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01:決意

 こんにちは、こんばんわ、おはようございます、おやすみなさい。

どうも、秋藤です。よろしくお願いします。

今回からやっと本編です。少し序章くさいと思われるかもしれませんが、あまりそこんとこの境界の認識が足らずすみません。

では、どうぞ、今回も温かい目で見てやってください。よろしくお願いします。

 ガサっ。

 おれは今茂みに潜んでいる。目の前にいる獲物に気づかれないように。

 相手は身長約2メートル。全身黒尽くめ。手足には恐ろしい凶器だ。加えて口にも別の恐ろしい凶器を隠し持っている。

 対するこちらは身長約1メートル50センチ。全身黒をベースにした衣服着用。両手には木刀。長さはだいたい同じで約60センチ。ちなみに手作り。これは確か34代目、"木刀丸ぼくとうまる"。残念ながら、他に武器はない。

 だが、相手はこちらに気づいていない。今の状況は視獲的有利とでも言うのだろうか。まぁ、そんな状態。こんな状況は今まで何度となくあった。

 息を潜める。

 集中。

 今までの奴との戦闘の記憶が甦る。33戦0勝0敗33引き分け……嘘だ、33敗……

 再び集中。

『過去は過去、今日勝てば帳消しだ!』

 相手が向こうを向いた瞬間。

 ザっ!

 両手の木刀を左に引きながら跳び出た。距離はざっと2メートル。相手の後ろ足、左を目掛けて斬り抜く。

 ガンっ!

 ヒット。斬り抜いた力の流れ、言わば遠心力で体を回転。相手に背後を獲らせない。木刀を構える。

 相手は少しひるんだがダメージは薄いようだ。こちらを睨み、唸り、跳びかかってきた。

 この行動は予想の範囲内。だが、スピードは予想以上だった。

「うわぁっ」

 ギリギリのところで躱す、いや躱しきれてはいない。右方向に緊急回避。バランスを崩して、転倒、一回転した。ケガはない。すかさず構えながら状況確認。

 相手の二撃目。さっきと同じ攻撃だ、ただの跳びかかり。

 集中。

 今度は躱す。方向はさっきと同じ、右方向だ。また構える。反撃はまだしない。

 相手も冷静になったのか、こちらを睨むだけでとどまる。

 こちらも相手も間合いを測る。ふたりとも右に旋回。

 睨み合い。

 ジリっ。

 汗が額を、頬を伝う……

 相手の目がカッと力の籠もった目になった。その瞬間跳びかかってくる。

 おれは右手の木刀を回転させ、逆手に持ち、あいての額目掛けて投げつける。と同時に懐に潜り込む。

 ガンっ!

 ヒットした。空中でモロに。相手はひるむ。今回のはダメージ薄とはいかないようだ。

『おっし!』

 左手にあった木刀を両手で持ち、左に引く。そして、ちょうど懐に入り込んだ瞬間。一気に体を回転させるように、まるで背負い投げをしているように、斬り抜く。

 ザンっ!

 あいてが跳びかかってきた力と、今の一撃が上手く合わさったのか、あいては空中で回転。背中から地面に突っ込んだ。

 ダンっ!

 うめき声が聞こえる。そして、動かなくなった。

 決着。

「おっしゃぁ!勝ったぁ!」

 これで、1戦1勝0敗0引き分け。最初の一手が卑怯だとは言わせない。

 なんせ、相手は野生のクマなんだから。

 勝利に酔いしれ、上機嫌で34代目"木刀丸 右近うこん"を探す。

「えっと、確かこの辺に。」

 ガサっと、何者かが動く気配がした。同時に嫌な胸騒ぎも。振り向く。振り向きたくはなかったが、生死に関わってくるので、否応なく、仕方なく。

「えっ――――――」

 そこには約2メートルの巨体があった。目はさっき見ていたものとは比べようもなく、遥かに獰猛どうもう

 振り向いたはいいが、動けない。無理だ。完全に気圧されている。

 唸り声。

 しかし、こちらは悲鳴さえ出ない。

 相手は跳びかかてきた。手に携えている凶器がおれの体に…

 斬っ!

