いつもの朝
五年前のことを夢に見た。
この夢はいつも同じところで始まって終わる。
出会って五年が経つ今では、もうこの夢は飽きるほど見た。
あくびをしながら身を起こす。
冬の初めとはいえ、暖炉にどんどん火を点けないと凍り付いてしまうようなこの時期は、朝起きることがつらい。
それでも俺は5年間同じ時刻に――朝の6時に起きる。
屋敷中の部屋の暖炉に薪を入れては火を点け、薪を入れては火を点ける。
俺と『アイツ』しか住んでいないのに無駄に馬鹿でかい屋敷だから時間がかかってしょうがない。
『アイツ』の部屋に着くころにはもう七時になっている。
コンコン、と一応軽くノックをして
「入りますよ」
とやる気のない声で一応確認をとって中へ入る。
また暖炉に火を灯してからベッドへ近寄る。
「ご主人様、ベルトミー様、起きてください」
まずは声だけ。
「ベルトミー様」
「う…ん」
次は体をゆする。
「ベルトミー様」
ゆさゆさ
「ベルトミー様」
ゆさゆさっ
「ベル様」
ゆさっゆさっ
「ベル様」
ゆっさゆっさ
「・・・・・・」
ちょっと間をおいてからベルの耳に口を近づけ、
「ベル!起きろって言ってんだろうがあああ!!」
思いっきり怒鳴って
ばちこーん!
「いったあああああ!!」
頭を叩く。渾身の力で。
痛みに悶えてベッドをごろごろしているベルの横で俺は
「毎日毎日ほんとに懲りないな…」
とつぶやいた。