28 初めての
さらに一週間くらい経った。だんだん旅にも慣れてきて、三人の新しい仲間とも気楽に話せるようになった。
夜になると、パンテェールさんが、レオに色々話しかけるんだけど、そのたびに立ち上がってどこかに行ったり、話をはぐらかしたりしている。なんでかなあ?
そんなある朝・・・と言うか・・まだ夜明け前だったと思う。いつになく賑やかな気がして目が覚めた・・・
馬がいなないている?朝?
不意にはっきり目が覚めた。がちゃがちゃという音。怒声・・・何?
「おい。敵だ」
「的だって?」
「いや。敵だ。」
「肉だ。肉をくれ。」
「俺も欲しいぞ。」
「馬鹿。俺たちが肉になる。」
「戦え~」
枕元でにょろにょろ達が騒いでいた。
「敵?」
「誰かが襲ってる。」
「誰だ?」
「仲間じゃない」
「肉だ。」
「肉?肉が自分から?」
「狩るぜ!!狩るぜ!!」
・・
とにかく襲われているらしいのが分かった・・どうしよう?
がばっと起き上がる。そっとテントからのぞくと・・向こうで数人の男達が剣を交えている。あれはラビーさんだ。三人を相手にしてるの?どうにかしなくちゃ。でも・・・・・私、剣なんて使えないよ。
辺りを見回す。手頃な石もない。
・・石があるつもり。レオはそう言った。私は石が手の中にあることをイメージしてラビーさんに斬りかかっている人に向かって投げた。当たれ!!
ばすっ・・・剣を持った男が倒れた・・死・・・死んじゃわないよね?
次はあの男。えい・・ボスっ。最後の一人をラビーさんが切りつけていた。
テントに火が飛んできた。
「火矢だ!!みこ!!!」
レオが叫んでる。
火・・・火事になっちゃう!!どうしたら・・・あ・水だ!!
ざばあ・・バケツの水をひっくり返したような雨。
火矢をつがえていた人の上には氷の塊が直撃したみたい。うめき声がした・・・わあ・・・死んじゃわないよね?
『大丈夫。気絶だ。』
唯一さんの声だ。助けに来てくれたのかな?
『唯一さん。何が起きてるの?』
『帝国騎士団の奴等が追ってきたようだ。』
『なんでえ』
『・・・持っているものが欲しいんだろう。』
『それ何?』
『後で分かる。』
・・・また不意に唯一さんの気配が消えた。勝手だなあ。助けに来たんじゃないんだ・・・
何人いるんだろう。レオが向こうから走って来た。
「美虹。大丈夫か?」
「うん。」
「さっきの雨はおまえか?」
「勿論。」
「よし。向こうの奴等は全部倒した。後は。」
不意にまた馬がいなないた。
・・
馬車だ。馬車に誰か侵入した?
私、中を見たいって思ったに違いないよ。馬車の中が見える。馬車の中では男がパンテェールさんに剣を振りおろ・・・・・・私何した?
凄い悲鳴と一緒に男が馬車からまろび出てきた。男の背に火が付いてる・・・馬車は?無事だ。
男が出てきたとたんさっきの雨がまたざばあって降りかかる。男は倒れ込む・・背中が焦げている・・・
「美虹。おまえ。火も使えるようになったんだな。」
え?私?
「なんだ?自覚ないのか?」
・・・
夜が明ける・・・
「急いでここを立つぞ。」
戻ってきた男達に怪我がないか確認した後、レオが言った。
「新たな追っ手が来るかもしれんと言うことですね。」
「だな。」
でも・・・
「怪我人はどうするの?」
「捨てていくしか有るまい。」
パンテェールさん・・・
いくら何でも・・
「治して良い?」
小さい声でレオに聞く。
「時間がない。」
・・・
「私達に本気で悪意のない者達には治癒を・・・」
「おまえそんな器用な願いできるのか?」
「馬鹿にしないでよ。でも。本当は赤十字とか国境のない白い医師団みたいな精神なら全員助けなくちゃいけないんだけどね。」
「なんだそれは?」
レオが急いでテントをしまう。にょろにょろの回収も忘れない。
昨日から一緒の三人も辺りを確認している。
10人ほどの集団に襲われたようで、三人とも少し怪我をしている。こっそり魔法を使うと三人ともきらきら光って癒えたようだ・・・
「なんだ?」
「何が起きたんだ?」
勿論私は知らん顔していた。レオも勿論知らん顔をしている。
・・・
「用意できました。」
御者のアームさんが言う。
皆慌ただしく馬上の人になる。昨日までより少し馬を急がせながら馬車は進む。