 クマが左に吹っ飛ぶ。

 ザシャぁ――――――

「こんなとこにいたのか。探すのに苦労したぞ。ほれ、大丈夫か?」

 そう言って手を差し出してくれる。

 ジキル・ステイルフォード。漆黒の髪。約180越えの身長。体は細見、といっても頼りないなんて思わせる体つきではない。歳は26歳だそうだ。銀白のマント、そしてその下に着ている深紅の衣服。右手にはおれの"木刀丸 左近さこん"。

「あっ。」

 差し出してくれた手に応え、体を起こす。

「ありがとう。ジル兄。」

「ん?あぁ、まあたいしたことないさ。おまえは勝負には勝っていたようだったし、あそこからは殺し合いの領域だったからな。――――――それと、ほれ"木刀丸"。」

 ちょっとにやついてる。

 なんか、なんかむかつく。

「ん、ありがと。」

 おれはクマの方を見る。5、6メートルは吹っ飛んでる。意識はないようだ。

「今日の昼飯は念願のクマ鍋だな。美味そうだ。じゃあ、帰るとするか。」

「うん。」

 そして、ふたりは淡い緑色のテントへと戻る。

 クマは当然ジル兄が担いでだ。クマなのに、人がこうも簡単に担げるものなのか?疑問が浮かぶはずだが、この数年間ずっと暮らしていればこんな疑問はもうなくなった。

 

 戻ってきた。

「いやぁ、ほんと強くなったよな、おまえ。魔法なしで、ただの剣術だけで野生のクマをのしちゃうんだもんな。これだから毎日稽古している甲斐があるってもんだよ。」

 ぽんっと、おれの肩に手を置く。

「ありがと、ジル兄。――――でも、結局クマは倒せなかったけどね。ジル兄が来なかったら……危なかったから。」

「だ~か~ら、あれは殺し合いの領域だっての。勝負には勝ったんだよ、おまえはさ。――――でも、なんでオレが教えた剣技使わなかったんだ?まぁ、あれは魔法有りきの剣技なんだけどな。それでも、かなり有利に戦いをもってけただろうに。」

「んーと、ずっと前に試したことがあったんだけど、おれの力じゃ上手いこと吹っ飛ばないし、ガードも、防いでもくれないからね…なんかやりにくかったんだよ。」

「そっか、おまえは流れでもってくからな。そこが強みであり、弱みでもあるってことか。だから、ここまで強くなってんのに野生のクマにここまで苦戦してたわけか。」

「そういうんじゃないと思うけどな。ただ、弱いだけだよ。」

「まったく、謙虚だなぁ……ここにこもって約7年。おまえはもう11歳か。ずいぶん長いこといたよな。――――――――剣技見てやるよ。」

 ジル兄は座る。

 突然だった。そして空気も突然変わった、ように感じた。

 おれは頷き、両手の"木刀丸"を構える。

 ジル兄から教わった剣技、壬鎖凪みさなぎ流、全、玖ノ型。

 集中。気が...気が高まっていく感じだ――――――

候天こうてん !」

巻き風(まきかぜ )!」

隼霞しゅんか!」

愁濤しゅうとう!」

拿晴だせい!」

恕錆じょしょう!」

汽轍きてつ!」

霧燦むさん!」

絶空寥期ぜっくうりょうご!」

 ―――――沈黙……

「……うん。上出来だ。―――――じゃあ飯にするかな。」

 クマ鍋をつくっている、調理しているときはの会話はあってないようなものだった。

 ジル兄は何か深く考えているようだった。

「おっし、できたな。じゃあ食べようか。」

「うん。じゃあ、いただきます。」

「いただきます。」

 美味い。美味いんだけど、味わえない雰囲気。

「…あのさ、ヴァン。明日、ここを出よう。」

「えっ!?修業は?稽古はどうすんのさ?それに、あと一年くらいここにいる予定だったろ?」

「もちろん稽古は他の場所に移ってもみっちりやるさ。」

『みっちり…か』

「そんで、さっきの型を見たらな、もうここで教えることはなくなった。というか、他の場所で教えた方が効率がいいと思ったんだ。」

「でも、おれはずっとここで暮らしてたからな、"普通の"人の生活なんてわかんないから、不安だよ。」

「じゃあ、ここから出たくないのか?」

「ん、いゃ…出たいには出たいよ。ただ、それと同じくらい不安があるっていうか。そんな感じ。」

「まぁな、わからないでもないな。でもだ、もうおまえの体はほぼ安定してきて、尻尾も、体のいろんなところにあった毛もなくなってる。牙も爪も、硬さは人よりも硬いが、それだけで見た目ももう変わらない。唯一獣神(ゼオル)の名残があるとすれば髪の毛にまじっている毛ぐらいだが、それは他の特徴よりも軽いものだろう?もう見た目を悲観する必要はないと思うけどな。」

