17泉の中で
・・神殿の隣には灰色の建物が見える。
「あれが学校だ。」
レオは私をおろし、手に持っていたおまんじゅうの紙を取り上げる。
「い・・いくつくらいから入れるの?」
ぐいぐいと私の口を手ぬぐいで拭きながら、
「成人の2年前からだ。」
って教えてくれた。自分で拭けますって。
2年間、学校で学んで手に職つけて出ると一人前に働けるようになるらしい。
「どんな内容の勉強かなあ?」
ごみも私の口の周りを拭いた手ぬぐいも全部袋に入れながら、答えてくれる。
「それぞれなれるもの・・なりたいものによっていくつかの選択肢に別れているぞ。」
それから私の手を引いて、
「まあ説明も見学も後だ。ここでおまえの身分証明をきちんといして貰おう。」
・・年も分かるしな。
・・最後の言葉が口から消えて・・
「なに?」
「いや。これはよくできてはいるが、おそらく出るところに出たら偽物だとばれる可能性が有るからな。」
私の首の金の板を確認するように紐を引っ張って言う。ふうん・・・
神殿の中はがらんとしてる。どんどん奥に進むと、小さな池があった。
「誰もいないの?建物の中に池まであるし。」
レオは
「珍しく誰もいないな。まあ。大概、朝一番に来て祝福を貰うからな。」
「祝福?」
池に近づきながら聞き返す。
「祝福を貰うには、この泉に浸かるんだ。」
「浸かる?泉?これ池じゃないんだ?」
「祝福の泉だ。どこの神殿でも中心にある。子どもが生まれたらここに浸ける。大人になるときも同様だ。」
あれ?
「私、生まれたてでも、成人でもないよ。」
おまけに龍と人の合体だし・・・異世界から来てるし・・・
言葉が口の中で消えた・・・話した方が良いのかな・・・話しても大丈夫かな?
泉にさらに近づこうとするレオの手を引っ張った。
「あのね。」
「なんだ?」
「この泉って・・」
「何を心配してるんだ?」
私は思いきって顔を上げた・
「あのね・・」
「声が小せえよ。」
耳貸してよ・・
私は自分がこの世界の者じゃないこと。白龍とぶつかって、白龍を召還しようとした者に巻き込まれたことをぼそぼそと伝えた。
「だから?」
あれ?反応薄い・・
「泉に浸かっても良いものなのかと・・」
「子どもがそんなこと心配するな。この泉はこの世界に生きる者に祝福を与えるんだ。おまえは今、この世界に生きているだろう?」
「まあ・・・そうだよね。」
「ならば等しく恩恵を受けるだろうよ。」
そんなものなのかなあ?分かんないや。レオは私を下に下ろし、何か合図したみたい。白い衣の人が側にやってきた。その人にレオがが2~3言うと、頷いて、私についてくるように言った。
「ついていって着替えて来いよ。」
はあ?
「そのまま水には浸かれない。禊ぎ用の服に着替えるんだ。」
なるほど。
小さな部屋に案内されて、白い頭からすっぽりかぶるような服を渡された。
それに着替えて脱いだ服をポーチにしまう。
また泉の所に案内された。
「よこせ。」
レオにポーチを取り上げられた。
「濡れるからな。」
なるほど。
白い服の人に促されるままにゆっくり泉に入る・・・・冷たい・・・
腰までの水の中央に行くように促される
・・・中央まで歩いて行くと
「頭まで付けてください」
黙っていた白い衣の人から言われた。
しゃがめって事だよね・・・思い切ってしゃがみ込み・・頭まで水に浸けた。
水の中でそっと目を開ける・・・不思議と苦しくない。
浅い水のはずなのに普通に立っていることに気が付く・・
向こうにドアが見える。呼ばれているような気がして、私は迷わず歩いて行く。
ドアの前に立ったらドアが開いた。自動ドアだったのか・・・
中に入ったら
白龍がいた。
「やあ。僕も呼ばれたよ。」
小さい白龍だ。小さくなれるって言ってたもんね。
「また会えて良かったよ。」
そう言って笑ったんだろうな。
二人でしばらく話をする。
「あんたの名前は?」
「ああ。リュウでいいよ。」
まんまなの?
・・・
「誰もいないね。」
「ここはこの星の司令室に繋がってるらしいよ。」
司令室?
「なんて言ったら良いのかな?中枢?操縦室?分かる言葉に還元するとそうなるのかな。」
どこからか声がしてきた
「やあ。君たち。この星にようこそ。」
「「だれ?」」
声がハモった。
「僕はそうだね。この星の人達の概念で言ったら、至高の存在。唯一なる者ってとこかな?さだめを決めし者とも呼ばれている。」
「神様とは違うの?」
私の問いに
「そちらの世界で言う神様・・・近いけど違うかな。」
と言う答え。
「まあ。あまり時間がないから簡単に言うよ。」
私は魔法使いで良いらしい。主に氷・水系の魔法が使えるようになるそうだ。
リュウは?
リュウはしばらく私と共にあらなければならないって。
「そうでないと、君はきっとここの空気に耐えられなくて死んでしまうよ。」
ここの空気には地球のものと違う成分が入っているらしく、それが人間には猛毒に当たるんだそうだ。
私の体がこちらの空気に慣れたらリュウは私と離れるらしい。
「離れても、二人で一人だから、遠くへは行けない。」
って?
「リュウはずっと私と一緒って事?」
「そうなるね。」
声が続ける。
「保護者がいやがるかも知れないね。」
「レオのこと?」
「そう。レオのこと。」
声は何かおもしろがってるみたいだ。
「君の年は、リュウの年に合わせて10才だ。」
笑いを含んだ声が伝えてきた。
「リュウ、10才だったんだ?」
「僕100年で1歳年を取るんだ。今ちょうど1000才だよ。でも。龍で言ったら10才になるね。」
わお・・リュウの言葉に驚きだよ。
「龍は80くらいまで生きるんだ。」
こともなげに続けるから、
「つまり、8000年生きるって事?」
って聞いたら
「そう言うこと。」
って。長生きだね。
・・
「もう時間だ。僕とはもう神殿の泉を経なくても話は出来る。君の耳にほら。通信機を付けた。」
「通信機?ここってどんな世界なの?」
「もしかしたら君の世界に近いのかも知れないよ。」
・・・ ・・ちょっと待って・・
リュウが笑って
「心配しても始まらないよ。戻る時間みたいだ。」
って言うのと一緒に息が苦しくなった。リュウがすっと私に重なったような気がする・・・
ざばあ・・・
私は顔を上げた。
なんだった?今の?
泉の向こうにレオの心配そうな顔が見えた・・・




