12 依頼
そんな話をしているうちに町の門が見えてきたんだ。
「きじやにまた泊まるの?」
「ああ。最初に5日分払ってあるからな。」
レオが金の板を二枚見せた。
「依頼は終わったのか?」
あ。私。出た記録がないって思うんだけど・・・
「みこちゃんのほうはちゃんと起きているね。」
門番さんの言ったことにはてなって顔してると
「行きはマントですっぽり包まれてよく寝てるからって言ってたからなあ。」
門を通り過ぎた後、歩きながらそっと聞いたら
「薬草を採りに行くのに、さみしがりやで、ひとりでいられねえってごねて寝たから仕方ない・・連れてくって言ったからな。」
カードだけ一緒に見せたらしい・・・それでだまされてるの?大丈夫かなここの門番さん。
「薬屋へ行くぞ。」
伝言鳥から聞いているという薬屋へどんどん歩いて行くレオ。
「ま・・・待って。」
後ろを振り向いたレオはひょいと私を抱え上げた。なんだかんだ言っても優しいんだよね。
町の通りを少し入ったところにその薬屋さんはあった。
「頼まれた花を採ってきたぜ。」
店の奥から出てきたのは・・・耳が尖ってる・・・妖精?
「レオ。やっぱりおまえの所に飛んでたな。」
「俺がこの町に来てるって知っていて依頼を出したんだろ。」
レオはにやりと笑って薬屋に花を渡した。
「そっちの嬢ちゃんは?みねえ顔だな。」
「ああ。俺のな。」
薬屋は私をじっくり見てるんだけど・・・やだな・・・
「知ってるのか?」
「いや。知らん。まだまだ子どもだからな。」
「そうか。まあ。楽しみだな。」
「何のこと?」
我慢できなくて尋ねると。二人とも首を振ったんだ。そして、レオは
「おまえにはまだ関係ない。」
って。私の話をしてるんじゃなかったの?
・・・
「あのう。薬屋さん。薬屋さんは?妖精さんなの?」
薬屋さんとレオが笑い出したよ。なんで?
「こいつはエルフだ。」
「あれえ?でも、エルフって・・・妖精でしょ?」
「妖精ってのがなにかは知らんが・・・俺たちはエルフと呼んでいるな。」
「エルフって半分神様だよね?」
「わしが神様か。それは重畳。」
薬屋さん凄く嬉しそうだ。
「嬢ちゃんのことはわしも気に入った。何かあったら頼っておいで。」
「ありがとう。でもお名前聞いても良いの?」
薬屋さん笑ってるんだけど・・・
「いやあ。久々に楽しい・・・わしはフェーと言う。依頼がなくても暇だったらいつでも来るがいい。」
レオは少し驚いてたみたいだけど
「それは助かるな。何かあったら・・・なくてもこいつを気に掛けてくれる存在がいるってのはな。」
「おや。独占欲はないのか?」
独占欲って?
「おまえに主張しても仕方ねえ。」
レオの答えを聞いたとたんに、ますますフェーさんはヒーヒー言って笑ってるんだけど・・・笑われてるのは私?レオ?
「そういや・・おまえさんはいくつだね?」
フェーさんが聞いたから
「15だよ。」
って答えたら
「「うっそだ!!」」
二人で怒鳴ったんだ。嘘じゃない・・・
「多く見積もっても十才だな。」
「7才くらいじゃろ?」
・・・ううむ・・・
・・・白龍っていくつなんだろう?もしかしたら白龍の年に引きずられているのかな?
「嘘はいかんよ。」
・・・・・
ま・・・いっか・・・子どもに見られていた方が何かと分からないことがあってもごまかせるかも・・・ そう思って訂正するのはやめた。
「成人っていくつから?」
「16じゃよ。知ってるじゃろうが。」
知らないよ。
「あれ?レオっていくつ?」
「俺は18だ。」
こっちの世界じゃ大人だね。あ。うちの世界でも最近は大人か?選挙権持ったんだっけ?
「フェーさんは?」
「わしか?人間で言ったら50才くらいかのう・・・」
へえ?
「人間で言ったらって?」
「500年ばかり生きとるからのう。」
・・・500?
もしかしてエルフは10年で1歳年を取るのかな?だから500年で50才?
レオって見た目通りなのかな?聞きたいな・・・
あれ?
・・・そういえば・・・白龍っていくつなんだろう?10才くらいに見えるなら10才なのかな?龍の10才って本当はいくつなんだろうね?
