奇妙な旅人-05
覚えているのはそれだけだった。
気づいた時には、リィースに拾われ、この“庭”に居たのだ。
ルシャスとリリティアがどうなったのかさえ解らない。そして今後の自分の身の振り方さえ、遠矢には解らないのだった。
解っている事は、シュオールという国に向かおうとしてい事だけだ。
もしたしたなら、彼らもそこへ向かっているかも知れない――と、そう遠矢は思った。
へえ――と言ったきり、リィースは何を考えているのか解らない瞳で、中央に焚かれた炎を見つめている。
形の良い唇が、少女に膝を貸す獣人の名を呼んだ。
「リュゼ――」
主の声に、心得たように荷物袋の中から竪琴を取り出す。
ポロン――と爪弾かれた琴音に、焚き火を囲んでいた旅人達の視線が向けられた。
「空には知識と寡黙の月――。理の神セルセラに敬意を表し、創世の歌を捧ぐ――」
リィースが高くもなく低くもない声音で厳かに告げると、リュゼが琴を爪弾く。
高く澄んだ音が夜の砂漠を渡り、砂音と共に人々を幻想の中へと誘った。
“ファサンドラ”をご損じか?
その歌は、そんな言葉から始まった――。
“ファサンドラ”をご損じか?
虚空を漂う 創世の大陸を――
“エントゥリアス”をご損じか?
神が作りし古の都を――
栄えし 神の都“エントゥリアス”――
天空に在りし憧れの都よ――
背に翼を抱きし神々は
天空に大陸を造り住まわれた
神の都へ向かうは 空を浮かぶ光の船――
虹色の魚舞う 美しき川を渡り
人々は天高く聳ゆし 白亜の塔を目指さん
輝きし 神の都“エントゥリアス”――
歪め伝えられし創世の都――
数千年世の時により
人は真実を忘れ去らん――
おお――
遙かなる“エントゥリアス”よ
徒人の憧れし 神の都よ――
其を呪いしは一人の魔導士――
暗黒を操る 異端の魔導士――
其は闇の力を振るい 異界より魔物を呼び寄せん
其を封じしは 白銀の騎士
その力を持ちて 闇を封じ世界を救わん
おお輝きし繁栄の都よ――
“エントゥリアス”を守りし 白銀の騎士よ――
汝は今も 闇と共に異界の玉座に座わすのか――
寄せては返す波のように、音と声が響き、まるで現実のように謳われた光景が浮かんでは消えた。
魔物の群れと戦う人々――。
やがて光と共に世界は闇の中へと消えていった。
暗く冷たい闇の玉座に、白き鎧の騎士だけを残して……。
ほう――と、旅人達が吐息を零す。
歌い終わったリィースが、一つ吐息をついた。
「――随分と長く生きてきたが、忘れ歪められた創世の歌を歌うのは始めてた」
遠矢も、映画を見たかのように吐息をつく。
「これは、お前の為の歌だ――」
そう言って、リィースは遠矢を見やった。
取りあえずのUPです。
あちこち、後日直します。




