表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
ドッペルゲンガー百合 ~12人狐あり・通暁知悉の村~  作者: 笹帽子
【3】三卜八恵は知りたくなかった
64/108

2(狐)

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 私は、その叫び声が、自分のものだと認識するのに一体何秒かかったのか、よくわかりません。ただ、肺の中の空気が全部なくなって、いったんその叫び声をやめて息を吸わなければという段になって初めて、私は自分が叫んでいたということに気づいたのです。

 駆け寄って手を触れようにも、一体どこに手をつけば良いのか分からないほど、それはただの肉塊であり、血溜まりでした。

 頭の中をガンガンと変な音が鳴り響いていました。深い水の底に落ちてしまって、耳の奥が圧迫されて、世界が遠ざかっているような心地でした。香織が、私の香織が、どうして。悪い冗談だと、誰かに言ってほしい。私が考えたのは、私が考えられたのは、そんなことだけでした。


「いやあ、めちゃくちゃだな」

 声がしました。

「もうめちゃくちゃだよ、全く」

 音もなく背後に立っているのは、よく知っている人でした。

 やっとのことで私は喉の奥から声を絞り出します。

「お、お父さん」

 父は呆れた顔をしていました。

 それは。

 その顔は。

 その顔を見て、私はすべてを悟りました。

「これはやり過ぎだよ。二色」


 それは、母に対して呆れている時に、父がよく見せる表情だったのです。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