が分かってないからさ。』
『踏みつぶすなよ?』
『潰さないわよ・・・多分』
ややあって男が私から滑り降りてきた。
『あんたの名前は?で。ここはどこ?』
こいつ・・頭からすっぽり長いマントみたいなので体を覆っている。
『龍に名前を聞かれるとはな。』
だから龍って・・・龍って私のことだよね・・
『ここはどこかって聞いてるんだけど?』
少しいらついてきたよ。どうせ聞いても分かんないと思うけどさ。
『ここはマギーという国だ。』
『マギー?』
『おまえの親はどこにいるんだ?』
男?は私が倒した木の幹に座り込んで私の方を見てる・・・んだよね。すっぽり頭からかぶっているマントのせいで年寄りなのか若いのかも分からない。
『親は家にいると思うけど・・。』
・・ぐううううう
・・・
・・・
お腹が盛大に鳴ってしまった。
『腹が減ってるのか?おまえは何を食うんだ?』
こっちを伺うみたいに覗いてる・・・
『人肉!!・・じゃないことは確かだよ。』
『っっ!!・・なかなか言うな。俺が持っているのは龍に食えるか分からんが。』
『人と同じ物を食うよ!!!』
ちょっと焦ってしまう。変なモノ寄越されたらかなわない。
『そうか?まだ昼飯には早すぎるからな。』
男はマントの中で何か探っていたと思ったら、袋を取り出した。
袋の中身と私を見比べて・・・
『一口だな。』
って。そんなに大食いじゃないぞ。
中からなにかの塊を出して私に寄越す。手に乗せられたそれは黒くて丸い。なんだ?
『それはベアベアの肉の燻製だ。』
男は自分もその丸い物をナイフでこそぎ取りながら教えてくれた。
『パンに挟んで食うとうまいんだが。あいにく切らしている。まあ。燻製だけでもうまいからな。』
そう言って薄く削ったベアベアの肉の燻製を自分も食べ始めた男。仕方がない私も手の平の塊を口に入れた。しょっぱい・・・けど。ベーコンの味だね。でも・・・こんなんじゃ足りないよ。
『もっとないの?』
男は私を見上げた・・・んだろうな。
『今のところこれしかない。残ってるこれも食えよ。』
そう言って、自分が持っていた持っていた小ぶりの塊を渡してくれた。意外と親切?
『あとは・・狩りをするか、街で調達するかだな。』
一口に食べてしまってまだ食べたい私は確かめる。
『ベアベアってもしかしたら、さっき燃やしてた奴?』
『そうだ。あの二人が狩っていたやつだな。』
『もったいない。持って来ればよかったね。』
そうしたら首を振ったように見えた。駄目なの?
『あれはあの二人のものだ。あれを手に入れるために俺を雇ったんだからな。』
ふうん。
『あんたなんであそこにいたの?』
男は食べ終わって、マントをぽんぽんとたたいた。
『何もしてないように見えたんだけど。』
一瞬男が固まったみたいに見えた。
『魔法で奴が逃げられないようにしていただろう?』
そうなの?
男はわざとらしくため息をついた。
『飛べないとなると・・・ここで別れるしかないな。』
『なんで?』
『龍を連れてなんて歩けるわけねえだろう。』
ってなんで龍を連れてたらいけないの?ってか私本当に龍なの?
『私が人なら連れてってくれるの?』
ここで離れたら、どうして良いか分かんないよね。夢の中にしろ、なんにしろ・・・
・・・男はだいぶ考えていたようだけど、私を連れてしばらく一緒に行くことに同意してくれた・・・
とりあえず,人のいるところに連れてって貰わなくちゃ。一人で夜を迎えたくないもんね。