「うん、べつに見た目はもう気にしてないけどさ。」

「まぁ、嫌ってんなら無理にとは言わないさ。それに、他の場所に行ったって魔法禁止は解かないつもりだしね。じゃあ、今日は午後の稽古はお休みだ。ゆっくり考えてみな。」

 それでこの話題は終わった。あとはたわいない話。いつも通りの、日常の、話だった。


 じゃあ、オレちょっと出かけてくるからさ。ここにいろよ。と、昼飯を食い終わって何をしようかと考えているときに言われた。これは初めてということではない。いつもは一か月置きくらいに本や消耗品などを町に買いに行くときに言われる。ただ、一週間くらいまえに行ったはずなので、なんだろうなと疑問は浮かんだ。

「まあ、考えてもしょうがないか。」

 独り言。

「ここから出て、人がいる町とかに……普通の、魔法がある生活かぁ。憧れてはいたんだよな~。」

 ただ、慣れてしまったこの生活に、平和で、安心できる生活と別れるのが…

『嫌なのかなぁ。』

 このままだと、なんにも答えが出なさそうなのであたりを見回す。

 本が何冊かあった。魔法の本だ。

「こいつらはもう何回も読んだな。"英雄伝記"、"この世界の魔法"、"魔法の魔本"etc…それにしても英雄伝記は一番読んだな、特に"ザック・エクリスター"には憧れてたっけな~。"自分の帰るべき場所を守る為ならば、この命を懸けて戦うのも悪くない!"だっけな。」

 英雄伝記をパラパラと開く。

 "デアル・ソー・マカリスター"

 "雷電らいでん"

 "ジュセイン・ベルグ"

 "ファントム"

 "ザック・エクリスター"

 偉大なる魔法使い、偉大なる戦士だ。

 おれは、この人たちの歴史を読んで、育った。憧れて、羨ましく思い、おれもそんな風になりたいと思っていた。

「なれるわけないんだけどね~。」

『でも、そんな風になれなくとも…憧れてた魔法の世界には行けるんだよな…』

「だったら、行ってみるべきなのかな!」

「あぁ、そうだなぁ。こんなとこいるよりかは、いくらかマシなんじゃねえの?」

 っ!!

 警戒。

 咄嗟に身構える。両手に木刀丸を持って。

 周囲を見渡す。

 気配はする。何か力強い気配。だが、どこにいるのだろう。わからない。

「おぃおぃ。そう身構えんなってぇの。でも、判断は正しいがなっ!」

 気配が、後ろから!

 激痛。

 軽く5,6メートルは吹っ飛んだ。振り向けもせず、背中をまともにくらった。打撃系の痛み。

「っつぅ…」

 骨は、折れてはいない。体が頑丈だったのか、相手がうまく攻撃してきたのかはわからない。

 ただ、慈悲をかけている攻撃には感じられなかったが。

 体を起こし、振り返る。

 誰もいない…

「どこだよ!出てこい!」

「おぃおぃ、わかってねぇな。これはオレを探すゲームなんだよ。楽しめよ。獣人。なんつってなぁ。」

 ……っ!!

 今、なんて、なんで獣って…

 ドンっ!

 また背後。

「ぐはぁっ。」

 今度はさっきよりも痛い。

 またもや吹っ飛ぶ。

 吐血。

「なんだよ、なんなんだよ。」

『ダメだ。冷静になれ。このままじゃ、られる。』

 周囲を警戒。

 風の音。

 風に揺られて音を出す木々。

 鳥のさえずり…

『いや、違う。』

 周囲を再度警戒。

 風の気配。

 風に揺られる木々の気配。

 鳥の、動物の気配。

 …!突風の気配。

「そこだっ!」

 体を右方向に反転。木刀丸を寄せガードの構え。

 敵を確認。男。若い男だ。身長は180前後。黒いローブを着ている。ついているフードは被ってなく、顔が見える。金髪で、赤く斑に染めている。髪の後ろだけ特に伸ばしているようで、根元で結んである。

