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みずたまシリーズ

みずたまポップ

作者: 梅津 咲火
掲載日:2014/06/16

 遅くなりました!

 ようやっと完成をしましたので、どうぞお読みください。


 

「もらった」

「なに? ……チケット? 映画?」


 佐上にチケットをわたす。サバンナにいるような動物の写真が載ってるやつ。


 たしか、最近公開し始めた映画の、だったと思う。よくわからない。

 部活のテニスの休憩時間に女子がくれた。なにかその子、モゴモゴしてたけど、そんなに重要じゃなかったはず。『くれるの?』って聞いたら、すごい勢いで頷いてた。その人、顔が赤かったけど、風邪?

 二枚もくれるなんて、いい人だった。


 ちょうどいいから、佐上を誘う。

 佐上と行けたら、すごく嬉しいから。


「うん。行こ」

「来週? 瑞木は部活あるんじゃないの?」


 言い忘れた。俺は瑞木みずき、瑞木(ろく)。彼女、佐上(ひろ)の友達以上、だと思ってる。


 不思議そうにキョトンとしてる佐上は可愛い。それに、自分の予定より俺のを気にしてくれるくらい、佐上は優しい。


「ない。その日は休み。顧問の出張」

「へーめずらしー。うん、わかった。いいよ」


 佐上がうなずく。嬉しい。これで、休みの日も会える。


「ッブ! しっぽ振ってる……!」

「? しっぽ?」


 しっぽなんて生えてない。たまに佐上は、よくわからないことを言う。だけど、佐上が楽しそうに笑うから、問題ない。



 ***



 駅前の集合場所に行くと、もう佐上がいた。

 ケイタイの液晶を見てたり、髪を触る佐上をずっと見てたい。けど、バレたら呆れられるのもわかってる。それに、俺も早く話しかけたいから、佐上にすぐに近寄った。


「佐上」

「あ、瑞木」


 にっこりと笑う佐上は可愛い。学校の外でずっといるのなんて初めてだから、ワクワクする。


「……うーん、これの横に立つのかー……」

「? 佐上?」


 腕を組んでうなって、どうした?

 俺の隣にいるの、嫌?


「俺の格好……嫌い?」

「は? あ、いやいや、そうじゃないから。ただ、ちょっと、独り占めしてていいものかとね」


 ? そんなのむしろ。


「すればいい。佐上なら、大歓迎」

「ッブ! 大歓迎って……なんか違うでしょ」


 そう? 俺は本当にそう思うけど。

 それに。


「その代わり、佐上を俺は独り占めする」

「は? ……いやいや、私を独り占めしても、ねぇ?」


 困惑してるけど、そんな佐上も可愛い。ギュッてしたいくらい。


 首を傾げて聞く。そうすれば佐上は大抵のことは笑って聞いてくれるから。


「ダメ?」

「ブッ! フフ……! だから、それ、反則だって」


 笑いが収まるまで待つ。佐上は笑い始めると止まらない。

 でも、それだけは物足りないから。


「……行こ」


 手を捕まえて指をからめる。こういうの、女の子は憧れるものだって、クラスの男子達が教えてくれた。日曜日佐上とデートってことを聞いたら、色々伝授してくれた。いい人達。


「えっと、瑞木? これって恋人つなぎってやつじゃ……?」

「? なに、佐上」


 手を困ったように見る佐上。笑顔も好きだったから、残念。

 でも、佐上が言いたいことがよくわからない。これってデートでは当たり前のつなぎ方って聞いた。

 ダメ?


「……ま、いいか」

「? うん」


 佐上が納得したのなら、問題ない。



 ***



 手をつないで、映画の売り場に行く。日曜日で人が多いから、手をつないで一石二鳥。

 売り場でチケットをみせて、座席と交換する。

 ちょうどいいところが空いててよかった。でも、なぜか佐上が少し渋ってたのがわからない。「見やすいけど……」って言ってた。


 席にいったん荷物を置いて、購買に行くことにした。


「瑞木は何か買うの?」

「うん、ポップコーン」

「ッフッ! 予想通り……!」


 佐上はさっきの苦い顔だったのに、嬉しそうに笑ってる。よかった。佐上が嫌なことは、嫌だ。


「佐上は?」

「あ、私は飲み物だけで」

「? そう?」


 きっぱりと言う佐上は迷いがない。「カロリーが……」って呟いてたけど、充分やせてる佐上は気にする必要がないと思う。

 でも一度前にそう言ったら、無表情で怒られたから言わない。触れちゃいけないことだってある。


 会計を別々に済まして、ポップコーンと飲み物を持つ。両手がふさがってなかったら佐上のも持っていたかったけど、できそうにない。


「ごめん、持てない」

「え? ……ッブ! しっぽ垂れてる……!」


 いきなり噴き出した。……佐上、俺謝ってるのに。

 ジトっと眺めてると、さすがに悪いって思ったみたいで佐上は咳払いを一つした。


「いや、べつにいいよ。自分で持てるのは持つし」

「……うん、わかった」


 普通、デートでは男がリードするものだってクラスの男子に教えてもらったんだけど。

 佐上は優しい。

 でも、俺も佐上に優しくしたいから、これからは気をつける。


「……ところで瑞木、ポップコーンって何味?」


 佐上? どうしてそんなこと?


