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ドッペルゲンガー百合 ~12人狐あり・通暁知悉の村~  作者: 笹帽子
【2】稲荷木燈花は貴方が知りたい
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「いらっしゃい」

 薄暗い店内には、昔の怪獣特撮映画の曲が低く流れています。

「ああ、君か」

『衣装のウラヅキ』の店長さんは、白髪痩身年齢不詳のちょっとヤバい感じの男性です。

「仮装はうまくいったかな」

「ええ、良い衣装でした。……とても良い衣装でしたので」

 私は、先日レンタルした『神谷内香織がいかにも着ていそうな服一式セット』をそのまま買取する旨伝えました。何しろ本人が着て帰ってしまいましたから、返却のしようがありません。店長さんは目を閉じて頷きました。

「わかるよ。僕もそうなるんじゃないかなと思っていたんだ。君がハンドバッグ一つで入ってきた時、やっぱりなと思ったんだ。わざわざ買取を伝えに来てくれてありがとう」

「いえ実は、一つお願いがあって来たのです」

「お願い?」

「はい。ここでアルバイトをしている女子大生がいると思うのですが」

「え、ああ、神谷内さん?」

「彼女について教えてほしいのです」

「うん……? 君は彼女のファンか何かなの?」

「どうしてですか」

「いやだって、『神谷内香織がいかにも着ていそうな服一式セット』を買い取るような人が、神谷内さんのこと教えてくれって言ってきたら、そうなのかなって思うでしょう。ファンかストーカーか」

「……そうですね、ストーカーよりはファンでありたいと思います。あるいは、もっと深い関係」

 冷静に考えて、今の自分の発言は犯人っぽいなと思いました。

「ははあ」

「つまりこれまで、私は彼女に私のことを知らせようと、腐心してきました。まさに不審だったわけですが。しかしともかく彼女は彼女自身のことしか見ていませんから、私には彼女になるという手段しかなかったのです。しかし今思い知らされたのは、私こそが彼女のことを何も見ていなかったという事実であり」

「来てるねえ」

 店長さんは嬉しそうに笑いました。かなりやばい人だなと思いました。

「神谷内さんとはどこまでいったの?」

「Uまでです」

「なるほどね」


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