う~~~んと私が考えているうちに二人は大方の話を終わらせてた。あら。面白いところを聞き逃したかな?
・・・
「取引は終わったぞ。」
薬屋を出て少し歩いたところで気が付いた。
「ねえ・・・そういや・・耳苔は?売らないの?」
レオは私を見下ろした。で、
「あれは食ってもうまいんだ。」
こともなげに言った。
食べるんだ。
「焼いて少し塩を振るんだ。腹の調子も整えてくれるし、毒消しの役目もあるからな。」
「万能なの?」
歩きながら教えてくれるんだけど、背が違いすぎるからなかなか大変。レオは少しかがんで話すし、私は上を見上げながら・・だから。
「おや。レオ。また来たのかい?残りの4日分は次に来た時に回すんだと思った。」
「いや。依頼が来てるからな。部屋はあのままか?」
「片付けちまったよ。でも、そのままつかってくれていいよ。」
へえ。泊まらなかったら払った分は次回に回せるんだ。意外ときちんとしてるんだね。
でも・・あれ?依頼なんていつ来たの?私伝言鳥って見てないよね。
「で。にょろの肉はいるか?」
え?肉?蛇の肉?
「そうさね。大きさはどのくらいだい?」
「太さは一抱え。長さは・・・3尋ほどだな。」
ひろ?
「1尋ってどのくらいの長さなの?」
「俺が両手を広げたくらいの長さだ。」
へえ・・・
にょろは皮をはいでぶつ切りにして店に卸すんだそうだ。皮は何かに使えるらしい。
「依頼は出さないの?」
「ああ。女将を介した方が速い。」
と言うわけで、宿屋の女将さんがあちこち声をかけてくれたそうで、無事全部売れたみたい。
「あれ?」
「なんだ?」
「頭は売らないの?」
部屋に入って伸びをしてたら気が付いたよ。あの頭は切って売った中に入ってなかったよね?
「頭は毒があるからな。ちょいと特殊だ。」
えっ!!!
「私毒蛇に狙われてたの?」
「だからにょろだって。あいつ頭一つの時は猛毒を持つんだ。」
げげげげげげ・・。
「噛まれてもいねえはずだぜ。即ぶった切ったからな。」
そ・・・それは・・
「ありがとう。」
よくよく聞けば、にょろの毒は、薬屋も、武器屋も欲しがるらしい。
「さっきの薬屋で、何で売らなかったの?」
レオはにんまり笑って。
「今、俺がにょろをあちこちに売ったろう?」
「うん。売ったよね。」
「おそらくにょろの頭や皮が欲しいという依頼が神殿に殺到するはずだ。」
「だから?」
私の頭にぽんと手を置いて、
「わからねえか?」
分かんないよ。
一つの寝台にごろりと寝転がったレオは、
「一番高い値を付けたところに売りに行く。」
なるほど・・・
「頭一つで、やすくても、ひと月はここに滞在して飯も食えるくらいの額になる。」
私もレオのまねをして寝台に寝転ぶ。寝ちゃいそうだね。
「高いと?」
「3ヶ月は食えるな。」
それすごい・・・
そんなこんなでうとうとしちゃったみたい。
「飯に行くぞ。」
レオの声で起こされた。
「すっかり夜になっちまったな。」
機嫌良さそうだね。
「良いことあったの?」
「ああ。依頼が来たからな。」
え?
「伝言鳥が来たの?」
「おお。あちこちから沢山な。結構良い値で売れる。」
しまった。また伝言鳥とやらを見損なった。
「沢山?1つしか頭はないのに困らないの?」
「明日、ここで値段交渉すると返事を出した。何人か申し出があるとも返事に織り込んである。」
「なるほど・・・」
「まあ。くえ。」
目の前に置かれた肉の山。
「まさか?」
「にょろだ。」
・・・・・
・・・・・・・・
へびだよね・・・蛇・・・・
「どうした?食わねえのか?」
私は側に添えられた野菜をもっぱら食べる・・・でも、肉のたれが野菜に絡んで・・・う~~~~ん。どうしよう。たれが美味しいんだけど・・・でも蛇・・・
「肉も食え。大きくなれんぞ。」
「・・・もう大きいよ・・・」
ぼそっとつぶやけば、
「今は小せえだろうが。」
聞こえたんだね。
知らない世界でほんとに現実なら、好き嫌いしていては命に関わる・・・私は意を決してにょろの肉を一口・・・美味しい
気が付いたらぱくぱくと食べ進めていた。本当に美味しい。




