19 依頼をこなしに
「とりあえず昼飯を食おう。」
?さっき、つまんだのに?
「さっきお昼食べたじゃない?」
「あんなのはおやつだ。」
・・・・・
「飯を食ったら依頼の一つをやっつけにいくぞ。」
すぐ側にあった食堂に入った。
入っている人の数も少ない。
「あれ?獣人?」
店の奥にいる料理人の頭に丸い耳が見える。
「そうだ。熊の獣人だ。」
お互い小さい声だ。でも聞こえたみたい。耳がぴくぴく動いている。可愛い。
思わずつぶやいたのも聞こえたのかな。ひょいと顔を出した。結構お年のその人は私達を見て、にやって笑った。
「レオ。久しぶりだな。」
「おう。」
「定食か?」
「ああ。2つ頼む。」
「可愛いのを連れているじゃないか?」
「まあな。」
知り合いみたいだね。
奥のテーブルに座ると、若い女の子が注文を聞きに来ようとしたけど、熊さんの一言でまた引っ込んだ。この子の頭にも丸い耳があるよ。
「けも耳って可愛いよね。・・・あれ?そういえば、レオのも可愛かったな。」
「俺のはいい。」
何で嫌そうな顔をするのかな?
豹の獣人だって言うけどさ・・黒猫みたいな耳がくっついていたと思うんだけどな。触りたいんだけどな。
あれ?他の獣人は耳を見せても平気なのに、何でレオは他の人に見せないのかな?不思議。
・・・
「おまたせしました。」
熊耳の女の子が定食を運んできた。
「わあ。」
魚だ。魚を揚げたのに、とろりとしたソースがかかってる。甘酸っぱい臭いがしている。パンみたいなものと、スープとサラダみたいなのが他に付いてきてる。美味しそう。
「魚なんて久しぶり。」
「そうだな。」
「レオったら口数が極端に少なくなってるね。なんで?」
「聞かれるだろう。」
「あ・・・そっか。」
そうこうしているうちにだんだんお客さんが増えてきた。お店の忙しい時間が一通り終わって一休みする人達みたいだ。ここで休んだらまた一働きだって言う声が聞こえた。
少し賑やかになってきたので、私達の話に耳を傾ける人もいない?
美味しくいただきながら、でも小声で、依頼の話を聞く。全部で3つの依頼があったそうだけど。一番簡単なのが、ベアベアを狩ることらしい。
大変なんじゃないの?
「あれは、いるところを見つけるのが大変なだけで、俺にとっては簡単な得物だ。」
あ・・・そう。ってことは、
「連れてってくれるんだね?」
「ああ。ついでにおまえの魔法の訓練も兼ねたい。」
「私、本当に使えるのかなあ?」
唯一さんが使えるって保障はしてくれてるけど・・・
「カードに記されていただろう?使えるはずだ。」
ちょいと不安だけど・・食べ終わった私達は1つめの依頼をこなすべく立ち上がった。
「多分、山の中で1泊だな。」
あ。そう・・・宿屋は断らなくて良いの?
「荷物も置いていないからな。夕飯に行かなければ、泊まらねえって分かるだろ。」
そんなアバウトで良いんだ?
食料品屋でパンや干し肉などを買い込んでレオの袋に入れていく。凄くたくさん入るよね?
「魔力に比例してるんだ。」
あ・・・そ。
「おまえにやったポーチにも結構入るだろう?」
「分かんない。」
「そうか?」
袋やポーチ、鞄などいろいろな収納があるけれど、最初は皆同じ大きさなんだけど、持ち主の魔力に応じて収納能力は決まるんだそうだ。へえ?
このポーチも。私が持ち主だって登録してあるから、私の能力に合った収納力になったんだって?変なの。
もし、このポーチが違う人が持ち主になったら、中身は自動的に前の持ち主のところに移行するらしい。前の持ち主の新しい入れ物に中身が飛ぶって事。だから盗んでも仕方ないんだそうだ。すごいな。あれ?亡くなっちゃったら?
