カンベンして
「ここはアシュレーン王国第二の都市、メイサだ」
あたしが、パニクりながら、ここの場所を聞くと、あたしの下敷きになっていた外人男――フレン・ギィ・ラ・ロッシュ――は平然とそう言うた。
「アシュレーンって何? ヨーロッパにそんな国あったっけ? ああ、そう言えばアフリカにの地名にメイサってあった気が……じゃぁ、ここアフリカ?」
そうか、中東とか北アフリカなら、彫りの深い黒目黒髪の人いっぱおるやろしと、あたしが勝手に納得していると、
「そのヨーロッパとかアフリカとはなんだ。だから言ってるだろ、ここはオラトリオの大地、アシュレーン王国だ」
フレンは不機嫌そうな顔でそう返した。
「オラトリオ、はぁ?」
どこのテーマパークや、それ。けど、鼻を鳴らしたあたしに、
「オラトリオを知らないだと。冗談も休み休み言え」
フレンはニコリともせずにそう言うた。
「それはこっちの台詞だよ。あたしはただ、ミナミのカラオケボックスで歌ってただけなんだからね」
あたしも、フレンを睨みながらそう返す。それを聞いたフレンは目を丸くすると、
「おまえ、by any chance……並行世界から来たのか?」
と言い、by any chanceという単語が分からなかったあたしが取り出した、我がサンヨン電機製の電子辞書を見て完全に目をまん丸にする。
「な、なんだそれは! 何かの武器か」
フレンはそう言って、一歩下がった。やーい、ビビっとる。
「ただの辞書だけど」
「辞書が石版の訳がなかろう。それで高度な術式を組むんだな」
そう抗議するフレンに向かってあたしは、
「そんなこと言ったって辞書だもん。ねえさっきのって、by any chanceで良かった?」
と言いながら、by any chanceと入力する。すると、ひょっとしてという訳がでてきた。
「なんや、ひょっとしてか」
へぇ、こんな言い回しなんやと思たあたしは、そこでやっとそのあとのパラレルワールドという単語に気づく。
「えええええーっ!」
っていうことは、これって今流行の(どこで流行ってるんや、それ)異世界トリップ!
まぁ、大阪からアフリカに一瞬で飛ぶなんてことあり得へんけど、異世界に飛ぶなんてこともっとあり得へんやろ。
もう、こんな冗談カンベンして!
※老婆心ながら、千鶴が大阪弁でつぶやく以外は英語で話してます。
このノリ、疲れる。作者の方がカンベンして欲しいです。
ちなみに、千鶴は短大卒で、サンヨン電機に入社、2年目です。