奇妙な旅人-04
覚えているのは……。
ルントの村に入った途端、空気の壁を切り裂くかのようにして突如空間から現れた、赤い体毛の魔物達に襲われた――という事だけであった。
まるで、遠矢達がその村にやってくるのを知っていたかのように、魔物達はいきなり現れ襲いかかってきたのだ。
それに襲いかかられた時、遠矢は呆然と魔物を見つめるだけで逃げる事すらできなかった。
「トーヤ――ッ!!」
そんな彼を脇へ突き飛ばすようにして、リリティアが呪文を唱える。
血と水と――
この世にありし盟約とに縛られし者達よ!
我が声に応え ここに出でよ――!
ムエルテ・モルテ・モルス――ッ
言葉と共に地表がボコボコと盛り上がり、土をかき分けて出てきたのは、骨となった指先であった。
やがて、骨だけになった手は土をかきわけ、身体をすべて地上へと引き出す。
現れたのは、髑髏の眼に赤い灯火を点した、死人であった。
「ギャウアアア――ッッ」
一声鳴くと、死者は辺りの土を吸い込み皮膚を再生してゆく――。
それはまるで悪い夢を見ているかのような光景であった。
「さて。死霊使いの技、とくとご覧にいれましょうか」
何十体と地底から蘇った死者が、リリティアの言葉と共に一斉に魔物へと襲いかかる。
思わず後退った遠矢の腕を、力強い腕が引き寄せた。
振り返ったそこに居たのは、剣を抜いた闇色の騎士――。
「下がっていろ遠矢。すぐに片付ける」
言い様、ルシャスは一気に敵へと向けて走り出した。
剣の重さをものともせず、軽々と宙へ舞う。
身体を捻りながら繰り出された剣は、その一降りで四体の敵を切り捨てた。
青黒い血が、霧のようになって辺りに散る。
「ルシャス様! 毒ですわ、浴びないようにお気をつけになって!!」
「解っているっ」
リリティアの使役する死者が敵を噛み千切り、ルシャスの剣が魔物の首と胴を裁った。
敵の数が半分以上減ったと思った時、遠矢は足下に浮かび上がる赤い文様に気づいた。
「――ッ」
「ダメだよぉ、こんな隅に隠れているなんて。お前を捕まえる為にわざわざここへと来たんだからなぁ」
奇妙に間延びした男の声が耳元でそう囁く。
振り返った先に居たのは、この村の出身だと行った男の姿だった。
赤い――血のように赤い瞳が笑っていた。
乱ぐい歯の間だから覗く紫色の長い舌が、涎を垂らしながら唇を嘗める。
「ルシャス――ッッ!!!!」
悲鳴にも似た掠れ声で助けを求めれば、振り返ったルシャスが周りの敵を薙ぎ払い、剣を構えて走ってくる。
横殴りに振られた剣先から、黒い光が放たれる。
それは黒い獣へと代わり、遠矢の隣の男へと襲いかかった。
「グウオアァァァァッ――!」
黒い獣の牙が男の首を噛み切る。
緑色の血が辺りに散った――。
これで安心かと思った時、ズズッ――と遠矢の足下が地面の文様の中へと沈み込んだ。
「――――ッ!?」
「トーヤ――ッ!」
伸ばされたルシャスの手の指先に触れた瞬間、遠矢の身体は一気に文様の中へと取り込まれていった。
取りあえずのアップです。
あちこち、後日直します。




