23 バドバドと傭兵のおじさん
馬車に乗って3日。あっという間に一番大きな町に着いた。歩くともう少しかかるらしい。
「俺がおまえを抱えて行けばな。抱えず歩けば倍と言うところか。」
龍が一緒にいる割には私の体力は前とそんなに変わってない。抱えて歩いてるもらっている分、小さくなってる分・・衰えてるのかも知れないけど・・・
馬車のおじさんは気のいい人だった。
「気がいい奴じゃなきゃこんな仕事は引き受けねえだろう。なにしろ行く先は得体の知れねえ傭兵団だ。将軍も王もなにもねえのに傭兵団だけは・・」
「あれ?レオ?王様なんて知らないって?」
「・・・ふん。」
何かレオって不思議。いつも顔隠してるし、獣人だって知られないようにしてるし・・・
傭兵団の宿舎に着いた。
「依頼のバドバドを引き渡したい。」
レオの言葉で入り口に立っていた人が中に向かって誰か呼んでいる。
私きょろきょろ辺りを見ちゃう。四角い灰色の建物。奥は見えない。でも沢山の人がいるような気配がする・・・ったって。声とか、ガチャガチャ鳴る音が聞こえるから分かるんだけどね。
レオはマントをかぶって堂々と立ってるけど、御者のおじさんはおどおどしてるね。怖いのかな?私はおじさんの脇にそっと行った。隣に立ったらちょっとびっくりしてた。
「おじさん、怖いの?」
小さな声で聞けば、
「みこちゃんは怖くないのかい?」
反対に聞かれちゃった。
「分かんない。だってどんなところか知らないから。」
「そうか。」
おじさん、何を一人で納得してるの?
中からカラカラと音がしてきた。なんだろう?
・・車いす?多分そうだよね。ここにもこんな補助する物があるんだね。後ろで押してるのは兎耳の獣人だ。兵隊?なのかな?
「ご苦労だった。」
包帯だらけの車いすの人が言う。レオがびくっとしたのが分かった。どうしたのかな?
良く見たら・・あ。この人。黒い三角の耳・・・まさか?座っている膝には毛布が掛かっていてしっぽは見えない・・でももしかしたら黒豹の?レオを見上げたけど知らん顔してるみたい。相変わらずマントの中で表彰が見えない。
「ああ。こいつでいいのか?」
レオが無造作に答えると、側に来てひとしきり手の届く範囲で体をなでて、
「そうだ。こいつは飛べるようになったのか?」
って聞いた。レオは、あっさり
「いや。」
って答えてる。そしたら
「走れるのか?」
だって。勿論答えは
「いや。」
そしたらかなり難しい顔になったね。
「・・・それではここに置いても役に立たんと言う訳か?」
「そう言うことだな。」
・・
「肉か?繁殖か?どうするつもりだ?そちらの方も依頼を出すなら手伝うぜ。」
その人はしばらく目をつむってたけど・・・
「試してみたい。おろしてくれ。」
え?下ろすの?乗せたときの騒ぎを思い出しちゃった・・私達は顔を見合わせた。
「下ろしても良いが時間がかかるぞ。」
レオが言う。
「なぜだ?」
なぜって?分かんないのかな?
「こいつは自力じゃ動けねえんだ。」
「なんと・・・」
車いすの人は絶句した・・・
やがてぽつんと
「肉だな・・・」
とつぶやいた・・・え?肉にしちゃうの?可哀相すぎない?
「依頼は?」
「いや。ここで皆の糧になって貰う。」
その人は決心したように言う。でも
「ええええ?可哀相だよ。」
思わず叫んじゃう。
「だれだ?その子は」
「俺のペアだ。」
ペア?
「・・・そうか。」
「で。本当にここで肉にするんだな?」
「私欲しいな。このコ。」
「ああ?」
レオの嫌そうな顔。
「肉にしかならんのにか?」
「何年かしたら動けるようになるかも知れないじゃないの。」
「はははははははは」
その人は笑い出した。
「俺も動けるようになるか?」
「・・・分かんない・・・でも。このコなら動けるかも知れないよ。」
「何故そう思うんだ?」
レオが聞く。私が治すからだよって言いたいけど・・・治せるって分かったらまたここで戦いに連れて行かれちゃうよね?
「何となくそう思うんだよ。」
その人はいつまでも笑ってた。それから、
「俺はもうここにはいられない。こいつと一緒に田舎に引っ込む。俺を田舎に送ってくれ」
レオはしばらく黙っていたけど、
「それは正式な依頼か?」
って。
「ああ。」
「では、まず伝言鳥を飛ばしてくれ。俺たちの所に依頼が飛んでくれば・・・俺たちはもう一つの依頼をこなしてから迎えに来る。その時までに荷物をまとめておくがいいだろうさ。」
車いすの男の人はまたひとしきり笑った後、
「しかし。おまえは我々に対して不遜な口の利き方をするな。小僧。」
って言った。わあ・・・無礼者って奴?
「俺は兵などと言う物は信用してねえからな。」
「まあよい。媚びないところは気に入った。こいつも肉にしないで俺と一緒に療養だ。」
バドバドは何人かの傭兵に手伝って貰って無事飼われていたという所へ下ろされた。
馬車のおじさんはほっとして中継ぎの町に帰っていった。
「さて。俺たちは第3の依頼を片付けに行くぞ。」




