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とある日
「急がなきゃー。学校遅れるー!」
時刻は8時を過ぎている。高校生になっても寝坊はだらしがない。
私は全力で自転車をこぐ。
「よし、あの角を曲がれば下り坂だ。」
そこで油断したのがいけなかったのだろう。私は止まらずに角を曲がった。
「あっ・・・・・・!」
時間が進むのがスローになる。目の前まで迫っているトラック。運転手の驚いた顔がみえた。これだけ近くでは避けるのも無理だろう。
(私死ぬのかな。ここで死ぬならあの人に告白とかしとけばよかった。)
迫り来るトラックを眺めながら私はそんなことを考えていた。
いろいろな人の顔が浮かんでくる。
お母さん、お父さん、友達、先生、好きだったあの人。
思い出もたくさん浮かんでくる。
初めて連れて行ってもらった海。
小学校に入学した日、卒業した日。
友達と遊んだ事、喧嘩した事。
中学、高校、日常の些細なことまで浮かんできた。
(これが死に際に見るって言う走馬灯のようなものなのかな・・・。やっぱり死ぬんだ私。)
トラックにぶつかった瞬間、一瞬だけ激痛が走り私の意識はそこで途切れた。