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私は校庭から改めて旧校舎を眺めた。なるほど三階の廊下の窓に、羽咋少年と思しき人影が見えている。夕焼けに赤く染められた校舎を見て、私は感心してしまった。燃えるような赤に染められた校舎に浮かぶ人影が、火事で亡くなった少年の幽霊という話にぴったりなのである。
羽咋少年の説明は説明になっていない。兄が噂を流したというのはきっかけであり、その幽霊話が語られ続ける理由ではない。
火事。
狼の尻尾にはたどり着かなかったが、狼を探していたらそれにたどり着いてしまった。
「……はて」
この話はなんだか良く出来すぎているなぁ、と私は思う。
思います。
思いました。
携帯電話を取り出し、手がかりの画像をもう一度見つめます。
「……そういうことなのかもしれませんね」
そして、昨日図書館でコピーしてきた新聞記事を取り出して、こちらもまた、眺めます。
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20××年10月6日付 金沢日日新聞
中学校の屋上で不審火
6日未明、市立錦ヶ丘中学校の屋上で炎が上がっているとの通報があった。警察と消防が現場に到着した時にはすでに自然鎮火していた。けが人はなかった。屋上のコンクリートが焦げていたものの、現場に火が出るようなものはなく、県警は放火の可能性も含め捜査を続けている。錦ヶ丘中学校は6日、臨時休校となった。
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中学の名前で検索して見つけた最初の記事です。これを読む限り、幽霊少年が言っていた「生徒が死んだ」というのは嘘なのですが。しかし、かつてこの中学で火事があったことは事実なのです。
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20××年10月8日付 金沢日日新聞
ホテル客室で火事 周囲は一時騒然
7日深夜、JR金沢駅前のビジネスホテル『プレミアムホテル金沢』の五階客室から出火し、一部屋約14平方メートルが全焼した。県警によると、この部屋の宿泊客の30代の男性が煙を吸って病院に運ばれたが、軽症という。金沢東署によると、男性は調べに対し、「眠っていたところ息苦しさで目が覚めた。気付くと部屋中が煙に包まれていた」と話しているといい、同署が出火原因を詳しく調べている。現場はJR金沢駅前の繁華街で、周囲は一時騒然となった。
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20××年10月10日付 金沢日日新聞
犀川大橋で車3台炎上 立て続けに爆発か
9日午後4時ごろ、金沢市千日町の犀川大橋で車が燃えていると通報があった。燃えた3台の車に乗っていた男女合わせて4人のうち、男性1人が軽いけがをして一時病院に運ばれた。火は約一時間後に消し止められた。県警と金沢市消防局によると、現場は片側二車線の直線道路。焼けたのはタクシーが1台と通勤途中の自家用車2台で、それぞれボンネット、車体後部、助手席付近から出火したとみられる。このうち助手席付近から出火したとみられる車に乗っていた男性は、「突然衝撃と大きな音がして、助手席のドアが燃えていた。何が起こったか分からなかったが、ともかく車を降りたところ、他にも燃えている車があった」と話しているという。県警と消防局は出火の原因を詳しく調べるとともに、何らかの事件の可能性もあると見て捜査している。
現場近くを通りかかった女性は、「大きな音がして、車から次々に火柱が上がった。燃え移ったというよりも、それぞれ爆発したように見えた。炎は激しく、歩道まで熱さが伝わってきた」と話した。
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火事は他にも、日宮神社という河北の神社で一件、また市内のオフィスビルでも一件起きています。神社の方は派手に本堂が全焼していて、これはある意味普通の火事のようですが、オフィスビルの方は三階のフロアだけが燃えて火元が結局わからなかったとあります。
はてさて、これは面白い記事ですよねぇ、と私は思います。