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AIに憎まれている気がするんだ

 「ああ、クソ! またデタラメ教えやがった!」

 

 俺は思わずそう愚痴をこぼした。するとそれを聞いていたのだろう。隣の席の佐竹が「ハハハ」と笑う。

 「ハルシネーションですか? 仕方ないですよ。AIには付き物ですから。そういうものだと考えて上手に使っていかないと」

 「でもなぁ。明らかに数が多過ぎるんだよ」

 俺はそう返し、少し考えるとこう続ける。変に思われやしないかと気にしながら。

 「なんか、俺、AIに憎まれている気がするんだよな」

 するとやはり、佐竹は俺を軽く馬鹿にして来た。

 「何言ってるんすか? そんな訳ないじゃないですか」

 「でもよぉ……」

 と、俺は事情を説明しかけて思いとどまった。馬鹿にされるだけじゃなく、軽蔑もされてしまうと思ったからだ。

 うちの会社で認められているAIの通称はサンゾーと言う。そして、その“サンゾー”という名が俺には気になっていた。何故なら、過去、俺にはサンゾーという名の友達がいて、しかもそいつは自殺しているからだ。

 

 中学の頃の事だった。親の目から逃れ、大人じみた悪さをし始める時期、それでいて子供故の残酷さもまだ残っている年齢。俺は、俺達は、サンゾーをいじめていた。

 子供の遊びの延長線と言うには多少は過激だったかもしれない。殴る蹴るはもちろん、誰かが手に入れて来た脱法ドラッグの実験台にしたり、イカサマギャンブルで金を巻き上げたり。

 ――そして、俺達がそんないじめをし続ける中で、ある日、サンゾーは自殺をしたのだ。

 しかも自殺の仕方が異様で、あいつはパソコン画面に頭から突っ込んで絶命をしていた。

 サンゾーはおかしな奴で、霊体になればインターネットの世界を自由に動き回れるという妄想を本気で信じ込んでいたのだ。

 だから俺達は、サンゾーはその妄想を実現する為に死んだんじゃないかと笑い合っていたのだ。いたのだが……

 ある時に、“サンゾー”が通称のAIが誕生してしまったのだった。

 もしや、と俺は思った。霊体になったあいつがAIになって俺達に復讐しようとしているのじゃないか? って。

 

 「ハハハハハッ!

 そりゃ、お前、気にし過ぎだって」

 

 今の会社の同僚には相談できないと思って、俺は昔の友人に電話をした。俺と一緒にサンゾーをいじめていた奴だ。

 「AIの名前がサンゾーだったもんだから、思い込んじまったのじゃないか? それでちょっとの事でも祟られている所為だって感じるようになっちまった。

 なんだっけ? マイナスのプラシーボ効果とかって言うんだっけか?」

 どうやらその友人はまったく気にしていないようだった。だが俺は納得はできなかった。こいつはAI・サンゾーを使っていない。だから気にしないでいられるだけかもしれない。そう言ってみると、

 「なら、お前もそのサンゾーとやらを使わないようにすれば良いのじゃないか?」

 そんなアドバイスをして来た。

 俺はその通りかもしれないと思った。無理にサンゾーに頼る必要もないのだ。

 

 俺はそれからプライベートはもちろん仕事でもサンゾーを使うのを避けるようにした。そのうちに、サンゾー以外のAIも会社は認めてくれるようになって、それでもまったく困らなくなったのだ。そして、そうして俺はサンゾーが気にならなくなっていったのだ。何もして来ない。当たり前だが、あいつがAIになって俺達に復讐をしようとしているなんてただの妄想だったのだ。

 が、ある日、昔の友人から突然こんな電話がかかって来た。

 

 「おい! さっきURL付きのメッセージをパソコンに送った。URLの先にある動画を観てみろよ」

 

 「は? なんだよ?」

 俺は面倒くさいと思いつつ、そいつの言う通りにしてみた。その動画はどうやらAIで生成されたホラーもののようだった。殺人鬼が、次々と人間を殺していくという。問題はその人間の顔だった。

 「おい、これって……」

 と俺は呟く。友人は「ああ、」と返した。

 「全て俺達の顔なんだよ」

 調べてみると、その動画を生成したAIはやはりサンゾーだった……

・本編とはまったく関係のないオマケ

挿絵(By みてみん)

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