ヤキモチのちカモネギ
『異世界とりかえばや物語(The change of parallel world)』
この物語の作者は、デニス・ガーランド。王宮恋愛物から、童話までこなすこの作家のことは名前以外、年齢も性別も謎。デニスは男名前だし、文章の運び方とかで何となく男性かなぁとは思うけど、自信はない。
何でて、人気作家の性別が思てたんと違てたというんはネットではホンマにようある話で、ぽろっと
「私、男ですよ」
って言うただけで炎上しかけた人気ネット作家さんもおるし(せやかてその人、花の古い言い回しをPNにしててんで、そんなん女やと思うやん、フツー)、それほどやのうても、それまで頻繁に感想くれた人が同性やと分かった途端、くれんようになったと苦笑してた人もおる。
また、オフ会とかして、バリバリファンタジーとか書いてるから若い娘やと踏んでコナかけとった男の人が、実は思いっきりおばさんやったって分かって、ひっくり返ったってこともあるらしい。
けど、一つだけいえることは、このデニス・ガーランドという人は間違いなく日本人か、日本人を直接知ってる人やということ。何でかって? この『異世界とりかえばや物語』の主人公の名前が『Kotaro』と『Yoshihisa』やし、台詞の中に『SIBUYA』やら『UENO』やら『Makuhari』が出てくんねんもん。名前はオラトリオから遠ざけたからってこともあるけど、渋谷に上野って、モロ東京の地名やん。幕張って、あの幕張〇ッセやろ。
けど、そんな風にして、帰還の手がかりに盛り上がっているあたしに対して、フレンの反応は暗かった。
「縦しんばデニス・ガーランドという男が日本人だったとして、還る方法を知ってるとは言えないぞ。なら何故、こうしてこのオラトリオで書いているのだ。主人公が帰還したというのなら、日本で書くはずではないか。それは帰還したいという彼の願望の現れだろう」
確かに、還られへんからここで書いてると考える方が普通かも知れん。けど、他にも日本人がこのオラトリオにおるんやで。たとえ、帰還方法は分からんでも、どんな状況でトリップしてきたとか、こっちに慣れるまでどんなんやったかとか、いろいろ話したいやん。
それを言うたらフレンは、
「お前はそんなにその男が良いのか!」
と猛然と怒り出す始末。何もそんなこと言うてへんやん。あたしはあんたと結婚したんやし、今更どないしてでも還ろうなんて思てへんから。どうせ大阪に帰っても前の仕事もでけへんやろし、あたしがこっちへきたんと情勢が変わってへんかったら、二十五歳のニートなんて、マジ就活はきっつい。しかし、どーでもええけど、デニスさんってあんたの中では男決定?
「ホント、何考えてんだろうね」
そんで、その話をグチったら、
「チーズが、あまりに嬉しそうにその方のことを話すから、フレンはヤキモチを焼いているだけですわ。
フレンってば、チーズのことに関しては、本当に余裕ないですもの」
と、クレアさんにそう言って笑われた。ヤキモチか……そう言えば今でこそ慣れてあんましせんようになったけど、最初の内は用もないのに、あたしのレクチャーにいっしょについてきたもんなぁ。ほんで、レクチャーされてる騎士に目一杯睨み利かして……
せやな、こんなに愛されてるんやから、もうあんまし日本に戻ること考えん方がええのかもしれん。あたしはフレンの前で、デニスさんの話をするのをやめた。
けど、あたしらが結婚して一年半あまりたった頃……
[電話]のレクチャーもあらかた終わったし、薬草園を完全他人任せにしてるのもなんやから、そろそろ一回メイサに戻ろかと言うてた矢先、ウチの家にとんでもないお客さんがあった。
「すいません、象を見るにはどうしたら良いですか」
その人は、あたしらが、前に象を捕まえたと聞いて、わざわざ遠い北のガッシュタルトという国からやって来たという。
ちなみに象というのは、日本のゾウみたいなんやなくて、マンモス。攻撃的な性格やないけど、あんなデカいもんに踏まれたら一溜まりもない。それを見に来ただけやなんて、あんたどんだけ物好きやねん。そう思たあたしは、その人の続く、
「申し遅れました。私はデニス・ガーランド、ガッシュタルトで細々と物を書いている者です」
という自己紹介に、完全にフリーズしてもうた。
会いたい会いたいって言うてたら、デニスさんの方から、ウチに来たやん!
フレンの場合、ただのヤキモチではないのですが……ま、知らない方が幸せな事も世の中にはありますよね。
そんなところに、火種のデニス登場。いやぁ、閣下(こう呼んでいる理由は次回かその次ぐらいには分かります)やればちゃんと丁寧なしゃべり方できるんじゃん。
(やかましい! お前はさっさと続きを書けば良いのじゃ!! ←相変わらずでかい声……)
しかし閣下、千鶴が言うように、なんぼなんでも一人でゾウ(マンモス)を見に来んのは無謀ですよ。
……って事で、次回。
(追記)
ネット作家の性別年齢事情は、私と物書き仲間との実話です。皆さんもご経験ありませんか。