「あちゃぁ。ゲーム終了ぉだな。まさか、こんな早く終わるとは思ってなかったぜ。案外きちんと育てられてんじゃねえの。」

「ゲームなんて関係ない…それに、なんでおれのこと知ってんだ!?」

「おぃおぃ、そう怒鳴るなよ。うっさいぜ。そんなこと、おまえは知らなくていいんだよ。オレはおまえのために来たんじゃぁない、オレのために来たんだからな…まぁ、元気そうでなによりだな。よかった、よかった。あんだけ苦労したんだから、そう簡単に死んでもらっちゃぁ困るからな。」

「うっさい!」

 構える。壱ノ型。左足を踏み出し、体をよじり、左手を引き下へ、右手を突出し上へ。

 ―――――その型。空の顔をうかがうように、相手の力量を測る。天を突き刺すように迷いなく、人を弐本の刀で突き刺す。壬鎖凪みさなぎ流剣技、候天―――――

 男目掛けて

 飛出し

 全力で

 突く―――――

「候天!」

 っ!?

『いない!?』

 そこには男の姿は無かった。

「おぃおぃ、今のはガチで危なかったぜ。どんだけ成長してんのぉ?まぁ、別にかまわないんだけど。では、ここらへんで"格"の違いってやつを見せてやりましょうか。」

 左側から声がした。

貫風レスク。」

 弐の型。右手を上に、顔下半分をおおうように。左手を下に、刀を相手に向け、刃を外側へ寝かせるように。

 ―――――その型。風の流れを見るように、懐へ来るモノを悟る。来たモノを己には触れさず、己を取巻くように、風のように受け流し、来たモノを弐本の刃で切裂く。壬鎖凪みさなぎ流剣技、巻き風―――――

「巻き風。」

 男の右手からおれに向かって飛んできた風の塊を捕らえた。

 左近で。

 風の塊が木刀に乗った(''')瞬間、体を回転させる。左足を軸に。

 そして男の方向へと向きなおし、風の塊を返す。

 っ!?

 またいない。

 背中に指の存在…

「マジでかぁ。痛みで格の違いってやつを教えてやるつもりだったんだけど、こうも見事に返されちゃうと立場ないでしょ、オレの。」

 背中に熱を感じる。

 動けない。物理的な話ではなく…

「だからさ、こうやって恐怖で格の違いを教えてやってるわけなんだが、解るよなぁ?それと、だ。さっきの目はどっち(''')のだぁ?久しぶりだぜ、あそこまでの殺気はよぉ。オレだとわかって、出てきたのかぁ?まぁ、どうだっていいんだけどなぁ。」

 恐怖。

 それしか感じられない。

 今、この状況下において、おれの命はこの男に握られている。

 背中にある指の存在。その指の先にはおれの心臓がある。

 たかが、指を置かれただけ、なのに。そう思わせられるだけの力が確かに存在する。

「んじゃぁ、オレはもう帰るわ。」

 背中にあった恐怖は消えた。

 振り向いたが、男はいなかった。

「せいぜい頑張るんだな!」

 男はそう言い残して気配を消した。

 体の力が抜ける。

 そのまま倒れこむ。

 意識ははっきりしている。

 恐怖もはっきりとまだ存在している。

 クマ相手に感じたのも確かに恐怖。ただ、今感じた、感じている恐怖とは比べられない。

 比にならない。

 時間だけが過ぎてゆく。


 夕日で、憂悲で染まった時間だった。

「お~い。悪かったな、待たせた。今回はもうちょい早く帰ってくるはずだったんだが、手間取ってな。悪……なんかあったか?」

 ジル兄の表情は一転した。

「ううん。別に何もなっかたよ。」

「そうか…勘違いか。」

 悟られたのか、そうでないのかはわからない。

「で、どうするか決めたか?」

「…おれは強くなりたい…強くなる……だから、決めたよ。世界に出たい!」

「そうか。…わかった。」

 そう言ってジル兄はおれを抱き寄せた。

「おまえは強くなるよ。」

 そのひと言で、おれは…





  

 読んで下さり、ありがとうございました。

温かい目で見てやってもらえたでしょうかw?

まぁ、楽しんでもらうことがあったならば、それは幸いです。

ありがとうございます。

これからも頑張って書いていこうと思います。

今後ともよろしくお願いします。


>長さは、これくらいでいいのでしょうかね?自分的にはもうちょい長い方がいいのかなと思ったりしたんですが、途中でタイトルが浮かんできてしまったので、ここまでにした次第であります。

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