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ドッペルゲンガー百合 ~12人狐あり・通暁知悉の村~  作者: 笹帽子
【2】稲荷木燈花は貴方が知りたい
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 瀬戸内産しらすの和風スパゲッティを食べる。

 なんだかんだ言ってお腹が空いていた。狼の姿でとはいえ怪我をした以上、その回復にエネルギーが必要だったのだろう。ずっと眠っていた割には、そしてモヤモヤと晴れない気分の割には、食欲だけはあった。食欲だけがあった。

 もう今日は料理なんてする気も起きなかったし、こうして非常手段のファミレスを解放しているけれど、明日からはしばらく引きこもろうと思った。タジマで食料を大量に買い込まなくては……。

 僕のドッペルゲンガーのことを考えた。

 それは実はドッペルゲンガーなんかではなく、稲荷木燈花という、奇妙な女の子だった。僕の気を引くために僕に化けた。僕が自分自身に執着していることを見抜いて、だから僕に化けて、けれども僕が自分自身を恐れている理由は見抜けず、というか考えもせず、満月の夜の僕の前に現れた。

 あの時より、少しは冷静になっている。

 と、思う。

 しかし冷静になってもやっぱり、燈花の行いはかなり自分勝手に思われた。自分のドッペルゲンガーがうろうろしているというのは、僕のような特殊な場合でなくたって、普通に考えて、愉快ではないだろう。

 そんなことをわざわざ実行に移してしまう燈花はどうかしていると思う。

 この瀬戸内産しらすの和風スパゲッティ、しらすの香りがあんまり効いていないな、と思って、江ノ島で食べた二食しらす丼のことを思い出した。燈花は僕のことをしらす知識が欠如していると詰った。僕のしらす知識が多少はついたから、ファミレスのしらすでは満足できなくなっているというのだろうか。

 しかし……。しかし、彼女は、()()()()()()()()()()()()()()()()

 同じところを考えが堂々巡りして止まらなかった。

 まあ、考える時間はたっぷりあるさと僕は思った。狼の姿でなければ別に狙われたりしないだろうけれど、でもできるだけ外に出ないほうが良い。しばらくは引きこもり生活をするつもりだった。

 休もう。

 考えよう。

 よく眠ろう。

 いい夢が見られたら良いな、と僕は思った。


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