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ドッペルゲンガー百合 ~12人狐あり・通暁知悉の村~  作者: 笹帽子
【1】神谷内香織は自分を知りたい
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 木曜日と金曜日のことはよく覚えていない。

 なにしろこれは急展開である。

 燈花に休日に呼び出された。


 結構早めに来たつもりなのに、待ち合わせ場所には既に燈花の姿があった。

 急に休みの日に会おうだなんてどうしたの、と僕は聞いた。

「デート?」

「何を言っているんですか」

 燈花が首を傾げるとふわふわした綺麗な髪が揺れる。ワンピースに気合が入っている。なんだそれ。デートか。

「休みの日に二人で遊びに行くのですよ。デートに決まっています」

「そ、そうですか」

 僕は会おうと言われただけで、どこに行くとかは聞いていない。今まで何度もうどんを食べたりしているが、だいたい平日、大学帰りだ。それが急に休日にデートである。どうした。

「それで、どこへ?」

「デートにふさわしい場所です」

 ううむ、と僕は考えた。どこだ。

 僕は最近インターネットで美味しいうどん屋とかを調べたりしているので、燈花と行きたいうどん屋リストみたいなのが実はある。クラウド上に保存されている。クラウドバンザイ。その情報は、しかるべきタイミングで取り出せば、きっと燈花は喜ぶだろう。しかし多分、これは多分なのだが、今は、しかるべかない気がする。

「どうしました、香織」

「しかるべかないよね……」

「は」

「いや、普段はうどんとかだから、何かあったのかなって」

「そうです、二人はまだUまでの関係でしたが、今日はその一歩先へ」

「一歩先へ」

「その向こう側へ」

「向こう側へ」

「もうもどれない」

「いや、そんな取り返しの付かないようなことは」

「もどりたいんですか」

「え、まあ」

「いくじなし」

「いや」

「香織は私のことはただの遊びだったのですか」

「あの」

「おうどんさんが目当てだったんですね」

「さんをつけるな」

「様」

「敬称略」

「おうどぅん」

「北欧神話とかで出そうな響きをやめろ」

「香織」

「なに」

「スイカの残額は十分ですか」

「え、うん、今朝チャージしたけど」

「この世で二番目に賢明な行為です」

「え、一番は」

 燈花は無言で財布を改札機に押し当てた。

 軽やかな電子音と共に、彼女のカードに三千円がオートチャージされた。


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