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1 追跡者

 首都ラナケスの中心街に、けたたましいサイレンの音が響く。

 商業区域のビル群に黒煙があがり、緊急車両が次々と転送ポーターから姿を現す。そして車両専用高速チューブを、埋め尽くしていた。

 その下の歩行者専用道路や、ビルの中などから人々が好奇心と不安な顔を浮かべつつ、黒だかりを作る。

 しかし、すぐに消防や警察だけでなく黒い軍車両が集まり始めたことで、野次馬していた市民にも困惑の色が濃くなる。


「下がって下がって! 危険ですから、中に入らない!」

 もうもうと立ち上がる黒煙を中心に警戒区域として封鎖し、人々を誘導し始める警察。

 それを尻目に、黒塗りの装甲車が人々の流れに逆らうように入っていく。


「現場の状況は?」

 黒塗りの車両の中で、モニターを睨み男が通信を交わす。

「潜伏先は確認済みだ。2A8エリア内アナ劇場。逃げ遅れた一般人は確認できるだけで十五人──これから転送もしくは誘導する。リョウ、サポートを頼む」

「了解」

 通信を終えると男は立ち上がり、車両を降りた。



 ビルの屋上に、一人の男が立っていた。

 全身黒のいで立ちに、人目を引く赤色の髪がビル風になびく。その男は、向かいにあるドーム型施設に鋭い視線を落とした。

 腰にはガンベルトを巻き、銃が収められている。肩と胸、肘には薄い軽量型プロテクター。耳元には通信用イヤホンと、両耳には合わせて五つの能力制御リングがはめられている。

 風がひと時止むと、赤一色だと思われた髪は、金に近いブラウンをベースに、幾筋も燃えるような緋色の髪が流れるのが見てとれる。それは一度見た者に、忘れられない印象を与えるであろうものだった。

 男は、分厚い戦闘向きの軍用ブーツでビルの屋根を蹴る。そのままビルから歩き出すように身を乗り出すと、重力に逆らわず降下してゆく。

 目標は黒煙を上げ崩れゆく目前の劇場。


 落下しながら、赤毛の男は一瞬で消えた。


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