『持ち主が死んだら全ては消滅するんだよ。』
あ。唯一さん?
『そういう設定にしてあるんだよ。そうしないと、スリや泥棒が横行するだろう?』
・・・ そういう設定?唯一さん。それって変な言い方だよ。ゲームみたいに聞こえる。
『そういうつもりじゃないんだけどね。』
・・・
そういうつもり?
・・・
もうどっかに行っちゃったのかな?
・・・
なんて不思議。
山へ続く道を行く。
「この前とは違う方向だね?」
「分かるか?」
この前通った門と違うよ。さすがに分かる。
「まあね。」
・・・
「今回はあの山を目指している。」
明日には帰ってくるって事だけど・・かなり向こうに見える山を指してるね。
「遠くない?」
「走る。」
「え?走れないよ。」
「大丈夫だ。」
その言葉と共に私はまた抱き上げられた。
は・・・速い!!走ってる!!
凄いスピードだ。顔に風がびしばし当たって苦しい。
「顔は俺にくっつけておけ」
しっかり胸にすがりついたよ。
バイクに乗ってるってこんな感じ?滑るように走るレオ。普通走ると少しは上下動があるはずなのに、ほとんど感じられない。凄い。
「獣化するともっと速いんだが。」
「し・・・し・ても・・いいよ・・・」
こっちは息も絶え絶えなのに。
「そうするとおまえは俺の背に捕まることになる。今のおまえの握力じゃ振り落とされてしまうだろうよ。」
何でこんなスピードで走りながら会話できるの?
「心話を使っているんだが。分かるか?」
分かんないわ!
・・・・・
日暮れ前に山の麓に着いた。すごい。
「今夜は麓で野営だ。」
「レオ。疲れてないの?」
「まさか。」
私をじろりと見て、レオはどんどんテントを建て、竈の石組みをしていく。
その速さに見とれてしまっていた・・・
竈って事は、薪がいるね。あわてて辺りの木の枝を拾う私。
やがて竈に火が入り、鍋に水筒から水を入れながら、
「すくねえな・・・」
「そう?」
「途中飲んだからな。」
え?走っていていつ飲んだ?気が付かなかった~~
「みこ。水を出してみろ」
「はい。」
水筒を出したら、舌打ちされた。それから、
「魔法を使って出して見ろって言ってるんだ。」
って無茶なことを言われた。
・・・
「やったことないよ。」
「おまえはいつもそれだ。やったことがなくても出来るはずだ。」
「詠唱も知らないよ。」
「詠唱か・・・いや。多分・・オマエの半分は龍なんだろう?詠唱なんて龍がしているとは思えねえ。多分出すと思えば出せるんじゃねえか?」
・・・・・う・・ん・・確かに龍が詠唱してブレス吐くとかディ○○ーのシューでもなかったよね。
なんとかなるかな?????
心の中で・・・
「鍋いっぱいの水。」
ざばあ・・・
・・・鍋から水があふれ出し、火がたちまち消えちゃった。
「わ。おまえ何をした?」
「え?鍋いっぱいの水が出るように・・・」
何で多かったのかな?
「鍋いっぱいじゃなく。一杯にすれば良かっただろう?」
え?同じじゃないの?
「いっぱいは、あふれんばかり。一杯は文字通り1杯分だ。」
そう言いながら火魔法でまた火を付け直すレオ。ごめん。
「魔法使うときは具体的に思い浮かべなくちゃ駄目だ。」
なるほど。確かにそうだよね。
美味しいご飯も終わり、近くの茂みで・・・・
なんとかならないのかなあ?乙女がおしり丸出しで用を足すのはなんとも・・・・
・・・・・
ブチブチ言いながらテントに戻る。
毛布が1枚敷かれていてその上にもう1枚の毛布。
鍋を綺麗にしたレオが戻ってきて
「寝るぞ。」
と言って私を抱き込んだ。
「き・・・きゃあ!!!乙女に何するんだあ!!!」
「うるさい。ガキは静かに寝ろ。」
・・・そうだった。
「オヤスミナサイ。」




