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機械の竜は宇宙を行く  作者: 機械龍太郎
第一章 秋津洲戦役
8/15

第八話 交戦

戦闘開始から10分。

初期砲撃の24発は8発が迎撃され4発が回避された。

当たった数は半数の12発。



観測された戦果は少なくとも戦艦1隻轟沈、2隻中破。重巡洋艦2隻撃沈。


コレがうちの艦隊だったら撤退すべき程の被害だが、向こうさんにとってはかすり傷程度のダメージだろう。


敵が回避の為に陣形を崩している間に艦艇群は接近。

砲戦を開始した。







先に発艦していた小隊の3機と合流する。


発艦していた順に先頭から並び、菱形の隊形をとる。


そして菱形を5つ、上から見たら逆∨字になるようにして集合。5小隊からなる変則的なデルタ編隊を形成。



2つの陣が上下に別れる。


『アルファ01より小隊各機へ。予定通り2手に別れ、主戦域を迂回。上下より敵艦隊を挟撃した後、揚陸部隊と思われる敵輸送艦を叩く。』


『『『了解』』』



アルファ01、中隊長機からの通信どおり、機竜隊は二手に分かれ戦艦が砲撃している宙域を迂回する。

上の小隊はアルファからエコーまで。

僕達の小隊はチャーリー。∨字の先頭。切り込み役だ。





正面から突っ込んでも恐らく機竜に被害はないだろうが、味方の砲撃が機竜のフィールドによって軌道をずらされるのはよろしくない。


現在敵は要塞砲を回避するために陣形を崩しているのに対し、我々は統制した射撃を行えるのだから、それを邪魔をする必要はない。









------------------



眼下に広がる空はビームの煌めきで輝いていた。

我々が接近する間に秋津洲からの砲撃が2度行われ、敵の再編成を阻止。 


要塞砲と防衛艦隊による秩序だった砲撃、反応弾を抱えた突撃艇の肉薄雷撃により戦艦17、重巡洋艦18、軽巡洋艦36まで数を削っていた。


一方こちらに残るは戦艦5、重巡洋艦11、突撃艇28。


損耗比率で言えば有利に立っているように見えるが、敵も陣形を立て直し、統制が取れつつある。このままでは数に押され、文字通り全滅するだろう。



そうさせない為に、竜が行く。



『アルファ04より中隊各機へ。前方から複数の熱源を探知。数は48、2個中隊か。人機が迎撃に上がって来たようだ。』



ユニットの一部を換装し、索敵、観測機能を高めた早期警戒仕様のアルファ04より警告が上がる。



『ここで足を止めるわけにはいかない。チャーリーズ、露払いを頼む。』




「チャーリー01了解。先行して敵を叩く。これが機竜の初陣だ。瞬く間に蹴散らすぞ!!」

『チャーリー02了解!』

『チャーリー03了解!』

『チャーリー04了解!』



飛ばした檄に、高揚した声が返ってくる。皆初めての実戦で興奮しているようだ。

僕自身、声が震えていたかもしれない。



僕の隊が速度を上げ中隊から離れていく。



逆に相対速度により、敵は一気に近づいて来る。8mはあろうかという巨人の姿が、全周囲モニターにハッキリと映る。


宇宙空間での活動支援用強化外骨格を祖先にもつ巨大な人型機動兵器だ。


バッテリーで稼働し、小回りの効く機動性と弾倉式だが強力なビームライフルにより、突撃艇や駆逐艦、攻撃機などへの迎撃機として十分な戦力である。





だが、竜を倒すには無力だ。







「全機抜爪。背部装甲展開。」



鋼の爪が抜かれ、背ビレが展開する。


「射撃管制は01が行う。斉射後、近接戦闘を行う。」



4機分の火力を一気に叩きつけるべく、小隊のセンサーだけでなくアルファ04の観測データまで使い、複数の敵機に目標設定(マルチロックオン)


1対7門の背部副砲が4機分。合計56の無砲塔砲が放たれる。



散開し、回避出来た敵機は27機。 

21機も撃墜できた上、幸運なことに隊長機と思われる機体まで撃破できた。


2射目分の粒子が溜まるより、白兵距離まで接近するほうが早い。





敵が射撃を開始する。


敵も最初に指揮官機を潰そうというのだろう。銃口が一斉に僕を見る。



薄紫色の飛沫があがる。竜の皮膚まで届いたものは一つとして存在しない。



そして、こちらの爪は巨人の皮膚を容易く引き裂く。


鋼鉄の爪が高速振動による唸り声を発する。




「全機散開、目標自由!!」

『『『了解!』』』



威勢の良い返事とともに竜が巨人に襲いかかる。

人機の機動力は厄介だが、射撃の為に一時的にでも足を緩めた今は、僕達のほうが早い。



チャーリー02が敵が密集したエリアへ突撃する。正面に捉えた敵を一閃。抵抗も許さず、上下に別れる。

そして振るった腕を中心に、機体をしならせ回転。長い胴体をムチのように使い、周囲の機体を薙ぎ払う。


02と03が連携して敵を追い込む。何時か資料映像でみたイワシの群れに襲いかかるマグロのようだ。

2機で包み込むように機動し、外周から確実に削っていく。


それら小隊の動きを観測、記録しながら、僕は機竜の加速力と四肢を使った重心移動を活かし、ヒット・アンド・アウェイを繰り返して撃破数を伸ばす。



中隊が到着した時には進軍を阻むものは一人としていなくなっていた。



撃破記録


共同撃墜21機

チャーリー03,04共同撃墜4機


単独記録

チャーリー01、6機

同02、8機

同03、6機

同04、3機



被撃破記録

損害無し





そしてついに、竜は艦隊を望む。

故郷を侵略せんとする夷狄に、粒子の咆哮を轟かす。












粒子砲に対し、機竜は無敵だと分かっていても、実際に銃口を向けられるとひやりとする。 


股間が冷えてきた。


大人用おむつを支給品に入れた先人に心からの感謝を。

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