第九話
待っている方がいらっしゃいましたら、遅くなって申し訳ないです。
こちらに向かってくる砲火は戦艦のそれより経が細く、その分連射間隔が短く、とにかく数が多い。
巡洋艦主砲だ。
艦船への打撃は戦艦が受け持ち、こちらへの迎撃を巡洋艦に任せるつもりのようだ。
戦艦の大型砲もこちらに誘引できれば艦隊への援護になったのだが。
こちらの3倍はある戦力を簡単に抽出できる戦力の厚さ。
巡洋艦クラスの全てを迎撃に割り振る思い切りの良さと。
それを忠実に実行する統制の高さ。
開幕に乱れた足並みを、砲撃戦をしながらも整つつある指揮能力。
やはり彼の国は脅威だ。国力も、士官も。
だが、だからといって、それに飲み込まれてやる義理はない。
下方からフォクスター(F)からインディア(I)までの2班が上がってくるのが見える。
全機無事のようだ。
突撃する。上下から、40の竜が突撃する。
艦隊という餌を食いちぎるため、40の牙が上下から迫る。
『各隊へ優先目標を送信する。俺の分までぶん殴れ。』
情報収集に専念するため直接攻撃に参加出来ないα04から激励とともに観測データが届く。
突撃の先頭に立つ我が隊に指示された撃破目標は防空巡洋艦が3隻。
細長い真ん中が少し膨らんだ長方形の船体に、コブのように突き出た艦橋。
上下2面に2連装主砲が艦橋を挟むように前後に2門ずつの計8基。
そして特徴的な、左右に設置された四角い箱。
宋胡が粒子砲統一戦略に至る過渡期に作られた、古い設計の巡洋艦。リャオチン級防空巡洋艦だ。
砲戦能力は低く、艦隊戦ではさほど脅威ではない老婆だが、この時ばかりは話が変わる。
「あの船はミサイル持ちだ。ECM作動。主砲斉射で落とす!」
ロックオンを阻害するため電波欺瞞をかけ、一気に加速。
体内の粒子加速器がフル回転し、敵の装甲を貫くに足るエネルギーを生成する。
下から光の連打が来る。眼前で弾け、後方に流れる飛沫が粘着くように遅く見える。
耳に響く鼓動の音がやけにうるさい。主砲のチャージ完了を知らせる音が遠くに聞こえた。
4機の竜の口が開く。口腔内の牙を模した磁場調整器で最終照準補正が行われる。
戦艦の主砲と見紛うほどの光量が溢れた。
4つの光柱が船体を貫く。
抵抗も許されず船体中央を撃ち抜かれ、前後に断裂し、古びた銛を打ち出すこと無く巡洋艦は完全に沈黙した。
防空網をこじ開けた我が隊に先導され、本隊が戦艦群に取り付く。
戦艦の主砲も物ともせず、最良の角度を取り、現代の星海の女王にその主砲を叩きつける。
上下から機竜の主砲が放たれ、戦艦に突き刺さっていく。
たった一度の交差で、かつて最強を誇ったその殆どが無力化され、鉄屑となった。
『第一目標達成。引き続き、敵揚陸部隊と思わしき集団を叩く。』
戦域を離脱し、次なる目標へ進行しようとしていた僕達にそれは届いた。
『戦闘停止信号・・・』
誰かが呟いた声が耳に届い時、遠くなっていた自分の感覚が、ようやく元に戻ったように感じた.
まいかい1000字程度の短いものですが、意外と書けないものです。