第三話
「まあ今日明日に戦争が起こるわけではない、とだけは言っておこう。」
「そんなことはその辺の主婦でも分かりますよ。オレたちは軍人見習いとして、その先が知りたいんです。」
「うーん、まあコレくらいはすぐに分かることだし、言ってもいいか。」
お、何か教えてくれるらしい。
「昨日の夜、宋胡の国営コロニー建設企業に注文があったそうだ。軍港設備を装備した、軍事コロニーの建設だそうだ。139付近に建設し、出城にするつもりだろう」
「大事じゃないですか!?」 自分でも予想してなかった大ニュースに大きな声が出た。
「それ、オレたちに教えてよかったんですか?」 前川が対象的に声を小さくして尋ねた。
「どうせもうちょいすれば向こうの国の方が大々的に報道するだろうよ。
『旧来より我々の土地であった星を実行支配したまま、要求を受け付けない彼の国に対して政治指導部は怒りの鉄槌を下すため、軍事コロニーの建設を公社に注文した。これは正義の戦いである』
とかなんとか言いながらな。」
「まあそうでしょうけど… あの国も無茶苦茶するなぁ。コッチを向いてほしくないよ。」
「もちろん苦情は入れるし、建設をやめるよう要求するだろうが、焼け石に水だろうな。」
「でしょうねー。これが大昔だったら、そんな勝手をすれば世界中から非難が飛んできたんでしょうけど、今じゃ無理だろうなぁ。」
人類が母星にいた頃にあった、国と国とが互いに監視し合う国連というシステムが人類圏の拡大に伴い相互監視が難しくなり形骸化した今、世界はシンプルになった。
つまり、弱肉強食だ。
そんな時代だからこそ、暴力的な国に目を付けられたくはなかったが、どうしようもないらしい。
「じゃあ今日明日に戦争は起きないけど・・・」
「ああ、そう遠くない未来には確実に起こるだろう。2年か、3年後だな。」
「僕らが卒業してすぐぐらいですか。嫌だなぁ。戦力差で普通に負けるんじゃないですか?」
「このままだとそうだろう。だが、機竜と、そのパイロットの数が揃えばそうではなくなるだろう。期待しているぞ。」
割りと本気な目をして先輩はそういった。
余命通告を受けたような気分で食べる食事は、それでも美味しかった。ちなみに食事は個室で焼くタイプのお好み焼きだった。