プロローグ
初めまして泡幸です。
最初にもうぶっちゃけますが、これはBL小説です。しかも、結構きわどいとこまで行きます。行く予定です。
ですので、あ、だめだな、と思われた方、即リターンして見なかったことにしようなかったことにしよう、と自分に暗示かけてください。
出会いは唐突だった。
俺は捨て子だった。
捨てられた時の記憶が一番古い。
春の暖かい陽気。
誰かの涙。
俺に謝る悲痛な声。
唯一のカアサンの記憶。
ある雨の晩、道端でうずくまって
その記憶を何度もリピートしていた。
唯一のカアサンの記憶は
唯一の温かい記憶だから。
その時、けたたましい音が、声があたりに響いた。
ヒヒーン・・・ッ!!
「うわああ…!!」
ガシャンガリギシ…!
顔を上げると、馬車の馬が泥に滑って馬車が粉砕されていた。
慌てて近寄ると、
「う…ん――」
若い男の声が聞こえた。
手がブランと垂れ下がっているのを見つけ、慎重に、けれど急いで引っ張り出す。
左腕を骨折しているようだ。
馬車の残骸から宛て木を適当に選び、その男の服を破いて包帯代わりにする。
骨折をしたあとだから、熱も出てしまうだろう。
雨風を防げるところは
と見回して、森の中へ男を担いで歩いて行った。
木々が集まってあまり濡れていない地面に男をおろした。
今度は火をたく。
長い間の捨て子生活の中で培ってきた技術の一つだ。
だんだんと炎を大きくして
バラバラの木片の中から、あまり濡れていない布を引っ張り出してきて
男の濡れた上着を脱がせて布で体を包む。
上着をどう乾かそうかと思案していると、うめき声が聞こえた。
「う…ここ、は…君は、誰だい…?」
目が覚めたようだ。
「あまり喋るな。今は寝てろ」
そう返事をし終わる前に男は寝入ってしまった。
…いや、きぜつか?
火が消えないように一晩中火の晩をしながら考えた。
…なんで俺はこんなにお人よしなんだ?
結論は出なかった。
明け方、男が目を覚ました。
溜めといた雨水を飲ます。
「雨水だ。ないよりましだろう」
ゴクンとのど仏を動かしながら男は一口水を飲んだ。
「いや、うまい」
少し声がかすれている。風邪をひいてしまったのか。
しかし、そんなことも意に介さず、ところで、と男は俺に顔を向けた。
「君はだれだい?いや不躾で失礼。僕はベルトミー・ロクウェル。この土地の領主」
「…名はない。何年も捨て子だ。忘れた」
そう返答すると、男――ベルトミーは少し目を見開いた。
「…ふむ。そうか。」
そしてしばらく考え込むと、驚きの発言をした。
「それなら僕の執事をしないかい?」
ちょっとまて。
どうしてそうなった。
その過程を説明してほしい。