「塩キャラメル」

「ブハッ! し、お……キャラ、メル……!」


 そんなに面白いこと、言った覚えない。

 佐上のツボは時々わからない。



 席に戻ると、劇場内の他の座席は人が埋まり始めてた。でもそこまで多くない。ドキュメンタリーの内容だから?


「……瑞木。あのさ、この席、やっぱり……近くない?」

「? ちょうどいい」


 佐上がよく見えていい。並んで座ってて、一緒に同じのを見てるって感じるのもいい。


 ソファーに座ってるから、間に手すりがない。くっついてようやく収まるこの幅が原因。少し動くと佐上の手とぶつかるのが、楽しくて嬉しい。

 自然と口が緩む。佐上とこんなに密着するの、好き。


「……そんな喜んでると、文句言えないって……」

「佐上?」


 佐上がうつむいてる。気分、悪い?

 それとも……照れてる?


 覗き込もうとしたのに、すぐに佐上が顔を上げた。……残念。


「……ううん! なんでも! それより、どんな映画だっけ?」

「? うん。たしか、自然満載」

「いや、あってる。あってるけど、端的すぎ」


 話題をずらそうとしてる佐上に気付いてた。モヤモヤするけど、我慢。佐上が、拒んでるから。 


 膝の上にのせた容器からポップコーンを一つ味見。……ん、おいしい。

 佐上にも、食べてほしい。


「佐上」

「ん? なに」

「口」

「口って……え、ちょ、まさか」


 困ってる佐上が頷くまで、ポップコーンをつかんだまま待つ。


 待つ。そうすれば、佐上はきっと折れるから。


「なに、瑞木。その目」

「待ってる」

「いや、それはわかる。わかりたくないけど。で、なに待ち?」

「佐上待ち」

「ええー……」


 仕方ない。俺から佐上にあげたいのはゆずれない。


「ブブフ……ッ! 遊び待ちの犬みたく滅茶苦茶目、輝かせてるし。……ンン、ゴホン。ま、いいよ」


 犬って何? でも、佐上が楽しそうで、了承もしてくれたから、気にしないことにする。


「ほら」

「あーん」

「プフ! アーンって!」


 ? そうしたほうが、佐上に食べさせやすいから。


 笑ってる佐上の口の中の舌の上に一つ置く。指を引き抜くときに、唇に触った。

 やわらかい。ふにふにしてた。

 もっと触りたかったけど、耐えた。もう一回許すと、ずっと触ってたくなるから。自重。


「……!」

「佐上、顔真っ赤」


 かわいい。イチゴみたいでおいしそう。

 頭なでたくなっても我慢するなんて、俺、偉い。


「~~っみ、瑞木!」

「ん、ごめん」


 ワザとじゃ、ない。……半分は。 


 でも正直に言うと、怒られるのはわかってるから内緒。



***



「……」

「えーっと」

「……」

「み、瑞木?」

「…………」

「ね、ねぇ、瑞木ってば」


 ……? っ!


「佐上?」

「あ、うん」


 ? なんで腕をつかんで? 嬉しいけど。


「なに?」

「……いや、うん。それを言いたいのはこっちだけど」

「??」


 言いたいこと、よくわからない。


 でも、どうして映画館の外に俺はいる?


「映画は?」

「あー、うん。終わったよ」

「……」


 内容おぼえてない。せっかく佐上と一緒だったのに。


「どういうの?」

「うーん、思い出さなくていいよ。なんというか、かなり独創的だったから」

「独創的?」

「そうそう。……っていうか、ライオンの背中からなんで触手が出てきて、地球戦争ドンパチって……」

「触手?」


 ……っ? なんか、頭痛い。


「なんでもない、なんでもない」

「……でも」

「気にしないで! 忘れて、うん!」


 力強く佐上が言うから頷いた。佐上がそんなに言うから、きっとなにか理由がある。俺には思い出す必要がないこと。


「わかった」

「うんうん! それがいいって!」

「うん」


 佐上が頭なでてくれる。嬉しい。

 優しくサラッと触られると、安心する。


「それでこの後、なんだけど……ちょっと帰っていい?」

「! え……」


 なんで。もしかして、俺、気を失ってたとき、なにかした? それとも、映画、おぼえてなかったせい?


