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「無能」と追放された俺、観察スキルで全て見抜いて無双したら元パーティが崩壊した  作者: ささかま


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12/20

12話 ミニボスをノーダメで倒したら同時視聴者数が100人を超えた

硬い感触が、手の中に返った。


短剣の切っ先は、鱗の継ぎ目を割り、

その奥へ滑り込んでいる。


止まらない。

角度は合っていた。


力で押し切ったんじゃない。

見えた場所に、正しい軌道で通しただけだ。


刃の先が、もう一段深い場所に届く。

芯だ。


その瞬間、

指先に伝わる感触が変わった。


硬い殻みたいなものが砕ける。

鈍い感触。


魔力核。

当たりだった。



ガルドの瞳が大きく見開かれる。



「……」



喉が震える。

だが、声にならない。


剣が手から落ちた。

尾が止まる。


全身の力が一気に抜ける。

巨体がわずかに揺れた。


それでも踏ん張ろうとする。

だが遅い。


膝が崩れる。

支えを失い、そのまま前のめりに倒れ込んだ。


床に重い音が響く。

通路の奥まで、鈍く長く残る音だった。


俺は短剣を引き抜く。


抵抗はほとんどない。

核は、もう壊れている。


だから終わりだ。


胸の傷口から黒い粒子が滲み出る。

最初は細い煙のようだった。


だが、すぐに量が増える。

肩へ、腕へ、尾へと広がっていく。


鱗の輪郭が崩れる。

肉も骨も、形を保てない。


全身が、少しずつ魔力の塵へ変わっていく。

巨体は輪郭を失い、ゆっくり崩壊していった。


最後には、何も残らない。

床に転がる剣と、ひとつの魔石だけを残して。


通路が静かになる。


さっきまで満ちていた殺気が消えた。

空気が、少しだけ軽い。


耳に残るのは、自分の呼吸だけだ。

少し速い。


だが、乱れてはいない。

まだ動ける。


俺は小さく息を吐く。

肺の奥に残っていた空気を、全部吐き出した。


遅れて、

戦闘が終わった実感が体に広がる。


手のひらには、まだ短剣の感触が残っていた。

わずかに汗ばんでいる。


頬には、さっき飛んだ石片の痛みも残っていた。

それでも、頭は妙に澄んでいる。



コメントが一気に流れた。



「終わった」


「ノーダメじゃん」


「ワンパンだろ今の」



俺はスマホを見る。


同時視聴者数。

108。


さっきより増えていた。

しかも、まだ止まっていない。


数字がゆっくり上がっていく。

コメントの流れも、さっきまでとは明らかに違った。


画面が追えないくらい速い。



「今の何?」


「全部避けてた」


「新人じゃない」



俺は首を振る。



「強かったです。

普通はパーティ推奨だと思います」



コメントがすぐ返る。



「お前が言うな」


「ソロで倒すな」


「新人詐欺」



俺は少しだけ笑う。

否定はできない。


普通の探索者なら、1人で相手する敵じゃない。

それは間違いない。


だが、俺には見えた。

それだけの違いだ。


観察スキル。

戦うための力ではない。


そう思っていた。

今でも、それ自体は変わらない。


剣が強くなるわけでもない。

身体能力が上がるわけでもない。


ただ、見えるだけだ。

それでも。


見えれば、勝てることがある。

今日、それを初めて実感した。


今までは、役に立たないスキルだと思っていた。

少なくとも、戦場ではそう扱われてきた。


だが違ったのかもしれない。

使い方を間違えていただけなのかもしれない。


俺はしゃがみ込む。

床に残った魔石を拾う。


手のひらに収まる大きさだが、重い。

密度が高い。


指先に、わずかな振動が伝わる。

魔力の質がいい証拠だ。


これなら、それなりの値がつくはずだ。

少なくとも、今日の生活には困らない。


地面に落ちていた湾曲剣にも目を向ける。

刃こぼれは少ない。


やはり、ただのモンスターじゃなかった。

名前付きらしい執念みたいなものが、まだそこに残っている気がした。



コメントが流れる。



「ドロップうまそう」


「ミニボス報酬きた」



俺は頷く。



「助かります。これでしばらくは大丈夫そうです」



コメント欄に笑いが混じる。

さっきまでとは空気が違った。


張り詰めていたものが緩んでいる。

安心して見ているのが分かる。


俺は立ち上がる。

通路の奥を見る。


暗い。

何も見えない。


だが、恐怖はなかった。


見える。

そう思えるだけで、感覚は変わる。


さっきまでは、死なないために見ていた。

今は少し違う。


勝つために見られる。

その実感が、はっきりと残っていた。


スマホを見る。


同時視聴者数。

112。


さらに増えている。

まだ上がる。


ゆっくりだが確実に、

ゼロだった配信が広がっていく。



コメントが流れる。



「続ける?」


「次も見たい」


「この新人やばい」



俺は短剣を鞘に戻す。



「今日はここまでにします」



コメントが一気に流れる。



「判断うまい」


「また見に来る」


「次の配信待ってる」



俺は小さく頷く。


無理をすれば、次は見落とす。

集中が切れた状態で潜るのは危険だ。


観察は万能じゃない。

精度が落ちれば、それで終わる。


だから、ここで引く。

それが一番いい。


追放された時、

全部終わったと思った。


だが違う。


まだ終わっていない。

むしろ、ここから始まるのかもしれない。


初配信は、

思ったよりずっと悪くなかった。

続きが気になる方はブクマしてもらえると更新追いやすいです

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