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自覚(後編)

「一体、いきなり嫁って何ですか。大体、魔力のないあたしに、魔法使いの嫁なんてムリ……」

母上があまりにも即答だったので、チーズは思わず立ち上がり母上にくってかかるが、母上は逆に、

「チーズちゃん、あなた気づいてないの?」

と、目をまん丸にしてそう返す。

「何がです! オラトリオでは当たり前かもしれませんが、魔力なんて地球人は誰も持っちゃいません」

一応ハンナも俺も彼女に高い魔力があるということは言ってあったが、呪文はまだ一つも教えていない。実感がもてないのだから、そういう発言になるのだろう。

「魔法という概念が地球にはどうもないようなんです」

俺は母上にそうフォローを入れたが、

「そうなの? こんなに魔力持ってるのに?」

こっちはこっちで魔法のない世界など知らないから、それを信じられない。

「魔力があっても、魔道語がなければ術式は組めないでしょうから」

と説明するも、

「じゃぁ、怪我なんかはどうして治すの?」

とチーズに聞く。俺も治癒師として、魔法なしにどうやって直すのか、興味がある。

「あたしは医者でも看護師でもないから分かんないです。分かんないけど、あっちはこっちより機械や道具が発達してると思います」

するとチーズはそう言った。

 なんでも、血管に細い管をつないで、薬湯を全身に行き渡らせて治癒するという、恐ろしい治療もあるそうだ。その管をつなぐために、金属の針を体に突き刺すなど、想像するだけで寒気がする。

 俺は、魔法があるオラトリオに生まれて本当によかったと思った。


 とまれ、 

「同じだけ魔力を持っている者はどこにいても引き合うのよ。それが『天の思し召し』なのよ。世界を超えて引き合うなんて、なんて素敵なんでしょ」

と、うっとりと言う母上。『天の采配』かどうかは未だ判らないが、俺はそういうことにしてでもチーズにこのままオラトリオに、もっと正直に言えば俺の側にいてほしいと思い始めていた。

 けれど、チーズにも彼女のそれまで生きていた世界があるわけで、

「とにかく、あたしはいきなり現れた訳ですし、またいきなり元の世界に戻るかも知れないんです。そんなので結婚なんてできません」

と、言う。あくまでも嫁ではなく弟子として扱えというのは、裏を返せばそれは彼女が何としてでも戻ろうと思っているということに他ならない。それはそうだろう、生まれ育った土地だ、家族もいるだろう。『アクセス』ではそんなそぶりはなかったが、もしかしたら想う奴もいるのかもしれない。

 

 それでも俺は、チーズを帰したくなかった。ああ、完全にヤられている。『天の采配』なんてもうどうでも良い、ただ、人生を共にするのはこいつじゃなきゃイヤだと思うほどに。

「一応婚約者ということで折り合いをつけてくれないか」

俺は、母上に聞こえないようにチーズにこっそりと耳打ちした。それを聞いて彼女は驚いたように俺を見る。

「いや、これ以上母上に無駄な縁談を持ち込ませないためにだ。形だけで良い」

続けて俺はそう言った。

「形だけなら……いいよ」

チーズはやっと頷いた。

 俺はその言葉にホッとすると同時に、帰ることができるのをひた隠しにしてとどまらせようと画策する俺の本心に気づいたら彼女は俺を嫌うだろうかとひどく不安になる。


 だが、チーズが了承したのを見てとると、母上はあっと言う間に準備をして、またその三日後俺たちの婚約披露パーティーを催した。しかも、チーズは並行世界の人間ではなく、グランディールとガッシュタルトの国境の寒村から来たことになっているし、歳も十八歳になっている。実際は二十二歳だという。まぁ、成人はしているとは思っていたが、まさかそこまでいってるとは思わなかった。尚更あちらで婚約者などいなかったのか心配になったが、

「この歳で遅いって言われたくないわよ」

と逆に憤慨されてしまった。

 なんでもあちらでは三〇歳を超えても独り身でいる女性も多いとのこと。大体、成人が二十歳で、なおそれを超えても学業に励んでいる女性がたくさんいると言うのだから驚きだ。あの光る箱やら、奇怪な石版やらを扱うにはそれほどに勉学が必要なのかもしれない。

 重ねて言うが、オラトリオに生まれて本当によかった。


 夜会の席でそんなことを考えていたら、チーズに思いっきり二の腕を捻られた。

「うっ」

いかんいかん、ここは公の場だ。何をする! と思わず怒鳴りたくなる衝動を何とかこらえた。

 捻った本人はと言えば、痛みを与えてるのは自分の方だというのに、痛みがあるような表情をしている。

「どうした」

と問うと、

「ホントに、コレって形だけなんだよね」

と言った。

「ああ、そうだ」

とは返したが、その途端、俺はとんでもないミスを犯してしまったことにようやく気づいたのだった。  

トリップ編ここで終了です。次回からやっと魔法使いの弟子編。


さて、この2人まとまるのかしらんと、作者も不安になってきたよ。


頼む、フレン頑張ってくれ……

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