 不安。だけど、すぐに佐上は首を振った。


「いや、瑞木のせいじゃないから。なんというか……アレ見た後に、遊ぶ気になれないっていうか……」

「内容、悲しかった?」

「いや、悲しくてじゃないよ。……ある意味、悲しかったけど。予告編詐欺すぎるって」


 シリアスだったから、気分のらないわけじゃない?


 佐上は帰りたがってるけど……でも、まだ俺、離れたくない。映画の間、ろくに佐上のこと見れなかった。

 映画の間、手をつなごうと思ってたのに。台無し。


 佐上は、もっと一緒にいたくない?

 俺は、全然足りない。それなのに。


 佐上は俺のこと、そこまで好きじゃない?


 だから、いつも俺のこと、気付かないふり?


「……佐上」

「なに、瑞木」


 佐上が笑う。それなのに、今は嬉しくない。

 困らせたくない。でも、俺は、我慢できそうにない。


 現に、口が勝手に動く。


「帰したくない」

「ブフッ!? そ、それって女側が言うセリフでしょ。オマケに、誤解招くし」


 また笑って誤魔化そうとする佐上を、腕の中に閉じ込める。


「え、ちょ! 瑞木、瑞木ってば!」

「なに」

「なにって……離してってば」

「嫌」


 身じろぎするけど、無駄。絶対に、離さない。

 抱きしめる力を少し強くする。このまま逃げられたら、今のことをなかったことにしそう。


「え、ええー? 急にどうしたの?」

「……急じゃない」


 いつもいつも、言いたかった。でも、佐上が話題にするのを嫌がってたから我慢してた。

 それも、もう無理。


「佐上が避けるから」

「は? いや、避けてないって。現に今くっついてるでしょ」


 そういうことじゃない。

 佐上はわかってるはず。俺がなにを言おうとしてるのか。それを、なかったことにしようとしてるのは気づいてる。



 ――でも、ごめん。これは、佐上の言うことでも聞けない。



 抵抗を止めた佐上の肩をつかんで、目を合わせた。


「佐上、好き」

「……」

「好き、大好き」


 口をつぐんだ佐上が目をさまよわせる。でも、その顔全体が赤くなってるのは隠しきれてない。


 佐上、俺、しっかり待ったよね? だから、そろそろ、いい?


「俺のに、なって」

「……」


 ハクハクと口を動かして、言葉を必死に探してる佐上を待ってるだけなのに、時間がゆっくり流れすぎてるみたいに感じる。


「……こんなときだけ、動物っぽく見えないなんて。……ズルイ」

「……」


 佐上が唇をとがらせて文句を言う。


「私も」

「?」

「私も、かも……」

「! 佐上!」


 佐上が、佐上が「私も」って言ってくれた!

 すごく、すごく嬉しい!


 ギュッと抱きしめなおす。

 あったかくてフワフワな佐上。やわらかいにおいがして、やっと手に入れたんだなって思う。


「あーもー……嬉しいのはわかったから、抱きしめるのは勘弁して」

「ダメ!」


 ずっとずっと、好きなのを我慢してたから、今更止めるのはできない。


 それに、佐上だって恥ずかしいだけで、本当は嫌じゃないってことわかるから。


「佐上、大好き!」

「……うん」


 佐上の全てにドキドキして、なにもかもを独り占めしたくなる。



 ――初めて会ったあの時から、俺は恋した。



 怖いって言われる俺の顔に、初対面で笑いかけてくれた佐上。ためらいなく手を出してくれた、優しい人。


 佐上が笑ってくれる、それだけで色んな感情が次々に弾ける。



 だから、ね。もっと笑って。

 これからも、俺に向かって。



 ***



「佐上、佐上!」

「……瑞木」

「?」


 首を傾げた俺の耳に、佐上が顔を寄せる。


「あのさ、瑞木。私も――」


 佐上が言ってくれた言葉は秘密。だって、それは、俺だけのものだから。


 と、いうわけで、完結、です!

 おめでとう瑞木!


 ちなみに二人が見ていた映画の集客率が低かったのは、作品が微妙でB級ならぬC級だったからです。


 今まで読んでくださった、特に感想・評価を下さった方々、本当にありがとうございます。無事、この短編を終わらせよう(それも1カ月で!)という気力が湧いたのは、一重に皆さまのおかげです。

 また今後、他の作品も読んでくだされば、非常に嬉しく思います。


 それでは。

 読んでくださったあなたに、最大限の感謝を。

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― 新着の感想 ―
[一言] サンタくんシリーズに続き、どちらに萌えるか悩みます。
2014/06/24 21:52 退会済み
管理
[良い点] あ、甘いっ! 甘いですっ! やばい幸せすぎて鼻血ふきそう・・・←(殴 どうも。 今回も読ませていただきました、時雨です。 瑞木視点・・・いいですね~ ますます忠犬にしか見えなく…
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