18 10才
ザブザブと水を蹴って入った場所に戻る。
「大丈夫か?ずいぶん長かったから心配したぞ。」
私をひょいと水から抱き上げるレオ。
「濡れちゃうよ。」
「このくらい。」
ふわっと温かい風がくる。
あ。この前頭にしてくれた奴だ。ドライヤー?
「カードを見せてみろ。」
首にぶら下げたカードを引っ張り出して二人で見る。
みこ
女
龍人・人
魔法使い・・・氷・水・多岐多肢
10才
・・・
多岐多肢ってなんだ?
「あれ? 二つ書いてある。龍人と人って???」
私とリュウのことかな?
『そうでもあるしそうでもない。』
あれ?きょろきょろしちゃう。
『もかしたら、さっきの・・えっと・・唯一さん?』
心の中で聞いてみる。
『ほう?唯一さんか・・ま。いいよ。その呼び方で。何かあったらいつでも答えるからね。』
『暇なの?』
『う・・・』
「この龍人ってのは隠しとけ」
レオが私にだけ聞こえるように言う。
「ん?」
「龍だと知れると色々やっかいだ。」
「どういうこと?」
「あとでな。その多岐多肢ってのもだ。ほれ。いまやれ。」
隠せって
『君の場合は出来るって思って願うと叶うよ。面倒な詠唱もいらない。』
まだ側にいたのね。でもありがとう。
「神官に祝福を見せろと言われるぞ。」
白い服の人が近づいて来た。
「祝福を見せてください。」
私は言われたとおり金の板を見せる。
「人。氷と水を使う魔法使いですか。14になったら学校でしっかり基礎基本を学んでくださいね。それまでにあまり大きな魔法を使ってはいけませんよ。」
「何故ですか?」
「体に負担がかかるからですよ。もし、大きな魔力が発動しそうでしたら、14より前に学校に入ることが出来ます。その時は早めにいらっしゃい。」
「わかった。俺が良く見ておく。」
「保護者の方ですか。あなたも魔法使いの方ですね?」
「そうだ。俺が良く見ておく。」
偉そうだねえ。この神官さんの方が年は上だと思うのに。でも神官さんはにこやかに、
「さっきあなたの祝福を見せていただいていますので。
安心していても大丈夫ですね。
さて。みこさん。着替えに行きましょうか。」
と言う。私はレオからポーチを受け取って、一緒に着替えの部屋に行った。
歩きながら、
「本当に気をつけてくださいね。小さいうちは力も魔力も安定しないのですから。思わぬ事態にもなり得るのです。できたら今すぐ学校に入って訓練を初めて欲しいものですが。」
言われて少し驚いた。
「あの。学校は14からって。」
「魔法使いの祝福を受けた子どもに関してはそれは当てはまらないんです。さっきも言いましたように、体に負担がかかりますし・・・危険ですから。
発動しそうになってからとは言いますが、大きな力に翻弄されそうになってからでは本当は遅いのですよ。」
「他の子どもはどうしていますか?」
「他に魔法使いの祝福を受けた子どもは赤ん坊のうちに分かりますから、定期的に祝福を受け直しに神殿に通うんです。板が金色になった時点で学校に行くことになります。」
「あ。」
板は金色だ。あれ?普段は普通の板に見えるって言ってたけど・・ここでは違うのかな。
「あなたは田舎の出身で、今まで祝福を受けたことがないと聞きました。ですから本当はすぐにでも学校に入れたい所ですね。」
「ほんとうは?」
「ええ。でも、一緒にいる方がAランクの炎の魔法使いですので。任せても大丈夫かと判断させていただきました。」
「A?」
「ええ。あなたはまだ何のランクも付いていませんから。」
良く分からないな。とりあえず、着替えよう。
戻ってきたら、レオはその人にお布施を払った。どんどん借りが増えていくよね。
これで私の金の板は皆と同じように使えるようになったみたい。
ゆっくり神殿を出る。何人かが連れ立って神殿に入っていくのとすれ違った。
ねえ・・・
「この多岐多肢ってなに?」
「しらん。俺も初めて見た。しかし・・・10才だったのか」
「そうらしいね。」
「自分の年をそうらしいとは何だ?」
リュウともこれから先付き合っていかなくちゃいけないようだし。言われたことはちゃんと打ち明けた方がよさそうかなあ。
「実はさ・・」
「実は?」
「ちょっと他の人に聞こえないように話したいな。」
また抱き上げられた。耳元に口が来るから小さい声でも大丈夫だね?
「獣人の中には耳が良すぎる者もいるが。フードの中に話せば誰にも聞こえない。」
レオは相変わらずマントのフードをしっかりかぶってるからね。
「俺もおまえに依頼のことを話したいしな。」
「依頼?いつのまに?」
道を歩きながらぼそぼそ小声と話しているんだけど
「・・・リュウとはこの世界にいる限り一緒なの。」
「・・ぐ・・そ・・それは・・」
「何焦ってるの?」
「・・・そ・・それでは俺は・・いつまで経っても・・」
「なに?」
「い・・いや。何でもない。 」
・・・
「な・何?おまえは本当は15なのか?」
「うん。でも、今は10才なんだって。」
「それもまた・・・悔しいじゃねえか。」
「ん?なんでレオが悔しいの?」
「あ。何でもねえ。」
どうも挙動不審だね?
へんなの。
「板の色だけど。魔法使いは金なの?」
「ああ。普段はただの板に見せてるがな。まあ。マントを見ればばれてしまうから本当はあまり意味がねえ。」
板は魔力が高いほど本当の金に近くなるって。
「俺のはほぼ純金だ。おまえのもだな。」
本当に金になるんだ?
「普通の奴はここまで金に輝いてねえ。」
良く分からないけどそうなんだ?
「で?依頼って?」
もう屋台は途切れ、すぐ先はお店屋さんや普通の家の並んだ通りが見えている。
「ああ・・・」
なんか元気ないね?
最後まで掻き上げたので、当分21時に更新していきます。
全100話で完結します。
読んでくださると嬉しいです。




