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「無能」と追放された俺、観察スキルで全て見抜いて無双したら元パーティが崩壊した  作者: ささかま
第3章 再現不能の領域

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39話 今までと違う何かが動き出した

通路の先で、空気が一度だけ震えた。

さっき生まれた横道の奥から、敵の気配が流れ込んでくる。


前に2。

後ろに1。

それだけじゃない。


罠の魔力反応が、敵の動きに重なるように脈打っていた。

この迷宮では、戦闘そのものが罠の一部だ。


ひなたが大鎌を握り直す。



「今度は何ですか?」



俺は短く答える。



「前は囮です。本命は後ろ」



コメントが流れる。



「後ろってまだ見えてないだろ」


「また勘か?」



すぐに別のコメントが重なる。



「黒崎が言うなら来る」


「そこ疑う段階は終わってる」



次の瞬間、前方の暗がりからウルフ型が2体飛び出した。

速い。

だが、直線的すぎる。


ひなたが反射的に大鎌を振りかぶる。



「迎えます!」


「まだです」



俺が言った瞬間、2体の足元の床が沈む。

だが落ちない。

遅延だ。


俺は凛を見る。



「右を止めて」



凛は迷いなく踏み込んだ。



「――雷閃」



閃光が走る。

右の個体が横へ弾かれる。


同時に左の床が裂け、石壁がせり上がる。

逃げ場を削る罠だ。


コメント欄が跳ねる。



「罠とセットかよ!」


「これ無理だろ」



だが、まだ本命じゃない。


俺は振り返る。



「後ろ、来ます!」



ひなたがはっとする。

その一瞬遅れて、背後の壁が割れた。


黒い腕。

擬態型だ。


壁そのものに紛れていたモンスターが、ひなたへ伸びる。


コメントが一瞬止まる。



「終わった――」



その直前、俺は逆に一歩踏み込んだ。

ひなたの後ろへ。


普通なら避ける位置じゃない。



「なんでそっち行く!?」



黒い腕が俺の肩を狙う。

だが狙いはそこじゃない。


擬態型の魔力核は、腕を伸ばした瞬間だけ壁から浮く。

半拍だけ。


全部、同時に見えている。


俺はその瞬間に合わせて動く。



「ひなた、前へ!」


「悠斗さん!」


「そのまま振って!」



ひなたは迷わなかった。

大鎌を引き戻し、その勢いのまま前へ踏み込む。


黒い腕が俺の頬を掠める。

熱い。

だが浅い。


同時に、ひなたの刃が壁を叩き割った。

石片が散る。

黒い体液が飛ぶ。


凛が低く言う。



「黒崎、左も来る」



分かっている。


前方のウルフ型は誘導役だ。

罠を踏ませるための配置。


俺は壁の裂け目、その奥へ潜り込む。

視界が一瞬だけ揺れた。


遅い。


頭の奥が熱い。

だが、まだ足りる。


俺は短剣を突き出す。

何もない位置へ。


コメントが走る。



「外した!?」



違う。


半拍遅れて、そこへ擬態型の核が重なる。

刃先が沈む。


擬態型が崩れ、黒い泥になって落ちた。


その瞬間、前方のウルフ型も止まる。

連動型だったらしい。


遅れて床の罠が空撃ちする。

矢が何もない空間を貫いた。


静寂。


そして、一気にコメントが溢れる。



「今の何!?」


「受けに行っただろ!」


「意味わからん」



別の流れも混ざる。



「いやまぐれだろ」


「たまたま当たっただけ」



すぐに否定が入る。



「まぐれであの位置入らねえ」


「見返せ」



ひなたが荒く息を吐く。



「い、今の……無理かと思いました」



凛は崩れた壁を見たまま言う。



「敵と罠を一つの動きで処理した」



同時視聴者数。

17126。


ひなたが画面を見て、言葉を失う。



「また増えてる……」



凛だけが静かだった。



「黒崎だからできる」



俺は短く息を吐く。



「問題はないです。

ただ……少し嫌な感じがします」



本音だった。

視界のぶれは消えていない。


この迷宮は、長引くほど危険になる。




その頃。


流動迷宮内で、同じ配信を見ている少女がいた。


銀髪。

氷のような青い瞳。

表情はほとんど動かない。


九条雪那は、巻き戻しもせずに画面を見続けていた。


罠。

敵。

擬態。

誘導。

修正。


すべてが重なった状況で、黒崎悠斗は迷わなかった。


雪那が静かに呟く。



「……それは違う。見ているのではない。

構造を理解している」



一拍。



「ダンジョンそのものを、解いている」



わずかに視線を落とし、考えるように続ける。



「……あの規模で同時処理。

通常の探索者では成立しない」



ほんの少しだけ間が空く。



「……録画、しておくべきだったかしら」



それは後悔というより、確認事項に近い声音だった。

雪那は静かに歩き出す。



「直接、確認する必要があるわね」




ダンジョンの中へ視点が戻る。


通路の奥で、魔力が歪んだ。

今までとは違う、重い反応。


敵でも、罠でもない。


何か別のものが、向こうで動いている。

俺は前を見たまま、小さく言う。



「……今までと違う」



空気の質そのものが、さっきまでとは変わっていた。

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