第七話 開戦
西暦2678年1月3日
宋胡は扶桑に対し、惑星開放の為の限定戦争の宣戦布告を宣言。布告と同時に扶桑勢力圏外縁に待機していたNo139惑星攻略艦隊の進撃を開始。
扶桑はNo139防衛艦隊の迎撃予定宙域への集結を開始。機竜第一部隊は輸送艦への搭載を開始。
同年1月5日
扶桑は迎撃宙域への展開を完了。戦艦6隻、重巡洋艦12隻、突撃艇40隻、機竜輸送艦10隻からなる混成部隊である。
同年1月8日 午前4時
予測どおり、宋胡艦隊の迎撃宙域への到着を確認。戦艦21隻、重巡洋艦25隻、軽巡洋艦40隻、攻撃機搭載型輸送艦25隻を確認。
午前4時10分
搭載機竜の発艦を開始。
午前4時20分
コロニー秋津洲の要塞砲による第一次砲撃を開始。防衛艦隊による光学終端誘導が可能な大型実体弾24発、高出力JM粒子砲40発を発射。
ここに秋津洲防衛戦が開戦した。
輸送艦のハッチから見える空を、機竜の胴体と同じほどの太さもある粒子砲が薄紫色の尾を引きながら群れをなして飛んでいった。
秋津洲コロニーからの準備砲撃だ。
粒子砲の弾速でもコロニーから敵艦隊まで約15分。
基本的に直進しかできない粒子砲は、今の艦船の機動力なら砲撃を感知してから5分もあれば回避可能だ。
故に、粒子砲による超長距離射撃は敵に対する直接的な有効打にはなりえない。
だがしかし、確実に有効的である。
光量の大きい粒子砲に隠れて放たれた24の実体弾。光量は0であり、特殊塗料により電磁的、熱量的な目にも透明に映る不可視の槍こそが本命。
無誘導にて敵の懐深くまで潜り込み、粒子砲を回避するため足並みが乱れた艦隊へ、内部に仕込んだパルスジェットエンジンと艦隊からの光学終末誘導という古臭い牙で食らいつく枯れた猟犬だ。
黒く塗られた弾体を宇宙空間で見るのは至難の業だが、粒子砲が先程通ったということは、実体弾の弾着まであと24分ほどか。
敵艦隊と防衛艦隊の距離は400km。双方ともにまだ戦艦の有効射程圏外だ。4時26分
機竜隊の発進は30機が完了したところだ。
残りは各艦1機ずつ。4時30分には全機展開完了する予定だ。
僕の小隊では隊長機である僕が最後だ。
計器を確認する。全計器異常なし。推進剤充填完了。通信機感度良好。
発進準備完了を管制官に伝える。
管制官が「了解。発艦開始。」と短く告げる。
体中の体液が後ろに引かれる感覚。カタパルトのレールの上を鋼鉄の竜が加速していく。
全天モニターの視界の下に、終点が近づく。
爪の固定ロックが外れる。
トンネルのような輸送機のハッチを抜ける。
星の海が広がる。
機械の竜は宇宙を行く。